〇〇、猫を咬む
考えてみればわたしたちは生まれて間もないころから、おそらく死ぬまでの長い時間を、怖いという感情と隣り合わせに暮らしているのかもしれませんね。そうした身近にある感覚「怖い」。この感情が高まったとき、犬たちはどんな行動をとるのでしょうか。
「窮鼠(きゅうそ)、猫を咬む」という言葉は、恐怖状態から転じた動物行動の例として広く知られるものです。これはネズミの例です。
捕食者(この場合は猫)からの攻撃に対してネズミは逃走を図ることで恐怖から逃れようとしますが、もうこれ以上逃げ場がない状態まで追いつめられると、それまでには考えられなかったような反撃態度に転じます。
犬もまた
では、犬の場合はどうでしょうか。研究結果によると、さきほどのネズミの行動には、脳の中にある「扁桃体(へんとうたい)」という小脳の部位が関係しているようです。扁桃体は恐怖や脅威、危険といった衝撃から身を守る機能であり、ほとんどの脊椎動物に存在しています。
ですから、従順とされる犬においても、恐怖に追いつめられてしまえば、本能的に身を守るために「窮鼠、猫を咬む」といった、思いもよらない反撃行動に出ることがあるのですね。
こんな飼い主の態度はNGだ
さて、ここからは、飼い主のどんな態度に犬は恐怖を感じてしまうのか、について、NG例を3つ見てまいりましょう。
1. ゴツン!ペシ!暴力はダメ、絶対
暴力はNGです。どなたがどう反論しようとも、これについてはご家庭で絶対にやってはならないことだと断言します。
軽く叩くだけだからコミュニケーションのひとつでは?とおっしゃる飼い主もみえますが、それは間違いです。また、バン!と、大きな音を出しての威嚇、大声で叱りつけるなども同じこと。総じて暴力は犬が恐怖を感じる一番の大きな原因だと言えます。
2. ピリピリ!神経質もほどほどに
愛犬のささいな行動にも目くじらを立てて、チクチクとネチネチと行動を注意する飼い主もNGです。
犬は大らかな心の持ち主を信頼するというのは、みなさんご周知のとおりですね。ですから、反対に厳しく、神経質なまでに行動をチェックし制限する飼い主の態度に、犬は「怖いなあ」といった怯えの感情を抱いてしまうのです。
3. ゲリラ気分にご注意を
犬は人の感情を読むのに長けた生き物です。言葉よりも、空気や感情の匂いを察知します。そのことから、感情の上がり下がりが激しい飼い主の態度に恐れを感じます。
この場合の恐れとは、飼い主を不審に思うだとか、信頼できない、のような種類の感情です。
犬が恐怖で怯えている様子
恐怖を覚えた犬には、以下のような行動が見られます。
≪例≫
- 全身の震え
- 耳を後ろに寝せて、尻尾を丸めて身を小さくする
- パニックを起こして落ち着きがなくなる
- 吠える
- 咬む
- 脱糞、おもらし
まとめ
威厳のある態度をとれば犬から尊敬される飼い主になれる。というのは、ある意味では確かです。しかし、その思いが歪んだNG態度へと変化した結果、犬から尊敬されないどころか、恐れを感じるだけの存在になってしまう場合もあります。そうなれば元も子もありませんね。
安心を、信頼を、きずなを作るためには、恐れさせるような態度は必要ありません。必要なのは…、この先の文章はみなさまにおまかせします。もう、お分かりですね。どうかあなたの隣のかわいい子が、恐怖に怯えることがありませんようにと願います。それではまた。