セラピードッグは仕事に負担を感じていないだろうか?
病院や高齢者の施設などを始め、最近では大学や消防署などでもセラピードッグを導入するところが増えています。トレーニングを受けた犬が人間のストレスを軽減し、ポジティブな効果をもたらすことは数多くの研究によって証明されています。
しかしセラピードッグとしての仕事が、犬に与える影響についてはほとんど研究がありません。犬への影響として考えられる確率の高いものは犬が感じるストレスです。全く見知らぬ人に触られたり、抱かれたりすることが負担になったり、ストレスを感じたりはしないのでしょうか。
この度ルーマニアの農業科学獣医学大学の研究者チームが、行動医学と動物福祉のヨーロッパ獣医会議において、セラピードッグが動物介在療法のセッションにどのように対応しているかというレポートを発表しました。
セッション中の犬の感情についての調査
研究者は、動物介在療法のセッション中に犬がどのような感情を持っているか調査することは、犬の福祉の状態を監視するために必要であると述べています。
研究チームは予備研究として7頭のセラピードッグを対象にした小規模な調査を行いました。7頭は年齢、性別、犬種、経験がそれぞれに異なっています。
犬たちは動物介在療法に参加する日にセッションの前後、セッションのない日の同じ時間の計4回唾液サンプルを採取されました。サンプルは唾液中のコルチゾールの値を調べるためのものです。
コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンの一種で、心身がストレスを受けると急激に分泌が増えるためストレスホルモンとも呼ばれます。コルチゾールが上昇すると代謝活動や免疫機能を活性化させます。言い換えればストレスを感じた時に素早く逃げる、または戦うための準備で、体の防衛機能の1つです。
犬たちのコルチゾール値に変化はあったか?
さて、犬たちの唾液中のコルチゾールはセッションに参加した日と休みの日で変化はあったのでしょうか?研究者たちは犬がセッションにストレスを感じているなら、セッション後のコルチゾール値は増加すると予想しました。
計測の結果はセッションの前後でコルチゾール値の有意な増加はなく、セッション参加日と休みの日の値にも有意な差は見られませんでした。したがって犬たちはセッション中にストレスを感じておらず’、セッションに臨む前にネガティブな予測でストレスを感じてもいないことが分かりました。
セッション中の犬の行動の観察分析からも、犬自身のリラックスや相手の苦痛をなだめるための行動が見られましたが、ストレスを示す行動は見られませんでした。これらの結果から研究者は犬たちが動物介在療法のセッションにうまく対応しており、ストレスを感じていないことを示していると締めくくりました。
まとめ
7頭のセラピードッグがセッションに参加した日と休みの日の唾液中のコルチゾール値を比較して、犬たちがセラピーにストレスを感じていないことを示した研究結果をご紹介しました。
今回の調査はサンプル数が7頭とたいへん小さい予備的研究なのですが、今後さらに標準化された研究にする価値があると研究者は述べています。
動物介在療法に参加する動物のストレス観察や向き不向きの見極めは、犬と人両方の健康と安全のために必要です。この研究のようなチェックが全てのセラピーアニマルに標準化されると良いですね。