犬が物を「噛む」ということ
犬がおもちゃをガジガジしたり、デンタルトリーツやアキレスなどのおやつをカミカミしたり、時には靴や家具などをかじってしまったり、犬が物を噛むという行動は食事のためだけでなく色々な面があります。
しかし、これまで家庭犬が与えられている噛むためのものや、噛むという行動そのもの、また物を噛むことで生まれるメリットとリスクなどについてのリサーチはされていないのだそうです。
先ごろオーストリアのウィーン獣医科大学の研究チームが犬の飼い主1439人へのアンケート形式で犬の噛むという行動についての調査を実施しました。
家庭犬たちは普段どんなものを噛んでいる?
アンケートでは「愛犬に何か噛んでも良いものを与えていますか?」という質問がありました。回答した飼い主のうち94%が、犬にローハイドや乾燥アキレス腱など食べられるカミカミおやつをを与えていました。
83%がナイラボーンやロープなどの食べられないカミカミおもちゃを、73%がコングなどの食べ物を詰めるタイプのおもちゃを、51%が木の枝や鹿の角など硬いものを噛むために与えていたといいます。
カミカミおやつを与える頻度は週に4〜6回が平均的で、噛むためのおもちゃでは犬に人気があるのはロープとぬいぐるみでした。また、コングなどにドライフードやトリーツを詰めたものも犬に人気が高く、おもちゃ以外で噛むための硬いものでは木の枝を好む犬が多いという回答でした。
犬がおやつやおもちゃを噛んでいる時間は平均10〜15分でした。噛む素材が硬い場合は咀嚼時間も20分以上と長くなりました。
また飼い主が与える「噛んでもOKなもの」とは別に家庭内のものを噛んでしまう犬もいます。家庭内のものを毎日噛む犬は全体の2.5%で観察され、犬が噛んでしまう物としてドッグベッド、衣服、靴が多くなっていました。
物を噛むことで生まれるメリットとリスク
犬はどんな時に物を噛むかという質問には、留守番など誰もいない時や散歩に行けなかった時が挙げられました。飼い主はおもちゃやおやつを噛むことで「退屈を防ぐ」「嫌な体験から気をそらす」と回答しており、「定期的に何か噛むものを与えることが重要」だと考えています。
これらは物を噛むことで生まれるメリットだと思われますが、噛むことがストレスや否定的な感情の軽減につながるかどうかという調査は今のところまだ行われていません。
犬が物を噛んでいる時には飲み込んでしまうリスクが常にあります。食べられるおやつであっても大きなカケラを飲み込んでしまう恐れがあります。そのため、飼い主の約3分の2は犬が何かを噛んでいる時には「頻繁に」または「常に」監督していると答えています。
しかし、16.2%の飼い主が、おもちゃや木の枝などの一部を飲み込んでしまうことが「時々」または「頻繁に」あると回答しています。そしてそのうちの約6割は犬がおもちゃなどを破壊して飲み込んでしまうところを見ていませんでした。
リスクに関しては、67%が犬に噛むものを与えることで何か問題が起きたことがないと答えました。問題があったという回答で多かったのは、咳き込む29%、嘔吐19%、下痢18%、便秘12%でした。
また、7.2%が歯や歯肉の怪我を1回経験しており、さらに3.5%が同様の怪我を複数回経験したと答えています。歯や歯肉の怪我とは、歯肉の腫れなど病変、歯の間に硬いものの破片が挟まった、歯が欠けたり折れたりしたなどです。動物病院での治療が必要だったのは3.6%でした。
またおやつやおもちゃを飲み込んでしまって手術が必要になった犬は約1%でした。これらは回答数から見ると小さい数字に見えますが、噛むものを与える際のリスクとして誰にでも起こり得ることです。
まとめ
犬が何かを噛むという行動について実施したアンケート調査の結果をご紹介しました。一般の飼い主へのアンケートなので私たちにも馴染みのある回答が多く見られます。
このリサーチは咀嚼=噛むという行動に関する調査の第一歩です。今後さらに研究を重ねることで、噛むことのストレス軽減効果などが明らかになって行くことが期待されます。
また、ここで言及されている硬いものを噛むことのリスクは一般の飼い主も良く知っておきたいことです。普通に市販されているヒヅメや鹿の角で歯を折ってしまう症例はよく見聞きされます。
愛犬に硬すぎるものを与えることは止めておいたほうが良いですね。大きなカケラを飲み込んで開腹手術ともなると命の関わるリスクですので、与えるおやつやおもちゃのサイズを吟味することも重要です。