セラピードッグのプログラムで高い効果をもたらすのは何か?
セラピードッグと言うと病院や高齢者の施設などを訪問するイメージが強いですが、近年は大学の学生、災害の被災者などその対象も広がっています。
犬の訪問が人々のストレスを緩和して幸福度を改善することは多くの研究結果が示していますが、犬と人間の相互作用(関わり合い方)の中で、どんなことが高い効果をもたらすのかについての研究はほとんどありません。
この度カナダのブリティッシュコロンビア大学教育学部の研究チームが、セラピードッグによる支援の中での犬との関わり方に関する研究結果を発表しました。
実験参加者の幸福度を評価分析
研究には284人の大学生が参加しました。参加者は研究のためのセッションの前後で、自分自身の幸福度について自己申告で報告しています。
これらの報告から持続的幸福度(ある一時点の幸せではなく継続して幸福だと感じている度合い)、ポジティブおよびネガティブな影響、社会的なつながり、幸福感、キャンパスへの馴染み度、ストレス、ホームシック、孤独度が測定されました。
参加者はランダムに3つのグループに分けられました。
グループごとに「セッション中、犬にタッチする」「セッション中、犬にタッチしない」「犬抜きでハンドラーとセッション」
と、セッション中の犬との関わり方の条件が違っており、セッションの効果が比較されました。
幸福度をアップさせるのに一番効果的だった関わり方とは
セッションの前後の幸福度分析を比較してみたところ、3つの条件全てにおいて参加者の幸福度がいくつかの測定項目でアップしていました。中でも顕著だったのは、犬にタッチしても良いという条件のグループでは、幸福度測定のための全ての項目において向上していた点でした。
これは予想通りの結果と考える方も多いかと思いますが、セラピードッグのセッションの効果を最大にするために非常に重要なことが分かったと言えます。研究者は支援プログラムの中で犬と人間が接触することの重要性を強調しています。
一方で、犬に触れなかったり、人間だけのセッションでも、いくつかの項目の幸福度が向上するというのも興味深い点です。これはアレルギーや犬が苦手な人にも朗報です。
研究者はこの結果を踏まえて、多くの学校が学生のメンタルヘルスやストレス軽減のためにセラピードッグ訪問プログラムを利用するよう推奨しています。
まとめ
セラピードッグによる支援プログラムにおいて、参加者が犬に直接タッチできるセッションでは、犬にタッチできなかったり犬がいなかったりするセッションと比較して幸福度測定の全ての項目が向上したという研究結果をご紹介しました。
犬を撫でることが確実に人間の幸福度をアップさせるというのは、犬と暮らしている人にとっては当たり前と感じることですが、参加者の全員に共通していたというのは興味深いことですね。
同時に人間を幸せにしてくれるセラピードッグたちの福祉についても、きちんとした研究がなされて最適な方法が確立し浸透していって欲しいと思います。人間が幸福を感じるために、犬に負担を強いることはあってはならないからです。
《参考URL》
https://doi.org/10.1080/08927936.2021.1944558