「ペットは心身の健康に良い」は必ずしも正しくないという研究結果

「ペットは心身の健康に良い」は必ずしも正しくないという研究結果

犬や猫を飼うと心身の健康に良い影響があるという報告は数多くありますが、これに対して疑問を投げかける研究結果が発表されました。

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ペットを飼うことは心身の健康に利点があるというのは本当か?

ソファーでくつろぐカップルと犬

「犬を飼うと心臓病のリスクが下がる」「ペットを撫でると血圧が安定する」「犬を飼うと社会的な孤独が減少する」このような研究結果はマスメディアで頻繁に取り上げられ、ペットは飼い主の心身の健康を助けるということには多くの人が疑いを持っていません。

これらの研究は決して信憑性が低いものではありません。確かに犬を飼うことで散歩など運動量が増えると心臓や血圧に良い影響が出やすくなるし、ペットに気持ちを慰められることは多くの飼い主さんが理解しています。しかし、近年ではペットと心身の健康についてポジティブな面だけを主張することに疑問を投げかける研究報告が増えています。

先ごろ発表されたアメリカのタフツ大学のヒューマンアニマル相互作用研究所の報告もその1つです。アンケート形式で行われた調査回答を分析した結果は少し意外なものでした。

精密で大規模なアンケート調査が示した結果

犬とジョギングするカップル

アンケートの回答者は住所と電話番号からランダムに抽出して、電話または郵便での参加の依頼に答えた人々です。1,267人がオンラインアンケート調査に回答しました。

調査の質問項目には、年齢、性別、職業、結婚状況など「人口統計学的な質問」、身体的健康全般、体重指数(BMI)、運動習慣、身体障害の状態、認知障害、不安障害、うつ病(またはうつ状態)など「心身の健康に関する質問」、ペットを飼っているか、ペットの種類など「ペットに関する質問」がありました。

回答者の中でペットを飼っている人の割合は、アメリカ全体でのペット所有率とほぼ同じで、他の項目でも回答者の多様性に偏りがないことが確認されました。寄せられた回答を人口統計学的および社会経済的差異を統計的に調整して分析すると、研究者自身も驚いた意外な結果が得られたそうです。

ペットの飼い主は非飼い主に比べて人口統計学的要因が少し違っていました。世帯収入とペットの有無には関係が無く、大学卒業者は高校卒業者よりもペットを飼う割合が低くなっていました。また、子供がいる家庭では犬を飼っている人が多くなっていたといいます。

そしてこの研究のテーマであった、ペットの飼い主がペットを飼っていない人よりも身体的または心理的に良い状態にあるという証拠は得られなかったのです。

犬を飼っている人は定期的な運動習慣があり、より高い身体活動に関連していましたが、BMI指数(肥満指数)ではペットを飼っていない人との差はありませんでした。

精神面ではペットの飼い主のうち、女性はペット無しの人よりも不安障害を持っている割合が高くなっていました。しかし、男性の飼い主はペット無しの人よりも不安障害の割合は低くなっていました。うつ病(またはうつ状態)は、ペットの飼い主はペット無しの人々の約2倍の割合になっていました。

悩みも落ち込みも愛情あってこそ、そしてメディアに踊らされないこと

女性にハグされている犬

今まで一般的に考えられていたのとは違う結果が出たのは意外な気もする一方で、ペットと暮らしている人なら、彼らがくれる喜びや幸せと同じくらい悩んだり落ち込んだりする経験を持っていると思います。

愛犬の行動上の問題、健康の問題、災害などの際には自分以外の命を守らなくてはいけないプレッシャー、医療費や住居費など経済的な問題など、ペットを家族として大切に思っている人ほど苦労や悩みが増えるのは自然なことです。

また、メディアが発信する情報は事実の上に一般読者の好みがプラスされていることも心しておく必要があります。一般的に人々は犬やその他の動物が人間を助けてくれるというストーリーが好きです。

ペットの存在が人々の心身の健康を助けてくれるという研究結果はこのような好みにピッタリなので、研究者の細かい意図は考慮されずに見出しだけがセンセーショナルになるのもよくあることです。

研究者は、今後人間と動物の関係が及ぼす影響について調査をする場合には、人口統計学的予測因子を慎重に検討および管理する必要性に言及しています。

まとめ

人の手に重ねられた犬の足

アメリカで行われた大規模なアンケート調査結果を精査したところ、ペットを飼うことは心身の健康に良い影響があるという証拠は得られず、項目によってはペット飼い主の方が健康的に低い場合もあったという結果をご紹介しました。

私たちの多くにとって愛犬や愛猫は家族の一員です。そもそも健康のことに限らず、使役犬ではない家庭のペットが「有益で役に立つことは必要なのか?」とじっくり考えてみる必要がありそうですね。

《参考URL》
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/21642850.2021.1963254

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