鳴き声の使い分け
犬は、他者とのコミュニケーションに嗅覚、聴覚、視覚を使っています。私達人間に対しても同じです。
しかし私達に理解できるのは、視覚に訴えるボディランゲージと聴覚に訴える鳴き声だけと言っても過言ではないでしょう。
犬たちもそれを察しているのか、自分の気持ちを伝えるために、鳴き声を使い分けています。
鳴き声には、ワンワン、キャンキャン、ウーッ、クーン、クンクンなどの種類があり、それぞれに喜び、甘え、警戒、警告、威嚇、不安、興奮、痛み、要求などを表しているのです。
ワンワンやキャンキャン、ウーッといった鳴き声は、比較的分かりやすいと思います。しかし、同じ鼻にかかったような鳴き声でも、クーンやクンクンには、いろいろなパターンが存在しています。
そこで今回は、クーンといった鼻にかかったような鳴き方をしている時の、犬の心理について考えてみたいと思います。
犬がクーンと鳴く時の心理
1.甘えやおねだり
犬の気持ちを理解するためには、鳴き声だけを聞くのではなく、同時にどういうしぐさをしているかを観察することが大切です。
鼻にかかったいかにも甘えたような声でクーンと鳴きながら、飼い主さんのことを上目遣いで見ている時の犬は、大好きな飼い主さんに甘えたいという気持ちが溢れている状態です。
子犬がよく発する鳴き声ですが、成犬になっても、自分以外のことに気が向いている飼い主さんの注意を自分の元へ引き寄せたい時などに、このような鳴き方をします。
甘えという気持ちと共に、おやつや遊びをおねだりをしている場合もあります。
何を欲しがっているのかは、愛犬の様子から察しましょう。そして、すぐにあげてしまわずに、「オテ」とか「オスワリ」のような、何か愛犬の得意なコマンドを出し、できたご褒美におやつや遊びなどを与えるようにすると良いでしょう。
2.興奮
遊びの真っ最中や、飼い主さんが帰宅した時の出迎えで発する少し低めのトーンでのクーンという鳴き声は、愛犬の興奮度が高いことを示しています。鳴きながらしっぽを激しめに振っていることが多いです。
もっと遊んで欲しい、やっと帰ってきた、早く遊ぼう、お腹がすいたよ等の、少し興奮度が高めの甘えやおねだりの気持ちが混在していることも多いです。
あまり愛犬の興奮度を上げすぎてしまうのは、エスカレートを招くためよくありません。軽く無視をする、または「オスワリ」といったコマンドで愛犬を一旦静かに落ち着かせましょう。
愛犬と遊びの続きを行ったり、出迎えに応えたり、ご飯をあげたりといったアクションは、愛犬がクールダウンした後に行うようにしましょう。そうすることで、愛犬は興奮している間はいう事を聞いてもらえず、落ち着くと良いことがあるということを学習します。
3.不安や恐怖、ストレス
高い声でクーンと鼻にかかったような声で鳴いている時は、不安や恐怖、ストレスといった感情を抱いていることが考えられます。
しっぽは後ろ脚の間に巻き込み、耳を垂らして元気のない、怯えた様子が伺えます。震えている場合もあるでしょう。
初めての物や場所、また過去に嫌な経験をしたことのある物や場所に直面した時に発することが多いです。
愛犬が怯えている原因を見極めて、それを取り除いて安心させ、落ち着かせるようにしましょう。
飼い主さんが出かける支度をしている時に、それを察した愛犬がこのような鳴き方をしながら、落ち着かない様子でウロウロと歩き回ることがあります。
愛犬が飼い主さんの出がけにこういう様子を見せる場合は、一旦愛犬の気を別のことに逸して、気付かないうちに家を出ることをおすすめします。
たとえば、おやつを隠した知育玩具を与え、それに夢中になっている間に出掛けてしまうといった方法です。
4.服従
首を下げたり、お腹を天井にむけるポーズをしたりしながら、高めのトーンで伸ばすようにクーンと鳴いている場合は、「降参。服従します!」というサインです。
犬同士で険悪な雰囲気になった場合に、相手が自分よりも強いと判断して恐怖を感じた場合に行うポーズと鳴き方です。この服従のサインを相手に送ることで、犬は大きなけんかに発展することを避けるのです。
同じように、飼い主さんが怒っている時に愛犬がこのようなサインを送ってくることがあるかもしれません。その場合、愛犬は怒っている飼い主さんにも恐怖感を覚えていると思われます。
感情的に怒りすぎていないかを冷静に振り返り、適度なところでやめてあげましょう。
まとめ
人間は、言葉を使ってコミュニケーションを図ります。言葉を用いているため、相手の言いたいことを論理的に理解することができます。
しかし、相手の本当の気持ちを推し量るには、やはり声の調子や表情、しぐさなどとあわせて判断する必要があります。
それと同様に、犬も鳴き声だけを聞いて犬の気持ちを理解することは難しいでしょう。
鳴き声、声の調子とあわせて、顔の表情や耳、しっぽ、姿勢などのボディランゲージもしっかりと観察し、愛犬の気持ちを推測することが大切です。