はじめに
本題に入る前に、まずは犬の体の仕組みをおさらいしましょう。
基本的なことになりますが、体温を調節するための機能は肉球、鼻など限られた部分にしかないため、犬は人のように汗をかいて体温を調節することができません。犬がよくハアハアと舌を出しっぱなしにするのには、そうすることにより、体にこもった熱を放出しているという理由があるわけです。
舌を出すもう一つの大きな理由としては、歯のつくりと状態に関係があります。生まれつき口吻(マズル)が短い犬は一般的に上下の歯のかみ合わせが緩いものです。(詳しくはまた別の回でご紹介します)。上下の歯がきつくかみ合わないために、若い時から自然に前歯のあたりから舌がいつも見えているというわけですね。
また、シニアになり歯の状態が悪くなり歯が抜け落ちてしまうと、本来は口吻にしっかりと収まっていた舌でも、抜けた歯の部分からはみ出してしまいいつも舌が出ているという子がいます。
舌を出す心理3つ
1. 興奮
呼吸数が荒くなると、犬は舌を出してハアハアとパンティングと呼ばれる動作を繰り返します。運動後にまだ興奮が収まらず舌を出していることもありますが、精神的興奮も作用します。例えば初めて行く家、旅先などで良く見られますね。
これは時間が経ち、環境に慣れるのと共に落ち着いてきますが、そんなときは興奮をさらにかき立てるような行動は避け、飼主さん自身がリラックスを心がけると愛犬にもそれが伝わるので良いでしょう。
2.ストレス
不安、恐怖、緊張などの心理状態下において犬は呼吸数が多くなるということが分かっています。これは、呼吸をすることで精神を落ち着かせようとする心の表れでもあるそうです。
例えば雷が嫌いな犬では雷が鳴る前から何かストレスを感じ呼吸数が早くなる様子が見られますが、その際の犬は舌を出しっぱなしにしています。また、犬は大体において平和主義ですから、家庭不和などもストレスを感じやすいと言われています。勘の鋭い犬のことですから、微妙な空気を察してしまうのかもしれません。
※他に、よだれが止まらないなどの変わった症状がみられたら動物病院へご相談ください。
3.安心しきっている
1.2とは違い、こちらは舌がダラリと出ているような状態のことです。犬は呼吸が落ち着いてゆっくり浅く息をしているときでも舌を出す場合があります。それは緊張が解け、完全にリラックスしているときに良く見られる姿です。
例えばひどく疲れ果て深い眠りに落ちたとき、また、目は開けているけれども精神的に開放されている時には、筋弛緩(きんしかん)のようになりますね。体全体の筋肉の緊張が解けるのに従い口の周りの筋肉もまた緊張から解き放たれ、自然に口元が緩んでいるために舌が出ているというわけです。
このような状態にまでリラックスしている愛犬の姿を見ると、飼主としてはなんとも嬉しいものですね。
まとめ
いかがでしたか。舌を出しっぱなしにする犬の心理にはこのようなものがあります。ですから、運動の後やちょっとしたストレスを感じた際に愛犬の舌が出ていたとしてもほとんどは自然なことです。しかし、同じ舌を出している状態でも、いつもよりも呼吸が早いな、とか、元気がない場合は早めに動物病院を受診しましょう。
舌を出しっぱなりにすることで乾燥しないの?痛くないの?など不安に思うこともあるかと思います。上記1~3のケースでは、健康な若犬世代での心理状態による舌の出方をお話しましたが、シニア世代や健康上の問題で舌が絶え間なく露出している状態では、犬の舌は乾燥し、ひび割れや、変色につながることがあります
また、細菌感染や冬場の環境によっては凍傷を起こす可能性もありますので、これにはお気をつけください。