表皮の構造
犬も人も、毛を除くと体の外側を覆っているのは表皮です。表皮は角化細胞が密に積み重なったような構造をしています。
奥から順に、基底層、有棘層、顆粒層となり、最も外側が角質層になります。
表皮の下には血管があり、その下に真皮、さらにその下には皮下組織があります。
表皮は、体内の重要な成分等が外部に漏れ出てしまうことや、体の外部から異物が体内に侵入することを防いでいます。これらの機能を皮膚のバリア機能といいます。
基本的には人の皮膚も犬の皮膚も同じような構造と役割を担っているのですが、犬はほぼ全身を被毛で覆われているため、被毛に覆われていない鼻鏡と肉球を除き、皮膚の厚さが人の1/3程度しかありません。そのため、犬の皮膚は人の皮膚よりもデリケートだと言えます。
ターンオーバーとフケ
細胞には寿命があり、体を構成している個々の細胞は常に生まれては死ぬことを繰り返しています。
表皮を作っている角化細胞は基底層で生まれて増殖し、有棘層、顆粒層へと分化しながら最終的には死んで厚い膜を持った強靭な角質細胞となって角質層を構成するようになります。そして、最後は剥がれ落ちて「フケ」となるのです。
この、角化細胞が生まれてからフケとなるまでの時間を「ターンオーバー」といいます。
健康な犬の場合、ターンオーバーは約3週間です。つまり、全身の表皮細胞が日々少しずつフケとして剥がれ落ちていくのは、ごく正常な状態なのです。
しかし普段よりもフケが目立つ場合は、なにがしかの原因により、ターンオーバーが短縮されているというサインです。例えば、多くのフケが出る症状の脂漏症だと、ターンオーバーが1週間に短縮されると言われています。
ターンオーバーが3週間から1週間に短縮されるということは、フケの量が3倍になるということですから、フケが目立つようになるわけです。
ターンオーバーを短くする原因は複数あります。ターンオーバーを短くする原因を見ていきましょう。
フケが出る原因
1.環境や日頃のケアによる影響
犬の皮膚は被毛に覆われているために非常に薄いのですが、そのために表皮内の水分が蒸散しやすく、肌が乾燥しやすいという特徴があります。
特に、高温の場所の近くにいる場合はより乾燥の度合いがひどくなります。
皮膚の乾燥が進みダメージを受けることでターンオーバーに悪影響が出、通常時よりもフケが多く出るようになります。
また、日頃のケアの影響でフケが増えることもあります。
定期的に愛犬をシャンプーすると思いますが、そのシャンプーの成分が愛犬の肌に合わない場合やシャンプーを行う回数が多すぎる場合に、皮膚がダメージを受けてフケが多くなることに繋がるのです。
健康な犬の場合、基本的には1ヵ月に1回のシャンプーで十分です。
2.皮膚病の症状
皮膚の病気が原因でターンオーバーが短縮されることもあります。病気の症状としてフケが多くなる代表的な皮膚病をご紹介します。
<犬疥癬>
飼い主さんが制止してもおさまらない程のひどいかゆみを伴い、耳、お腹、足などに赤みやぶつぶつ、フケが出ます。
<マラセチア皮膚炎、乾性脂漏症>
睡眠・散歩・食事中などにも出るため生活の質を落とすレベルのかゆみを伴い、皮膚が重なる部分にベタベタや赤み、フケが出ます。
<毛包虫症>
飼い主さんが制止すればおさまり、睡眠・散歩・食事中には出ない程度の軽いかゆみを伴い、顔や足に腫れ、脱毛、フケが出ます。
<皮膚糸状菌症>
軽いかゆみを伴い、顔や足に赤み、脱毛、フケが出ます。
<乾燥肌>
軽いかゆみを伴い、肌が乾燥して毛質が悪くパサパサとし、細かい白いフケが出ます。
3.長期にわたるストレス
犬は、ストレスを感じると自分の体の同じ部位を舐め続ける傾向があります。また、ストレスにより免疫力が低下することも知られています。
このように免疫力が低下した状態で同じ部位を舐め続けると、舐めている部位が炎症を起こし、皮膚炎になったりアレルギーを悪化させたりします。
皮膚炎やアレルギーの悪化が皮膚のコンディションに影響してターンオーバーを短縮し、結果としてフケが増えることに繋がります。
まとめ
フケが出ることは、特別異常なことではありません。
しかし、普段よりも沢山のフケが目立つようになった、フケそのものの状態がいつもと異なるというような違和感を感じた場合は、動物病院で診てもらうことをおすすめします。
皮膚病はきちんと原因を突き止めて、たとえ時間がかかってもしっかりと治療する必要があります。そうしなければ、一進一退を繰り返して徐々に悪化・長期化し、それだけ愛犬を苦しめることになるからです。
愛犬の皮膚の状態を日頃からよく観察し、違和感を感じた場合はきちんと治療を受け、飼い主さんの自己判断で勝手に投薬や通院を中断しないようにしてあげましょう。