この記事に取り上げる犬種は、一般的に飼うのが難しいと言われている犬種の一部ですが、同じ犬種内でも性格には個体差がありますので、該当犬種の全てのわんちゃんに当てはまることではありません。
しかし、一般的に言われている犬種毎の特性を知ることで、「見た目が好みだから」という安易な理由だけでわんちゃんを飼い始めたり飼う犬を選ぶのではなく、事前に犬という動物について、また犬種の特性を理解したうえで犬を飼うかどうか、どんな犬を飼うかを決断して欲しいという思いを込め、この記事を書いています。
柴犬
柴犬といえば日本犬の代表格!むしろ日本では「犬=柴犬」の方程式が成り立つ人がたくさんいると言っても過言ではないかもしれません。
見た目の親しみやすさと可愛さに加えて飼い主に忠実で賢いといったイメージから、飼ってみたい犬種ランキングでは常にトップ争いに食い込んでいる犬種でもあります。
ですがその一方で、飼育放棄等によって動物愛護センターに保護される犬種ランキングでも、柴犬がトップクラスであることをご存じでしょうか。
1.独立心が強くしつけが難しいことも
柴犬が初心者に向かないといわれる理由の第一は、そのしつけの難しさです。柴犬をはじめとした日本犬は、世界の数ある犬種の中でも最もオオカミに近いタイプ、つまり野生動物としての性質を強く残した原始的な犬種とされています。
野生動物としての性質が強いということは、独立心が強い、警戒心が強い、人からの指示を待つよりも自分で考えて判断して動く、自然界で生き残るのに有利かどうかが判断基準である、などと言うことができます。精神的な成熟が早く、幼稚さがあまり残らないとも言えます。
柴犬のしつけの難しさはこのような特徴からくるもので、一般的に言われているしつけ法が合わなかったり、犬自身の自主性を尊重することとモチベーションをあげてトレーニングを行うことのバランスをとるのが難しかったりします。また、社会化期が終わるのも他犬種より少し早いと言われており、子犬期のしつけを早期に始め継続することが特に重要なタイプの犬種です。簡単には言うことを聞いてくれない場合、犬には犬なりの理由がありますが、初心者ではその理由に気づくことが柴犬では特に難しいこともあるでしょう。
2.噛み癖の強い子が多い
柴犬をはじめとする日本犬は上記のような性質を持つことが多く、昔ながらの柴犬は知らない人や犬に対してフレンドリーだったり、飼い主さんの指示をいつも待っているタイプではありません。野生動物がそのような性質であったら、生存にとても不利だからです。その代わり、若い時から精神的に自立し、自分の意思をはっきりと持っています。
そのような性質の犬に、ベタベタと触れ合うことを求めたり、知らない人にも愛想をふりまいてたり他の犬とも仲良く遊んだりすることを求め、強要すると、犬から「いやだ」と言われることになります。犬は最初、表情や耳、体勢、しっぽによる表現で「いやだ」を伝えますが、それでも相手がやめてくれないと自分を守るために逃げるか攻撃するかとなってしまいます。犬の攻撃とは噛むことです。日本犬は実際に噛みが問題となっていることが多いですし、噛まれはしなくても歯をむいたり唸ったり、といった問題を経験している方が多くいます。
日本犬で噛みの問題が多い理由の一つには、犬が望んでいないことを良かれと思って強要する飼い主がいることがあげられます。柴犬の持っている性質が自分が犬に望んでいるものなのか、自分は犬と何をしたいのかをよく考える必要があります。それを考えることなしに、見た目の好みだけで柴犬を選んで愛玩犬としてかわいがると、「飼うのが難しい」ということになる可能性があります。
恐怖体験がもととなって噛むようになる場合もあります。それはどんな犬にも起こり得ますが、自主性が強く、仲間と仲間以外をはっきりと区別する傾向が強い柴犬の場合、まずは怖い思い(身に危険が迫っていると思うこと)をさせないことに特に配慮が必要です。「噛み癖が直らない」という理由で飼育放棄される柴犬は多く、ドッグランやトリミングサロンでも柴犬は「噛むのではないか」と警戒されがちな存在になっていることもあります。噛み癖の矯正は素人では難しい場合が多く、柴犬に理解のあるプロの手を借りる必要も出てきます。
愛玩目的で柴犬を飼いたいと希望する人が多い現在は、よりかわいらしい見た目をして性格も昔ながらの柴犬とは異なりペット向きの性格をした柴犬も多く繁殖されています。同じ犬種でも、ブリーダーの考えや系統によって見た目や性格の傾向が大きく違う場合がありますが、柴犬はそんな犬種の一つと言えるでしょう。
ジャックラッセルテリア
ジャックラッセルテリアは、外国映画にもよく登場する人気犬種の1つです。特に2011年に公開されアカデミー賞を受賞した映画『アーティスト』に出演していた「アギー」は、その名演技でカンヌ国際映画祭のパルム・ドッグ賞を受賞して一躍脚光を浴びました。
それほど多彩な演技までこなしてしまうジャックラッセルテリアですが、こちらもまた初心者には難しい犬種の代表格とされています。
1.物覚えが良い、作業意欲がとても高い
ジャックラッセルテリアはテリア種の小型犬で、とても賢い犬種です。そして、働いていたい、何かをしたいとう作業意欲を強く持っています。ですので、飼い主さんが意図せずに学ばせてしまった良くない行動が強化される前に正しい行動を教える必要があります。常に何か「やること」を求めていて物覚えが良いので、飼い主さんのしつけが少しでも遅れたり、ジャックラッセルテリアのこの特徴を分かっていない方が飼うと、とても扱いにくい犬になってしまう可能性があるのです。
ゼロの状態のわんこに正しいことを教えるしつけはそこまで難しくありませんが、一度悪いクセが身に付いてしまったり、間違った学習をさせてしまったわんこの考えを修正するのは至難の業です。
2.無尽蔵の体力がある
またジャックラッセルテリアは、働きたいと意欲が強いだけではなく、いつまででも働き続けられる無尽蔵の体力があります。もともと、馬に乗って行うキツネ狩りに使う犬として作られた犬種なので、小型犬とは思えないほどの体力があって当然の犬なのです。またジャックラッセルテリア自身も、よく働くのを楽しみます。ですので、ジャックラッセルテリアとの生活では、前述の旺盛な作業意欲を満たし無尽蔵の体力を使いきらせてあげることが重要です。
わんこに必要な運動量は体の大きさに比例すると考える人が多くいますが、そうではない場合も多く、ジャックラッセルテリアはその代表です。
その小さな体には底知れない体力を秘めており、ちょっとやそっとの運動量やただ歩くだけの散歩では満足してくれません。運動量が足りないと、欲求不満となって問題行動にもつながります。狩りをさせる必要はありませんが、一緒に走ったりボール遊びをしたり、ドッグスポーツをやらせたりすると良いでしょう。ジャックラッセルテリアを満足させるには、飼い主さんの体力と時間も不可欠なのです。
ボーダーコリー
ボーダーコリーの名前は知らなくても、「牧羊犬として羊を追い回している、白黒の犬」といえば犬好きでなくても多くの人が想像がつくのではないでしょうか(ただし、ボーダーコリーには白黒以外のカラーも多くあります)。ボーダーコリーはイギリス原産の中型犬で、その訓練性能の高さからアジリティやドッグ・ダンス、ディスク・ドッグなど多方面で活躍している犬種です。
1.賢さゆえに「ナメられる」
牧羊犬として人の指示に従い、時には自分で考えて仕事をするボーダーコリーは、世界中の牧場やドッグスポーツの大会で活躍していることからもわかるように、とても賢い犬種です。一説では世界で最も賢い犬種とも言われています。
ですが、飼い主さんがこの「賢さ」を勘違いし、「賢い犬だからあまりしつけなくても大丈夫だろう」と犬が勝手に人間社会のルールを学んでくれると思って生活をすると、飼い主さんにとってもボーダーコリーにとっても大変なことになります。
犬が賢いということは、学習スピードがはやかったり、学習したり作業したりする意欲が強かったり、人が喜ぶことをしたいという気持ちが強いということです。このようなタイプの犬に飼い主さんがして欲しいことして欲しくないことを教えずにいると、犬は勝手に「どうしたら自分の要求が通るのか」を学習してしまいますし、また適切な指示を与えてくれない人間に頼ることはせず、自分で考えて行動しだします。その結果として「わんこにナメられている」と飼い主さんが思う状態、飼い主さんの指示に従ってくれない、ということになってしまうのです。
これはボーダーコリーに限らず「賢くて」「訓練性能が高い」と言われている犬種で往々にして起こりがちなことです。
2.やはり運動量もネック
ジャックラッセルテリアと同様に、必要運動量が多いこともネックです。ボーダーコリーはジャックラッセルテリアよりは大きいものの大型犬ではありません。しかし、運動量は相当な量を必要とします。
また運動量についてではありませんが、牧羊犬としての本能が強いボーダーコリーには、教えなくても何かを追い込んで集める行動(ハーディング)をとりたがる犬が多くいます。ハーディングの対象は同居の猫だったり小さい子どもだったり、車や自転車だったりと色々で、この欲求をうまく発散させたり行動を制御できない飼い主だと、ボーダーコリーとの生活に困難が生じることもあります。ボーダーコリーと一緒に暮らしたいと思ったら、自分の生活環境や生活リズム、時間的な余裕についてもよく考える必要があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?わんこと一緒に暮らしたいと思ったとき、そしていざ伴侶とするわんこを選ぶとき、見た目の可愛さから入ることはまちがいではありません。ですが見た目の可愛さだけで選んでしまうと、お互いに不幸な結果を招いてしまうかもしれないのです。
一度飼いはじめたからには「思っていたようにならないからやめる」ことは許されません。わんこを飼いたいと思ったら、まずはその犬種の特性をしっかりと調べることが必要です。