肛門腺ってどこにあるの?
犬の肛門腺は外見からは目視することができません。なぜなら、肛門腺とは、肛門周辺の皮膚下にある嚢(のう)だからです。肛門を中心にした時計で表現すると、ちょうど4時と8時の位置に肛門腺という袋があり、その中に悪臭がする分泌物が入っています。
本来、排便に合わせてこの肛門腺から分泌物が自然に出るのですが、中には出にくく溜まってしまう犬もいます。そのため、人が定期的に絞りださなければならない犬もいます。
肛門腺を絞らないと、どうなるの?
肛門腺が出にくい犬、溜まりやすい犬は、処置せずに放置しておくことによりどんどん肛門腺が溜まり、病気にかかってしまう可能性があります。では、どのような病気につながることがあるのでしょうか。
その1
「炎症」。肛門腺が溜まることにより袋(嚢)が炎症をおこし、化膿することもあります。悪化しないうちに、早めに獣医さんで診察してもらうようにしましょう。
その2
「破裂」。肛門腺を絞らずに分泌物がパンパンに溜まってしまうと袋(嚢)が破裂し、お尻の皮膚が破けてしまうことが。こうなってしまうと、飲み薬や塗り薬の他に外科的な処置が必要となる可能性があります。
その3
「尻尾の咬傷」。肛門腺が溜まり炎症を起こし始めると、くるくると尻尾を追いかけるような仕草をしたり、尻尾の付け根をなめたり咬んだりすることがあります。これにより「舐め壊し」や「咬み壊し」と呼ばれるような傷を作ってしまうことも。
肛門腺絞りのやり方
肛門腺の分泌物のタイプは実に様々です。色は薄茶色やからクリーム色。形状は水状、粒が混じったようなもの。また、歯磨き粉のようなペースト状のものまであります。多くはその犬ごとに分泌物のタイプが分かれますが、その時の体の調子により毎回違う状態の分泌物を出す犬もいます。
水状のものは柔らかいため簡単に絞ることができ、粘度が固くなるほど絞りにくいものです。どの形状の分泌物であっても匂いは非常に強いですから、衣類に付着しないように注意してくださいね。
1.準備
ビニール手袋、ベビーオイル等ローション(人肌のホットタオルなどでも)、ティッシュ、ノンアルコールウエットティッシュをあらかじめ用意します。
2.体勢
四肢を立たせた立位で行います。尻尾が長い犬は片手で尻尾を軽く持ち上げ、肛門がよく見えるようにします。このとき、強く尻尾を持ち上げると尻尾の付け根を痛める原因にもなりますので、優しく行ってください。
3.絞る前のひと手間
急に肛門腺絞りを行うと、犬が痛がる場合がほとんどです。痛い思いをさせてないために、まず、肛門の周りをローションなどで揉みほぐすように優しくマッサージすることがポイントです。
これは一般的にはあまり知られていないことかもしれませんが、わたくしの経験からこのひと手間をおススメします。このようにマッサージをすると肛門腺がほぐれて開きやすくなり、また、分泌物も柔らかくなります。
これにより、必要以上に犬も痛がらずに行えるというわけですね。ローションの代わりに人肌に温めたホットタオルなども活用してみましょう。(火傷には十分ご注意ください)
4.実践
十分にマッサージしたあとは、いよいよ実践です。肛門の両脇下から肛門へ押し上げるようにして分泌物を絞り出しますが、このとき、予想よりも勢い良く出てくる可能性があります。
飛散を防ぐためには肛門付近をあらかじめティッシュで覆ってから絞るようにすると良いでしょう。一度でギューっと力を入れることよりも、少しずつ揉み上げるように下から上へと絞っていきます。
5.仕上げ
分泌物で汚れた肛門まわりをノンアルコールウェットティッシュで丁寧に拭き取りましょう。その際、犬が「さっぱりした~」というような表情をしていたら大成功。
成功しても失敗しても、肛門腺絞りのあとはオヤツや遊びのご褒美をあげてくださいね。そうすることで、肛門腺絞りに慣れてくれますよ。
まとめ
今回はご家庭での肛門腺絞りについてお話してまいりました。ご家庭で行うのが大変な場合は無理をせずに、獣医さんやトリミングサロンでプロに行ってもらいましょう。上手に肛門腺ケアをして愛犬といつまでも健やかに暮らしたいですね。