保護施設の犬の夜間の行動は適応性の指標になるという研究結果

保護施設の犬の夜間の行動は適応性の指標になるという研究結果

保護施設に収容された犬のストレスや環境への適応を測るための指標となる行動について研究結果が発表されました。動物福祉の面からも要注目です。

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保護施設に収容された犬のストレスや適応度を知るために

保護施設の犬舎の中のピットブル

アニマルシェルターや動物愛護センターなどの動物保護施設は、迷い犬や行き場を失った犬の一時的な住居として重要な場所です。しかし施設の環境は犬がそれまで暮らしていたものとは大きく異なり、そのために犬の福祉が損なわれる可能性があります。

犬はそれぞれに新しい環境に適応しなくてはならないのですが、適応性には個体差があります。犬の管理者は個々の犬がどのくらいストレスを感じているのか、どのくらい環境に適応しているのかを客観的に評価するための一定の指標となるものが必要です。

オランダのユトレヒト大学獣医学部の研究者が、保護施設におけるストレスと適応度の指標となる犬の行動と生理学的数値についての研究結果を発表しました。

保護施設での行動面からの指標

犬舎の中を歩く犬

人間の場合、睡眠の質と量はストレスへの対処に適応できているかどうかを評価する指標の1つとされます。以前の研究では保護施設の犬は約50分ごとに寝返りを打って姿勢を変えることが観察されています。(家庭犬よりも姿勢を変える頻度が高い)

また一般的に保護施設の日中の時間は、スタッフやボランティアが多く出入りしていますが夜間は人が少なくなるため、保護犬は日中よりも夜間に多く休息します。これらのことから、夜間の犬の休息パターンを観察することは犬のストレスや適応性を評価するための指標となる可能性があります。

研究チームは観察対象となる29頭の犬を選びました。幼い犬や老犬、痛みのある疾患を持っている犬は除外されました。また比較対象として以前に同じ施設から譲渡され現在は家庭犬となっている29匹を同様に観察しました。

犬の夜間の行動は加速度計(物体の振動や運動の加速度を測定する装置)を使って12日間記録されたといいます。

保護施設の犬は29頭全てにおいて1日目と2日目の夜間の活動量が高くなっていました。活動量は時間とともに低くなりましたが、家庭犬と比較すると12日目でも保護犬の活動量がより高いことも分かりました。

加速度計で測定した夜間の活動は犬がどの程度環境に適応しているかを観察するための有効な指標である可能性を示しています。

生理学的な数値からの指標

犬の尿サンプルを見ている獣医師

行動面だけでなく、生理学的な数値からも犬のストレスや適応性の評価が調査されました。ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールについて、犬の尿中のコルチゾール/クレアチニン比が測定されました。これはストレスが強いほど数値が高くなります。

犬の尿中コルチゾール/クレアチニン比は1日目において12日目よりも有意に高く、時間と共に減少を示しました。また家庭犬との比較でも、有意に高い数値を示し、尿検査とは別に、保護施設の調査対象犬たちは収容されてから最初の2週間の間に平均して5%体重が減少していました。

尿中コルチゾールと体重もまた、保護施設でのストレスと適応性を評価するための指標として有効である可能性が示されました。

まとめ

ボランティアの男性に撫でられる犬

保護施設に収容されたばかりの犬の夜間の行動と尿中コルチゾールの数値を測定した結果、最初の2日間は有意に高く、時間の経過と共に減少したことから、これらが保護施設での犬のストレスと適応性を評価する指標となる可能性があるという研究結果をご紹介しました。

保護施設でのストレスを極力減らし犬が環境に適応し易くすることは、言うまでもなく犬の福祉のために重要です。またストレスや恐怖を感じている犬は攻撃的になる可能性も高いため、世話をするスタッフの安全のためにも犬の精神衛生は重要です。

落ち着いて世話のしやすい犬は家庭犬として引き取られる可能性が高く飼育放棄される可能性が低いことも、犬のストレスや適応性を正しく知ることの意味につながります。

動物福祉は該当する動物のためだけでなく社会全体の福祉でもあることを考えると、このような研究が社会の中でどれだけ重要かが分かります。

《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2021.105377

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