帰巣本能とは
「帰巣本能」とは、動物たちが慣れていない土地や地域を通り、もともと住んでいたところへ帰りつくことができる能力のことです。
もともと住んでいたところとは、巣であったり縄張りであったりします。
鳩や渡り鳥、そして生まれた川に戻ってくるといわれているサケなどはこの帰巣本能が強いと言われています。
しかしこの「帰巣本能」という能力ですが、まだまだ良く解明されていないことが多いのです。
鳩やウミガメは「目印」を覚えている能力があるため、それを目当てにして巣や縄張りに戻ることが知られています。
また磁気(地磁気)に基づいて方向を見つける鳥やモグラ、嗅覚を頼りに方向を見極めるサンショウウオやサケといった動物もいます。
犬の帰巣本能
一般的には、犬も帰巣本能があるといわれています。
しかし「本能」という生まれ持った能力の割に、かなり個体差があります。
生活環境や本人(本犬?)の性格によって、順応性が異なるからと言われています。
犬の帰巣本能のメカニズムはまだはっきりとは解明されていません。
しかし生来備わっている優れた嗅覚を用いたり、体内時計や地磁気によって方向を見定めているという可能性があります。
しかしこれらはぼんやり過ごしている場合、活発に働くことはありません。
好奇心旺盛で散歩のルートなどに変化をもたせた生活をしている犬は、視覚や嗅覚を使って周囲の情報収集を活発に行います。
このような犬は同じコースばかり散歩する犬より順応性が高く、知らない場所でも積極的に情報を収集しようとするようです。
そのため、においや目印などを敏感に捉えて、自分のいる位置や家の方向などを見極めているのではないでしょうか。
ただし全ての犬がちゃんと家に帰ってこられるわけではなく、好奇心旺盛ゆえにとんでもないところまで歩いて行ってしまう、などということもあります。
そのため、愛犬にはきちんと迷子札やマイクロチップを付けて置くことが大切になります。
帰巣本能が発揮された事例
犬が帰巣本能を発揮し、遠く離れた地から飼い主のもとへ帰る事例はとても多くあります。
たった一匹で長い距離を旅する犬の姿は感動的ですよね。
それは見た人や聞いた人の心を揺さぶり、小説や映画にもなっているのです。
ここでは小説となった実話をご紹介しましょう。
それはボビー(コリーのミックス犬)という犬のお話です。
1924年アメリカ。飼い主と一緒にインディアナ州のウォルコットへバカンスに行っていたボビーは、車から飛び出して迷子になってしまいます。
飼い主は数日間かけて付近を探していましたが見つからず、オレゴン州にある自宅へ戻ります。
ボビーが迷子になった地点から自宅までおよそ4800㎞。
(とても見つからない…)と思われたボビーでしたが、それから半年かけて自力で飼い主のもとへたどり着いたのです!
4800㎞という距離がどれほど遠いものなのか、日本で考えてみましょう。
本州の青森県大間町から山口県下関市を真っすぐ結んだ腺がおよそ1200㎞です。
その4倍という距離を、一匹の中型犬が歩ききったと考えると、その旅の凄さがよくわかります。
しかも平坦な道だけではなく、山を越えたり川を越えたりということもあったでしょう。
飼い主のもとに帰りたいという犬の強い気持ちがあったとしても、4800㎞を旅するというのはとてつもなく厳しいものだったに違いありません。
ボビーが家に帰りついた二年後、この物語を知ったオレゴン州の動物愛護協会から、道中にボビーを目撃したり食事を与えたりした人々の証言をまとめた本が出版されています。
この他にも、犬の帰巣本能が発揮された事例や、それをもとにした小説、映画などいくつもありますので、ぜひ探してみてください。
まとめ
小説や知られている事例でみる「犬の帰巣本能」はとても素晴らしく、愛犬が迷子になっても帰ってきてくれると安易に考えてしまうかもしれません。
しかしこれらは幸運なレアケースであり、実際は事故や迷子になったままどこかに保護されたり、そのまま帰ってこなくなったりするケースも多いでしょう。
万が一、犬たちと離れてしまっても連絡が取れるよう、迷子札をつけたりマイクロチップの登録をするなどして対策をしておくことが大切です。