食べることは、生きること
わたしたちは日々、栄養を摂取することで生命を維持しています。こう書くと少し大げさかもしれません。でも、毎日の食生活が健康を司るというのは誰もが知っているからこそ気を付けていることでしょう。
美味しく栄養のあるご飯はパワーの源ですものね。ここからは、そうした栄養と食事選びの知識について、ちょっと「ハテナ?」と思えるNG情報を、クイズ形式で3つご紹介します。
この情報は〇?それとも×!?
さて、犬のご飯に関するクイズです。ご一緒に考えてみましょう。この情報は正解?それとも不正解?
1. ドッグフードのパッケージどおりの分量を忠実に守るべきだ。
答えは×です。
もちろん参考にするべきですが、たいていのドッグフードに記載してある表示には、〇キロの犬には〇グラム。というような書き方がされています。しかし、犬種や大きさ、月齢などによって必要な分量は違いますし、その子、その子によって、吸収できる量が変わります。
ですから、パッケージの表示はあくまで目安程度と考えるのが適切と言えるでしょう。愛犬が肥満、または痩せてきたというように感じたら量を調整していきます。下痢を頻繁に起こす場合には食べ過ぎという場合もありますので、その際も量を加減してみると愛犬にとってベストな量を知ることができます。
また、オヤツを多めに与えた日は、その日の夕食の量を少しセーブする必要があります。
2. うちの子は結石ができやすい犬種。予防のために療法食を勝手に与えている。
答えは×です。
療法食というのは、それぞれの病気の兆候がある、または症状が見られた際に「獣医師の指示により」処方される、病気を抑える目的で作られた総合栄養食のことです。
結石になるのはかわいそうだから、胃腸の調子が悪いから、ちょっと太ってきたみたいだから、などという理由から、予防目的や、飼い主が勝手に判断して与える製品ではありません。
現在は療法食はネットや通販で気軽に購入できる時代になりましたが、そうした療法食の中には短期間の治療に用いるために極端な栄養素を特化した、健康な犬にはかえってダメージをもたらすフードもあるので注意が必要です。
3. 生の手羽先が体に良いと聞き、毎晩与えている。
生の肉。しかも手羽。一時的に愛犬家の間で話題になりました。しかし、飼い主の多くはヒューマングレードを望んでいるでしょう。それは、人が食べられる食材と同じように衛生管理された安全な食事を与えたい、という気持ちからの要望ですね。
しかし、その観点から生肉という食材について考えたとき、少しの違和感がありませんか。例えば生肉には、カンピロバクターといった細菌の問題があります。
現在の日本では、食肉加工処理場で「生食用食肉の衛生基準」に基づいて処理された馬肉のみが人用の生食用認可が下りていますが、人の食中毒の原因となるカンピロバクターやサルモネラ菌などは、犬や猫においても腸トラブルを起こすことが確認されています。
こうした事実から考えると、生の骨付き鳥肉というのは、安心安全食材とは言えないように感じます。生肉についての他リスクについては最後にもう一度出てきますので合わせてお読みください。
実は誰も知らない
「これぞ犬本来のご飯」、「〇〇犬に最適!」、「食いつき補償!」などなど。次々と飼い主の購買意欲をそそるようなキャッチコピーがあふれ、新製品も続々と誕生しています。そんな犬の食事への高まりに比例して、経済研究所の調査でもペットフード産業は右肩上がりを続けていることが発表されています。
さて。私たちはこのようなコモディティ化するフードラインナップの中から、愛犬に最高のフードを見つけなければなりません。これは大変な作業です。なぜなら、どのフードが最適であるかなど、実のところ誰にもわからないからです。だからこそ私たち飼い主はフードの知識を身に着け、選択してくことが必要なのです。
なにを基準に選んだらいいの?
色々な考えがありますが、基本的には子犬期とシニア期、体重コントロール中の犬には、栄養管理のしやすいドッグフードがおすすめです。総合栄養食と記載のあるもので、原材料がきちんとパッケージに明記されていればそこを基準に選んでいきます。
食材にアレルギーのあるものは含まれていないか。主原料はなにか。栄養はどのくらいあるか。フレッシュに保つ工夫はされているか。また、少し嫌な事実として、「〇肉」と書かれていても、実際には筋肉だけでなく、胃や腸などの臓器を含んだ部位を総称して「〇肉」と記載している商品もあります。
いかにも美味しそうなCMと、心が惹かれるキャッチコピーだけではなく、主原料や、腐敗防止の化学物質にも着目することが、フードを選択する際のキーとなります。
手作りしたいけど
手作りご飯。愛犬家の間で流行っていますね。コトコトと手をかけて作ったご家庭のものはもちろん、お店仕立てのバランスの取れたレトルトや冷凍。デパ地下のデリカテッセンのように量り売りしてくれる専門のお店まであります。
やはり寒い季節にはほっこりホコホコとした飼い主の手による食事で、愛犬も心の芯まであたたまることでしょう。しかし、この手作り食。実際には栄養面で完全なのか少し不安…と思う方もみえますね。また、獣医さんによってはドッグフード第一主義という方も多く、なんとなく引け目を感じながら与えている。という方も。
書籍や信頼のおけるサイトでは、専門家監修の犬手作り食レシピには間違いのない栄養情報が記載されています。最初はこれに従って作りながら、次第に栄養管理をマスターしていかれると安心できて良いでしょう。
栄養素の不安防止のために、総合栄養食であるドッグフードと混合で与えている方もいらっしゃいますね。このあたりは「こうすべきだ」。というよりも、飼い主の意思で愛犬の体調に注意を払いながら、チャレンジしてみても良いのはないでしょうか。
まとめ
愛犬に最適なご飯というものは、見つけるのがとても難しいですね。しかし、この悩みは、人の親が子供を育てるときに栄養バランスを考えながら献立を毎日考える様子に良く似ていると思いませんか。
「学校給食のように完全な栄養、カロリーでなくても、愛情込めて」。こうした母親のような気持ちで犬にご飯を与えること。その優しい気持ちこそが、愛犬にとって最高の栄養ではないでしょうか。
※生食についての補足
野生の鹿、イノシシ、熊など、ジビエの生食はいけません。野生動物はE型肝炎や犬や猫では致命的となるオーエスキー病、肝蛭(かんてつ)、住肉胞子虫(じゅうにくほうしちゅう)といったウイルスや細菌、寄生虫の宝庫だからです。若く体力のあるうちは問題が起きない場合もありますが、幼犬期、シニア期、闘病中、術後など免疫力の無い時期には避け、犬の健康を守りましょう。