犬が尊敬する相手とは?
古来より犬たちの祖先は群れで暮らしていました。その社会的群れを統率するのがオスのリーダー。だいたい6~10頭がひと群れとなり狩りをして生活を営んできました。当然のことながらリーダーは群れの仲間から尊敬され、命を守る存在であったと言えます。
わたしたち、人が「リーダー」と聞くと、思わず「上司のように命令をする人」とか「軍隊のように率いる人」などをイメージしがちですが、犬たちにとっての尊敬できるリーダーとは、「頼れる」や「守ってもらえる」といった、落ち着いた広い心を持つ存在のことだと言われています。
犬が尊敬している人にみせる仕草3選
では、その仕草にはどんなものがあるのでしょうか。ここからは具体的な犬の仕草を、犬の気持ちとともに見ていきましょう。
その1
「アイコンタクト」。犬たちは、リーダーからの指示があればすぐに動けるようにとリーダーの様子に常に気を配ってきました。そんな習性を持つことから、尊敬する飼い主さんが今、なにをしているか、どんな表情をしているかについては、とても気になるものです。
犬たちは本来、真正面から目と目を合わせるのがとても苦手な動物だとされています。その理由には諸説ありますが、一般的に「ケンカになるのを避けるため」や、「文句はありませんよ」といった、主にトラブルに発展するのを防ぐために身に着いたものだと言われています。
それでも尚、信頼や尊敬の念を抱く飼い主さんに対しては何かとアイコンタクトをしてくる傾向にあります。それは、お散歩で玄関を出る前、また、お散歩の最中、それからご飯をもらう前だったり。そう。犬たちは本能に関わるアクションをする前に「どうすればいいですか」。といった指示を仰ぐ仕草をします。これが、犬たちが尊敬するリーダーに従うポージングです。
その2
「伏せ」。これは意外~!と思われた方も多いのではないでしょうか。犬たちは、尊敬するリーダーの前でよく伏せをします。これも古来より体に染みついた野生の名残りとも言えますが、伏せというこの仕草。実は、あらゆる犬のポーズの中で最も攻撃体勢に不向きなものなのです。
ですから、犬たちは尊敬するリーダーの前では伏臥(ふくが)の姿勢をとり、リーダーに対して「敵意はありませんよ。攻撃する気はありません。あなたに従います」。という尊敬の意思を伝えているのですね。
その3
「体の一部を密着させる」。これは割と勘違いされやすい仕草のひとつですので、犬たちに代わり本来の意味をお伝えさせていただきます。例えば犬がそっぽを向きながらお尻を飼い主さんにくっつけてくるとき。「失礼ね。うちの子って私をバカにしているの?」こんなふうに思ってしまった経験はないでしょうか。
なんとなくバカにされているように感じるこの仕草。でも実は、犬にとっては「あなたを尊敬、信頼していますよ。」といった気持ちが込められています。なぜなら、お尻だけを飼い主さんにくっつけてくるとき、おのずと犬の視線は飼い主さんと逆の方向にあるでしょう。
その意味は、「私の向いているこちら側は私が見守りますから、飼い主さんは反対側をお願いします」。といった、全面的な信頼関係下にある者同士だけにできる妙技なのです。
ですから、犬が体の一部を密着させてくるときは、尊敬や信頼の気持ちから寄り添っていると思ってください。そしてそれが例えお尻の一部であったとしても、こうした意味があるということをどうぞ覚えていてくださいね。
まとめ
さて、いかがでしたか。動物行動学とカーミングシグナルの両方の面から、犬が尊敬する飼い主さんだけに見せる仕草をご紹介してまいりました。最後に、犬が尊敬するのは決して怒鳴ったり、命令ばかりしたり、大きな音で威嚇する人ではないということを付け加えておきます。
その意味は皆さんもうお分かりですね。犬が尊敬する飼い主さんになるためには、犬の気持ちを理解し、導いてあげること。これこそが優れたリーダーとしての最も重要な資質です。