子犬期の食事が成長後のアトピー性皮膚炎発症リスクに影響【研究結果】

子犬期の食事が成長後のアトピー性皮膚炎発症リスクに影響【研究結果】

子犬期に食べていたものが、成長後にアトピー性皮膚炎を発症する割合に関連していたという調査結果が発表されました。どのような食べ物がアトピー発症リスクを高くしたり低くしたりしていたのでしょうか。

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犬のアトピー性皮膚炎と食事の関連を調査

痒いところを噛んでいる子犬

愛犬のアトピー性皮膚炎に悩んでいる飼い主さんは少なくありません。はっきりした原因がわからず皮膚の炎症や痒みがなかなか治らないアトピーは、当の犬はもちろんのこと飼い主さんにとっても辛いものです。

フィンランドのヘルシンキ大学獣医学部では犬のアトピー性皮膚炎の増加を受けて、アトピー/アレルギーの研究が始められました。そして先ごろ発表されたのは、食物とアトピー/アレルギーに関連があるという仮説に基づいて実施された調査の結果です。

4,000頭以上の犬の飼い主を対象にしたアンケート調査から、子犬期に食べていたものと成長後のアトピー性皮膚炎の発症のリスクが分析され、いくつかの明確な関連が見出されました。

アトピー発症リスクを高くする食べ物と低下させる食べ物

ドッグフードと生の肉

データとなるアンケートに参加したのは4022頭の犬の飼い主でした。そのうち1,158頭が1歳以降にアトピー性皮膚炎を発症しており、 2,864頭はアトピー性皮膚炎がない犬でした。データを明確にするため、1歳以前にアトピー性皮膚炎があった犬は対象外としました。

アンケートでは46種類の食品がリストアップされ、子犬期に(生後2ヵ月〜6ヵ月)どの食品がどのくらいの割合で与えられていたのかを分析した結果、食べていたものとアトピー性皮膚炎の発症率に明確な関連が見出されました。

アトピー性皮膚炎のリスクを低下させた食べ物は次のものでした。

  • 生のトライプ(草食動物の胃の内容物)
  • 生の内臓肉
  • 人間の食事の残り物
  • 魚油サプリメント

反対にアトピー性皮膚炎のリスクを高くしたのは次のような食事でした。

  • 食事の80%以上がドライフード
  • 果物
  • 混合タイプのオイルサプリメント
  • 加熱乾燥させた動物性トリーツ(豚耳やアキレスなど)

リストアップされた食べ物について気をつけたいこと

舌を出しているチワワ

生のトライプや内臓肉がアトピー性皮膚炎のリスクを下げると言っても、日本の犬が取り入れるにはハードルが高いと思われます。

上のリストには入れていませんが、この研究ではアトピーのリスクを下げる食べ物に「外に落ちている小動物や鳥の死骸」またリスクを高める食べ物には「外の水たまりの水」が含まれていました。

これらのことから推測するに、フィンランドの犬は大半の日本の犬よりも大らかで自然な環境で飼育されているようです。そのような犬たちには生のトライプや内臓肉は体に合っていると思われますが、日本の都市部の犬には合わない可能性も高いでしょう。

しかし近年は、犬用にフリーズドライで製品化されたトライプや内臓肉も販売されています。生のトライプは入手と扱いの両方が難しいので、このような製品化されたものを少しずつ取り入れるのが良さそうです。

反対にドライフードが高リスク要因となっていますが、ドライフードを与えないというのもハードルが高い話です。これはドライフードをやめるべきというのではなく、与える食べ物の20%以上を生のものに置き換えることでリスクは大幅に低下していた点を考慮すると良いでしょう。

ドライフードや加熱乾燥の動物性トリーツなどは、通常の家庭での調理よりも高温で処理された食物による腸内環境への影響が考えられます。

魚油サプリメントは必須脂肪酸であるオメガ3脂肪酸の供給源として優れており、アトピー性皮膚炎やアレルギーの炎症を鎮める働きが期待できます。ただし毎日(またはほぼ毎日)与えると過剰供給になるので注意が必要です。

混合タイプのオイルサプリメントは3種類のオメガ脂肪酸(3、6、9)を含むオイルを混合したものですが、このうちオメガ6脂肪酸であるリノール酸はドライフードや他の食品にも多く含まれているのでリノール酸の過剰供給が起こりやすくなります。リノール酸は炎症を促進するためアトピー性皮膚炎の高リスク要因となります。

果物については、回答者が与えていたものに缶詰の果物が含まれていたこと、生の果物であっても昨今は品種改良によって果物の糖度が非常に高くなっていることから、幼いうちに糖分を過剰に摂取することが腸内環境に悪影響を及ぼし、アトピー性皮膚炎やアレルギーのリスク要因になると考えられます。  

人間の食事の残り物がアトピーのリスクを低下させたというのは意外な感じがしますが、研究者はこの項目については内容をさらに精査する必要があると述べています。

近年フィンランドでは菓子、ソフトドリンク、加工食品の消費は低下して、発酵食品を含む伝統的な料理が人気になっていることから、この調査で言われている人間の食事の残り物というのは手作りの犬用食に近いものなのかもしれません。

まとめ

並んで食事をする3匹の子犬

フィンランドの研究者が、犬の飼い主へのアンケートから子犬期に食べたもののうち何がアトピー性皮膚炎のリスクに影響しているのかを分析した結果をご紹介しました。

以前から言われているように、腸内細菌がアトピー性皮膚炎のリスクを低下させるのに大切な役割を果たしているのは間違いがなさそうです。

腸内環境を良好に保つプロバイオティクスを豊富に含むトライプがアトピーのリスクを低下させ、腸内環境を悪化させる高温加熱の食べ物や糖分がリスクを高めることは、日本の飼い主にとっても参考になる情報だと言えるでしょう。

今回の調査では子犬期に食べたものと1歳以降のアトピー性皮膚炎発症リスクの相関関係は示されましたが、因果関係までは証明されていません。同研究チームは今後も犬のアトピー性皮膚炎についての研究を継続するとのことですので、また新しい報告を待ちたいと思います。

《参考URL》
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jvim.16211

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