老化とは何だろう
動物の体内では、古くなった細胞が新しい細胞へと作り変えられていくことで、生命活動を維持しています。この細胞の新陳代謝は、歳を重ねていくことで次第に衰えていきます。つまり、細胞の数が減っていくのです。
細胞が減っていくことで、各種臓器の機能も低下していきます。ホルモンの分泌量が減ったり五感の感知能力が低下したりと、具体的な不具合が生じてきます。これらの現象を「老化」と呼びます。
老化は加齢と共に表れる現象で病気ではありませんので、元に戻ることも進行を止めることもできません。しかも免疫力も低下するため、病気にも罹りやすくなります。
しかし、進行を遅らせたり症状を緩和させることは可能です。愛犬が、老後の生活をできるだけ長く快適に過ごせるように、老化のサインや意識すべきことについて知っておきましょう。
犬がシニア期に入った時にする行動
それでは、シニア期に入った犬がする行動を確認してみましょう。
1.呼びかけても無視することが多い
シニア期に入った犬は、飼い主さんから名前を呼ばれても無視することが多くなってきます。これには、聴力が衰えてきた、注意力が散漫になってきた、気力がなくなり何もする気が起こらなくなってきたなどの理由が考えられます。
よく観察し、聴力が衰えてきているようであれば、声をかけながら頭を撫でるなど、確実に愛犬に気付かせられる方法でコミュニケーションを図りましょう。声を掛けても反応しないことに対して、決して怒らないようにしてください。
2.急に触られると驚く
老化は、聴覚だけではなく視覚も低下させます。元々犬の視力はそれほど良くはありませんが、加齢と共に更に見えなくなっていきます。そのため、急に触られるとびっくりするようになるのです。
愛犬には、背後からではなく正面から、そして声を掛けながらゆっくりと近付くようにしましょう。
3.夜中に起きて鳴くことが増える
シニア期に入ると、夜中に起き出して鳴くようになる場合があります。犬の認知症の症状の一つでもあるのですが、すぐにそう決めつけるのは早すぎます。
加齢による筋力の低下で、シニア期の犬には睡眠時間が長くなる傾向があります。それで昼間に寝すぎてしまい、夜に眠れなくなっている場合があるのです。
昼間に活動をさせると、夜に睡眠を取れるようになるケースも多いです。
4.部屋の角や家具の隙間でぼーっとしている
シニア期に入ると、後退りが苦手になります。そのため、部屋の角や家具の隙間に入り込んでしまい、抜け出せなくなってぼーっとしていることが増えるかもしれません。
抜け出せなくなるような場所をなくす、またはそういう場所へ行けないように工夫をしてあげましょう。
5.ぎこちない歩き方をする
老化による諸現象が表れてくると、ぎこちない歩き方をするようになることがあります。筋力が低下する、関節が固くなり柔軟性が低下する、神経系統の伝達速度が遅くなりバランスをうまく保てなくなるなどが原因です。
ふらついたりつまづきやすかったり、犬によってその様子は異なりますが、後肢に力が入らなくなるケースが多いようです。
飼い主さんが意識してあげた方が良いこと
安全な生活環境を整える
老化が始まった犬は、少しずつですがさらに身体能力が低下していきます。
筋力は落ち、五感は衰え、気力も低下していきます。そういった中でも愛犬ができるだけ安全に過ごせるように、環境を整えましょう。
ソファなどにはスロープや踏み台を設置します。室内にある小さな段差も、市販の解消グッズ等を利用して対策しましょう。
また、家具の隙間を作らない、留守番時には円形サークルの中で過ごしてもらうなど、いろいろな工夫ができます。
身体への負担を減らす
フローリングのような滑りやすい床には、短毛のカーペットやマットなどを敷いて足腰への負担を減らしましょう。寝床とトイレや水飲み等の位置も、なるべく接近させましょう。
楽な姿勢で飲食ができるように高さのある食器や給餌台を利用したり、歩行が難しくなった場合は車椅子で補助したりなど、愛犬の状態に合わせていろいろと工夫しましょう。
安心できる生活環境を整える
急にガラリと生活スタイルを変えてしまうと、逆効果です。老犬にも適度な刺激や運動は必要ですので、散歩などの日課は変わらずに規則正しく行いましょう。
視覚、聴覚などが衰えてきたと感じた場合は、飼い主さんの行動を、愛犬に配慮したものに変えましょう。
ただし、部屋の模様替えはどこに何があるのかが分からなくなり混乱します。大きな変更は避け、ぶつからない、ぶつかってもケガをしない工夫をしましょう。
掃除しやすい環境を整える
粗相が増えたり食べこぼしが増えたりと、以前よりも汚れやすくなります。
掃除をしやすい環境にすることも大切です。トイレの周囲には撥水シート敷き、その上にペットシーツを敷くなど、市販のグッズが活用できます。
まとめ
今までできていたことが少しずつ出来なくなってくる、周囲の様子が分からなくなってくる。そういった自分自身の変化に対して、愛犬はとても不安な気持ちで過ごしているはずです。
どんなに身体能力が衰えても、それまでの長い年月を共に暮らしてきた飼い主さんと愛犬との絆は弱まりません。
飼い主さんが前向きで明るく、ゆったりとした気持ちで愛犬と接することで、愛犬も心安らかに落ち着いて暮らすことができるでしょう。
飼い主さんはなるべく愛犬の目を見ながら、明るくゆとりのある心持ちで、積極的にプラスのイメージを伴う声掛けをしてあげましょう。