ペットの問題行動、痛みが原因である例は想像以上に多いという報告

ペットの問題行動、痛みが原因である例は想像以上に多いという報告

犬や猫の行動で問題とされるもののうち、飼い主が思っている以上に多くの例が怪我や疾患による痛みが原因になっていると動物行動治療の専門家たちが報告しています。いくつかの例と共にご紹介します。

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行動治療の専門家からのショックな報告

怒っているミニピン

犬や猫の行動が変化したり問題とされる行動が増えた時に、その原因が体の痛みから来ている場合があるということは、獣医師はもちろん一般の飼い主にも知られています。

しかし、動物行動治療の現場でペットの問題行動の解決に携わっている専門家は、問題とされる行動において何らかの身体の痛みが原因であるにも関わらず、それが見落とされている例が非常に多いという報告を発表しています。

イギリス、カナダ、アメリカ、スペインの計13の研究機関や病院に属する動物行動治療の研究者たちが、実際に経験した痛みから来ていた行動上の問題の症例を紹介し注意を促しました。

具体的な問題行動と、その背景

空中を噛む仕草をするドーベルマン

ペットの行動上の問題と言っても色々な種類がありますが、いくつかの具体的な例とその背後にあった身体の異常をご紹介します。

1.時折、急にキレる犬

長年一緒に暮らし基本的なトレーニングもできて良い関係を築いていた犬が、ある時期から隣に座って撫でようとしたら歯を剥いて怒ったり噛みつこうとするようになった。

それは毎回ではなくて、夕方から夜にかけて起こる率が高い。このような行動を見せたある犬は、腰から後脚に慢性的な不快感を持っていることを示す震えや歩き方の異常がありました。

非ステロイド性抗炎症薬の投与と、犬に独立した休息場所を与え休息の邪魔をしない、犬のボディランゲージの読み方などの指導によって、キレる行動は改善されました。

2.一点をじっと見上げて動かなくなる犬

犬が一点をじっと見つめているとき「何か人間には見えないものが見える?」と半ば冗談になることが多いものですが、これは胃腸障害の可能性がある行動です。

毎日複数回にわたって天井をじっと見つめていたある犬は、逆流性食道炎を伴うびらん性胃炎と診断され、治療の開始から1週間後には天井を見つめる行動は解消しました。人間でいう「胸焼け」の症状による痛みや不快感を和らげようと上を向いていたと思われます。

3.空中の虫に噛みつくような動作をする犬

空中に飛んでいる虫にパクッと噛みつくような動作を虫がいないのに繰り返す行動も胃腸障害の可能性があります。胃や腸の不快感がこのような行動につながり、治療と共に多くの例が改善したとのことです。診断された疾患は消化器官全般で多岐に渡ります。

4.カーペットを掘る行動を異常に繰り返す犬

カーペットを掘る行動を繰り返して破ってしまったり、周辺の床なども傷つけてしまう犬の行動治療を開始したところ、以前の怪我が適切に治療されていなかったことが分かりました。

カーペットを掘る行動は犬が足の不快感を何とかしたくて起きていました。適切な投薬で掘る行動は改善され、犬はリラックスできるようになったといいます。

行動治療を始める前に健康チェック

エコー検査を受けるラブラドール

上記の例はたくさんの症例のほんの一部です。痛みから来る行動の変化として一般的なものは、トイレトレーニングが完了しているのに家の中で粗相してしまう犬、トイレ以外の場所で排泄してしまう猫、犬猫ともに攻撃的になる、などがあります。

また、以前に比べて学習能力が落ちたように見える場合も痛みが関連していることが多いそうです。

以前に比べて大きな音を怖がるようになった場合にも痛みが関係していることがあります。音に驚いてビクッとした時に痛みを感じるためです。寒い時期に外に出ることを嫌がる場合も「寒がりね」と済ませるのではなく痛みがあるのではないかと考えることが大切です。

ここで紹介した研究報告の動物行動治療の専門家は、紹介されて来た症例の少なくとも3分の1は、問題とされている行動の原因になっている痛みを持っていると報告しています。

3分の1はかなり控えめな数字であり、場合によっては紹介されて来た症例のうち8割は何らかの痛みを伴っている可能性があるとも報告されています。

動物行動治療は通常のトレーニングでは解決できなかった行動上の問題を、医療と動物行動学、飼い主への指導など総合的に解決していく治療です。

しかし、このように多くの痛みが見落とされている状況について、専門家たちは一般の臨床獣医師に対して行動治療に反応しない場合に痛みを考慮するよりも、疑わしい痛みを最初に治療することを勧めています。

まとめ

飼い主に甘える黒ラブラドール

一般的なトレーニングでは解決できない犬の行動上の問題を治療する行動治療の現場の症例のうち3〜8割は身体の痛みが問題行動の原因であるという、専門家からの報告をご紹介しました。

トレーニングで解決できない問題がある場合、飼育放棄や体罰につながってしまう例は少なくありません。しかし、行動上の問題が病気や怪我による痛みから来ているとしたら大きな悲劇です。

実際に病気の診断を下すのは獣医師にお任せしなくてはなりませんが、行動や動作の変化に気づくのは飼い主の役目です。人間にとって問題になる行動の背後に健康上の問題が隠れている可能性の高さを知っておくことは非常に大切です。

《参考URL》
https://www.mdpi.com/2076-2615/10/2/318/htm

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