フラストレーションにご注目
ムシャクシャしている、の定義は人により様々でしょう。ここでは、犬のフラストレーションという感情に着目してみます。フラストレーションとは、与えられた期待が違反された後に受ける負の感情的反応を指します。
簡単に言うと欲求不満ですが、その中でも「心理的要求が外部の条件(この場合は飼主さん)によって妨げられる状態」と定義づけてお話を進めてまいります。
フラストレーションが招く問題行動
飼主さんと当たり前に繰り返される日々のやりとり。この関係が崩れ始めたとき、犬は小さなフラストレーションを感じ始めます。負の感情がつもりつもれば、やがてムシャクシャとした気分になり、それが様々な問題行動につながります。
では、ここからはその問題行動例を、3つの行動グループに分けて見ていきましょう。
1. 攻撃型
≪例≫
- ぬいぐるみを破壊
- クッションの綿を引き出す
- 同居犬を必要以上に追いかけまわす
- 子供や同居犬を咬む
フラストレーションを受けた際、攻撃をすることでムシャクシャを解消しようとするタイプです。攻撃は、妨害や障害になっている人や物に直接向けられることが普通ですが、その相手が強力でありかなわないと思った場合には、代償行為として自分より目下の者にその攻撃が向けられます。
人の子供に置き換えてみると、母親におやつをせがみ理不尽な理由で断られたときに、やつあたりで罪のない弟をいじめたりするのがよくある例だと言われています。
2.退行型
≪例≫
- 手を必要以上に舐める
- 飼主さんから離れない
- 違和感を感じるほど同居犬に甘える
- ひもや、クッションの角をずっとしゃぶる
- 覚えているはずのトイレができなくなる
- 夜尿症
フラストレーションがたまると自身を未成熟な段階に後戻りさせ、幼少期のような行動をおこさせてしまうタイプ。
人の子供に置き換えてみると、ひとりっ子としてかわいがられて育てられてきた子供が、弟妹の誕生によって親たちの関心がそのほうに奪われてしまい以前のようにかまってもらえなくなると、指しゃぶりや夜尿が再発する様子がこれに当たります。
異常固着
≪例≫
- 尻尾の追いかけまわし
- ぬいぐるみへの執着
- ケージやハウス内から出てこない
ムシャクシャを無意味な行動によって自己解決しようとするタイプ。人の子供が爪を噛んだり、物を隠す、空想上の友達と遊ぶような様子に良く似ていると言われています。
犬の自己肯定感
犬は群れ社会の生き物です。基本的にはリーダーの指示に従い、それに対して褒美をもらうことが嬉しく、自己肯定につながります。単純なように見えますが、よく考えてみると、実は日々の暮らしはそうしたやりとりの連続ではないでしょうか。
例えばお散歩に行くシーンをイメージしてみましょう。飼主さんが「行くよ」と犬に合図を出す(指示)→犬が玄関へ来る(従う)→なでられる(褒美)。そして、飼主さんがリードを付ける(指示)→その間、犬はジッとしている(従う)→散歩へ連れて行ってもらえる(褒美)。
いかがでしょう。このワンシーンだけでも指示と褒美が二度くり返されていることがお分かりになるでしょう。
原因と対策
こうした日常の当たり前のやりとりを通して、犬は自身の存在価値を知り、家族のメンバーであることに自信を持つのです。ですから、こうした日々の関係が崩れていくのがフラストレーションの一番の原因だと思ってください。
ここまできたら、もう対策はお分かりですね。そうです。答えはシンプルに。最善の対策は「犬を裏切らない」です。理不尽に、いたずらに、犬の期待を裏切らない飼主さんの行動が大事なのです。
まとめ
犬と人。お互いがストレスやフラストレーションをためずに、信頼と優しさを積み重ね、気持ちよく毎日を過ごしたいですね。