パンデミックパピーの飼い主と犬の福祉低下についての調査結果

コロナ禍の中で動物を飼い始める人が増え世界各地でペットブームが起こりました。このブームが犬の福祉の低下につながっているのではないかという懸念について、イギリスで行われた調査結果が発表されました。

更新日：2021年09月17日

パンデミックが犬の福祉を大幅に低下させているという懸念

ペットショップのウィンドウの中の子犬

コロナ禍の影響で、外出の機会が減ったり在宅勤務が増えたことで犬や猫を飼おうと思い立った人が大量に発生したため、2020年は世界のさまざまな国でペットブームが起こりました。日本も例外ではありません。

イギリスではパンデミック下で購入された子犬を指す『パンデミックパピーズ』という言葉が生まれました。同国の王立獣医科大学の臨床科学の研究者は、このような状況について「犬の福祉の大幅な低下につながっているのではないか」と懸念してきました。

そして、この度イギリスにおける子犬の購入に対するパンデミックの影響について大規模なリサーチを実施してその結果を発表しました。

子犬を抱くマスク姿の女性

この調査はイギリス全国の5,517人の犬の飼い主を対象にしたアンケート形式で行われました。調査の目的はイギリスの犬の飼い主が、犬を購入する前および購入するときの動機と行動を理解することです。

集められた回答の中から、2020年3月23日から同年12月31日までの間に購入された子犬に焦点を当ててデータを分析。次に2019年の同じ期間に購入された犬の飼い主からの回答と比較した結果、パンデミックパピーズの飼い主には、以下のような傾向が強いことが分かりました。

2019年に犬を購入した人が支払った金額の平均は955ポンドでしたが、2020年の平均額は1,550ポンドに上昇しています。2020年に犬を購入した人のうち40％が犬を飼うのが初めてで、2019年の33％よりも増えています。

2020年に子犬を購入した人の86％が「犬を飼おうと決めた動機はパンデミックで犬の世話をする時間ができたから」と回答しています。

段ボール箱に入れられた子犬

ペットブームに乗って子犬を購入した飼い主の傾向は、犬を飼い始めるということに対して知識のない人々が子犬に殺到したことを示しています。これは悪質なブリーダーやパピーミルの運営者にとって格好のビジネスチャンスとなりました。

子犬の値段の設定はどんどん高くなって行き、子犬が生まれ育った劣悪な環境を隠すことも知識のない購入者が相手ならば簡単です。イギリスの法律で禁止されているはずの8週齢未満の子犬が売買されていることからも違法な取引がされていることは明らかです。

劣悪な環境で繁殖された犬は、健康上の問題を持つ可能性が高くなります。また在宅勤務から通常勤務に戻ったり、外出の制限が無くなると犬は今まで経験したことのない留守番をすることになり、行動上の問題が起こる可能性も高くなります。健康上および行動上の問題は飼育放棄のリスク上昇につながります。

家庭内の問題では、知識がないままに衝動的に購入された犬がきちんと世話されているかどうかという懸念もあります。これも飼育法機のリスク上昇と犬の福祉低下の両方につながる問題です。

2020年に激増した犬の盗難についても、犬の需要急増が関係していると考えられています。様々な事象から、パンデミックに関連するペットブームが犬の福祉の低下を招いていることを示しています。

研究者はこの調査結果を受けて、今後さらに起きるであろう問題について解決策を提供するべく次の論文に取り掛かっているとのことです。今すでに昨年購入した犬の健康、行動、今後の世話について心配している飼い主に対しては、獣医師や動物行動学の資格を持つ専門家に相談することを強く進めています。

ラブラドールの子犬とリードを持つ飼い主

コロナ禍によるロックダウンをきっかけにしてイギリスで起きたペットブームが犬の福祉を低下させているという調査結果をご紹介しました。

イギリスでの話ではありますが、調査結果には日本でも当てはまる部分がたくさんあります。ペットを安易に衝動買いすることは購入した犬や猫への影響だけでなく、その背後にある悪質な業者へのサポートにつながることを調査結果は示しています。

犬と暮らしている人、将来犬を家族に迎えたいと思っている人、犬が好きな人、全ての人に考えていただきたい研究内容です。