カリフォルニアの獣医療用血液をめぐる法案
怪我や病気の治療で輸血が必要になるのは人間だけではなく、動物病院でも患者の犬や猫への輸血が必要になるのは珍しいことではありません。
この度アメリカのカリフォルニア州で、医療用の血液を収集するためだけの目的で供血犬を飼育することを段階的に廃止していく法案に州知事が署名をしたことが話題を集めています。
カリフォルニア州では現在、獣医師が治療用に入手するすべての動物の血液は、供血専用の動物を飼育している2つの民間企業から購入するものに限られています。
同州はこのような企業からの動物の血液を必要とする米国内唯一の州です。他の州では人間の血液バンクと同じ仕組みの一般のペットからの献血のシステムがあるからです。
しかし2021年10月、州知事の署名によって新法案が成立したことにより2022年以降、事態は変わって行く予定です。
供血のためだけに閉鎖されたケージに何年も閉じ込められた犬たち
サンフランシスコ動物虐待防止協会など動物保護団体は、供血犬を飼育している施設での犬の扱いが動物虐待に当たるとして追求を続けていました。犬たちは閉鎖的な施設のケージで犬らしい活動を何もすることがない状態で、血液を提供するためだけに何年も閉じ込められているからです。
しかしこの2企業は、州の検査記録の非開示を含む公的な記録に関する規制の全面的な免除を受けているため、虐待を立証することは難しい状態でした。今回の法案成立によって、2022年1月1日からこれら企業への公的記録に関する規制免除は一切無くなります。
カリフォルニア州は、他州で実施されているような飼い主が愛犬の血液をボランティアで提供する動物用血液バンクの準備に着手します。
動物用血液バンクが民間企業に匹敵する十分な量の血液を提供できたとカリフォルニア州食品農業局が判断してから18ヵ月以内に、飼育下の供血犬からの血液の使用を段階的に廃止することが法案に記されています。
日本の供血犬の事情は?
このようにカリフォルニア州で供血のために飼育されている犬たちにようやく希望が見えて来たのですが、日本の場合はどうでしょうか?
供血のためだけに複数の犬や猫を飼育していた動物病院の例がテレビなどで取り上げられ、供血犬の劣悪な生活環境を知ったという方も多いかもしれません。
もちろん全ての供血犬が虐待に当たるような扱いを受けているわけではなく、動物福祉に配慮して供血犬を飼育している病院もあります。実際のところは供血犬を飼育している病院は少数で、病院単位で供血ボランティアのお願いをしている例が多いようです。
日本には国や自治体、または民間団体が管理する動物用の血液バンクというものがまだありません。愛犬が供血犬になることに興味がある方は、ぜひかかりつけの動物病院に相談なさってみてください。
まとめ
アメリカのカリフォルニア州で、供血用のためだけに企業で飼育されている犬の血液の使用を段階的に廃止して行く法案が成立したという話題をご紹介しました。
どんな犬や猫でもいつ輸血が必要になるかわかりません。外国の法律の話は一見関係がないように見えますが、供血犬の存在や供血ボランティアに参加することなどを考えるきっかけにしていただけたら幸いです。
《参考URL》
https://www.latimes.com/california/story/2021-10-09/caged-dogs-used-to-be-sole-source-of-canine-blood-supply-in-california-thats-about-to-change
https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billNavClient.xhtml?bill_id=202120220AB1282