ロックダウン中の飼い犬の様子についてのアンケート調査
COVID-19のパンデミックが、健康だけでなく人間の行動や感情に大きな影響を及ぼしていることは多くの人が経験しています。人間の行動が変わると一緒に暮らしているペットにも影響が及ぶことは避けられません。
コロナ禍におけるペットの犬や猫の行動について、色々な研究や調査が行われています。この度ポーランドのアニマルバイオテクノロジー研究所の動物行動福祉学の研究チームによって発表された調査結果もその1つです。
調査の目的はパンデミックが家庭犬の行動に与える影響と、犬に関連する飼い主の経験を知ることでした。調査は犬を飼っている人を対象にしたアンケート形式で行われ、32カ国から回答が寄せられた国際的なものとなりました。
寄せられた回答者の概要
調査に寄せられた回答は全部で688件。回答した人々は、ヨーロッパからが87%でした。最も多かったのはスウェーデンからで688件の26%を占めていました。ポーランドとオランダが続き、この3カ国で回答の半分を占めています。
ヨーロッパ外では南北アメリカ(主にアメリカとブラジル)から9%、アジア(主に中国)とオーストラリアからが4%でした。
また回答は2020年5月から6月の間に集められたので、パンデミックのかなり初期の段階でのことです。
回答者のうちロックダウン経験者は44%、隔離の経験者は11%で、残り45%は「パンデミックと言ってもロックダウンも自宅隔離も経験していない」と答えています。これは回答が一番多かった国がスウェーデンだったことが関連していると思われます。
飼い主がロックダウンや隔離を経験したかどうかは犬の健康に影響していることが他の回答項目から伺えますので、これは注意して見たい点です。
回答者が飼っている犬の数は1頭という回答が55%を占め、2頭が約24%でした。
飼い主が観察した犬の健康面や行動の変化は?
回答者の92%はパンデミック中も犬の健康に変化はないと感じていました。変化があったという回答では食欲増進または減退、下痢または便秘、活動低下などがありました。変化があったという回答をしたのはほとんどがロックダウン下にいた飼い主で、隔離を経験した飼い主では犬の健康面の変化はさらに顕著でした。
犬の行動については74%の回答者が特に変化は感じないと答えました。ただしロックダウンや隔離を経験した回答者では、犬の行動が変化したという回答は制限を経験していない場合の1.8倍に昇り、大多数が犬の行動について何らかの変化を報告しました。
犬の行動の変化は「飼い主との距離が近くなった」「以前より落ち着いている」「よく遊ぶようになった」などポジティブは変化が不安や問題行動などのネガティブなものを上回っていました。犬にとっては飼い主が長時間家にいることでハッピーだったと言えるようです。
ロックダウン中に犬の世話が困難だと感じたかどうかは、居住環境に大きく左右されていました。庭がなく犬が自由に外に出られない住環境では困難を感じる飼い主が多くなっていました。
回答者の65%はパンデミック中に犬が一緒にいたことでストレスが緩和されたと答えています。また47%は犬と散歩に行くことは大きなメリットであると感じたことを報告しています。
寄せられた回答の多くは予想できる範囲でしたが、このように人間の福祉と動物福祉の両方を考慮するための調査はとても大切です。またパンデミックが長期間に及んでいるため、各段階での人と動物両方の状態を調査しておくことも必要です。
今後、人々の生活が通常に戻って行った時には飼い犬への対応はより慎重になる必要があるので、さらに観察が必要だと研究者は述べています。
まとめ
COVID-19のパンデミック初期段階の飼い犬と人間の健康や行動に変化について、世界32カ国から回答を集めたアンケート調査の結果をご紹介しました。
単一の国での調査はいくつか発表されていますが国際的な調査というのは珍しく興味深いと感じました。このような調査はコンパニオンアニマルの福祉を守ることは共に暮らす人間の福祉にもつながることを実感する意味でも大切だと感じました。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2021.105395