なぜ一緒に暮らしている飼い主さんが愛犬の病気に気付けないのか
愛犬の一番身近にいて、かつ愛犬の健康状態を一番気にかけている存在は、飼い主さんです。しかし、愛犬の様子が明らかにおかしいからと動物病院で診てもらう時には、かなり進行していることも少なくありません。
なぜ身近にいる飼い主さんが、愛犬の病気になかなか気付けないのでしょうか。犬自身が自分の体調が悪いことを隠そうとする習性があることが関係しているでしょう。しかし、それだけではありません。
そもそも飼い主さんは、医者ではありません。獣医師がすぐに病気を疑うような症状でも、それが病気から出ていると気付けなくても当たり前なのです。また、日々の変化があまりにも小さすぎて気付けないということもあります。
そこで今回は、気付きづらい犬の病気をご紹介します。頭の片隅に置いていただけると、愛犬の病気に気付きやすくなるかもしれません。
飼い主さんが見逃してしまいがちな気付きにくい病気
1.水頭症
頭蓋内には脳があり、その周囲や脳室には脳脊髄液が溜まっています。これがクッションとなって、脳を守っているのです。この脳脊髄液が過剰に溜まり、脳を圧迫することで神経症状などを起こす病気が水頭症です。
先天性の場合が多いです。おでこが大きく出ている、歩く時によく物にぶつかる、瞳が左右それぞれに外側を向いている、回るしぐさが多いといった場合は、それが生まれつきであっても一度獣医師に相談してみましょう。
2.膀胱ポリープ
膀胱の内部にポリープができ、おしっこをする時に詰まって出づらくなったり、粘膜が炎症を起こしたりする病気が膀胱ポリープです。重症化すると命に関わることもあります。
トイレに頻繁に行くようになった、おしっこが出づらそう、血尿が出る、トイレに居る時間が長くなったというような場合は、膀胱ポリープを始めとして泌尿器系の病気である可能性が高いので、一度受診しましょう。
3.甲状腺機能低下症
元気がない、おとなしくなった、あまり食べないのに太ってしまう、抜け毛が増えてきた、すぐに寒がるようになった、散歩に行きたがらない、寂しそうな表情が多いといった違和感を感じたら、甲状腺機能低下症かもしれません。
一見すると歳をとったせいだと思ってしまうような症状なので、気付かれにくいです。常に一緒にいる飼い主さんの違和感はあたっていることが多いので、気になったら相談できるかかりつけの病院を見つけておくことが大切です。
4.外耳炎
犬に多い病気の筆頭ともいえるのが、外耳炎です。耳の穴の入口から鼓膜までの部位を外耳道といい、ここに炎症がおきる病気です。進行すると慢性化し、更に深刻な中耳炎に繋がることもあります。
単に耳が汚れているだけだと勘違いされやすいのが、気付かれづらい要因のようです。定期的に耳の状態をチェックし、耳の内側の部分(耳介)の汚れを拭き取っても、数日ですぐに汚れてしまうような場合は、受診しましょう。
5.ドライアイ
人と同様に、犬もドライアイになります。涙が角膜全体に行き渡らず、乾燥して炎症を起こす病気です。特にフレンチ・ブルドッグ、パグ、シー・ズーのような短頭種で眼が飛び出している顔つきの犬種に見られます。
眼を頻繁にパチパチさせたり、眼脂がたくさん出る、眼を気にする素振りが多く見られるようになった場合は、一度受診してみましょう。
6.しっぽの脱臼や骨折
犬のしっぽにも、尾骨という小さな骨が並んでいます。愛犬がなにかのはずみでしっぽをぶつけたりドアなどに挟んでしまったりすると、しっぽも脱臼や骨折をすることがあります。
脚の脱臼や骨折の場合は歩き方の変化で気付きやすいのですが、しっぽの場合はなかなか気付けないことが多いようです。しっぽに触ると嫌がる、しっぽの動かし方がいつもと異なるといった変化に気付いたら、気のせいだと思わずに受診しましょう。
まとめ
命に関わる重篤な病気ではなくても、気付くのが遅れてしまうと、重症化する、別の病院を引き起こす、骨が変形して生活しづらくなるなどの弊害が生じ、愛犬に必要のない苦痛や不便さを味わわせることになりかねません。
常に一緒にいる飼い主さんには、日々進行する病気の変化は小さ過ぎて気付きづらいかもしれません。しかし、飼い主さんの「なんだかおかしい」という違和感はあたっていることが多いものです。
愛犬の様子に違和感を覚えた時は、「しばらく様子を」とか「気のせいだ」と思わずに、できるだけ早めに診てもらう方が安心です。そのためにも、信頼できて相談しやすいかかりつけの動物病院を作っておくことが望ましいです。