なぜ寝るといびきをかくの?
鼻や口から吸った息が喉を通って肺に届き、そこで血液の中に酸素が取り込まれて全身の細胞に運ばれエネルギーを作り出し、その際に発生した二酸化炭素がまた肺に戻り呼気として鼻や口から吐き出される一連の生命活動が「呼吸」です。
呼吸は起きている間も寝ている間も、絶え間なく連続的に行われます。しかし、寝ている時の呼吸時にいびきをかくことがあるのに、起きている時の呼吸時にいびきをかくことはほとんどありません。なぜなのでしょうか。
鼻から喉までの間を上部気道と言います。いびきは、吸い込んだ空気が上部気道を通る際に、気道の粘膜が振動することで発生します。
粘膜が振動するのは、気道が狭くなった時です。寝ている時には気道の筋肉が弛緩するため、起きている時よりも狭くなります。そのため、いびきは寝ている時にかくのです。
こんないびきは見逃さないで病院へ
普段からいびきをかいている場合や、いびきの他に特に気にするような様子が見られない場合は、あまり心配する必要はありません。
しかし、下記にご紹介するようないびきや症状が見られた場合は、裏に病気が潜んでいる可能性があります。
1.突然いびきをかくようになった
鼻が短い短頭種と呼ばれる犬種は、その顔の構造から鼻や気道が狭いためにいびきをかきやすいのが特徴です。
そして、一定のリズムで繰り返しているようないびきの場合、あまり心配をする必要のないことがほとんどです。
しかし、今までいびきをかいていなかった愛犬が、突然いびきをかくようになった、今までのいびきとは明らかに様子が異なるといった場合は、動物病院で診てもらいましょう。突然変わった原因があるはずだからです。
2.いびきがどんどんひどくなる
突然いびきの様子が変化した訳ではないけれど、日に日にいびきがひどくなってきていると感じた場合も、動物病院で診てもらいましょう。気道の細さを悪化させている原因があるはずです。
3.起きている時もいびきのような音を発するようになった
起きている時にも、呼吸のたびにいびきのような音を発するようになった場合も、動物病院で診てもらってください。
起きている状態でも気道を狭めるような異変が生じているということかもしれません。
4.いびき以外にも気になる症状が見られる
いびきだけではなく、運動不耐性といってちょっと動いただけでも息切れがして動けなくなる、いびきをかいている時に舌が紫色になるなどの血液中の酸素不足(チアノーゼ)が見られるといった症状がある場合も、すぐに動物病院に行きましょう。
いびきの裏に潜んでいることのある病気
先にご紹介したような危険ないびきの場合は、病気を発症している可能性が高いです。
危険ないびきの原因となっている病気を治療することで、愛犬の生活の質を高めてあげましょう。
1.短頭種気道症候群
パグやフレンチブルドッグなどの短頭種は、先天的に、上顎の奥にある軟口蓋が長く、喉の入り口に垂れ下がった状態になる「軟口蓋過長症」という病気を持っている場合があります。また、鼻腔が狭い「鼻腔狭窄」という病気の場合もあります。
こういった先天的な病気が原因で起こる短頭種のいびきや呼吸困難を、「短頭種気道症候群」と言います。呼吸困難が続くとチアノーゼになり、重症化すると失神し、最悪の場合は命に危険を及ぼす場合もあります。
若い頃に発症して悪化していくことも多いので、短頭種のいびきは当たり前と考えずに、若い頃から愛犬の様子をよく観察し、悪化が疑われる場合はすぐに診てもらいましょう。
2.気管虚脱
気管が潰れて呼吸困難になる病気です。遺伝が関与している場合もありますが、肥満で気管の周囲の脂肪層が増えて圧迫されることでも発症します。
いびきの他に、ガーガーといった変な音の咳や、口を開けたまま苦しそうにゼーゼーと呼吸する症状が見られます。すぐに苦しくなって動きを止めてしまうこともあります。
重症化で、よだれを垂らして苦しそうに喘いだり、チアノーゼで倒れたりすることもあります。
3.睡眠時無呼吸症候群
人と比べるとあまり多くはありませんが、犬にも睡眠時無呼吸症候群があります。短頭種や肥満の犬に多いようです。
急に静かになり、しばらくしたらガガッと大きないびきをしてまたいつものいびきに戻るというような、不規則ないびきを繰り返す場合は、かかりつけの獣医師に相談すると良いでしょう。
4.感染症、アレルギー
その他に、感染症やアレルギーが原因で上気道に炎症が起きていびきをかくことがあります。
これらが原因となるいびきは、感染症予防や、こまめな掃除でアレルゲンを排除することで予防できます。
また、タバコの煙が原因となる場合もありますので、愛犬の生活圏内では禁煙を心がけましょう。
まとめ
いつもと変わらない一定のリズムで繰り返されるいびきはあまり心配する必要がありませんが、突然いびきの様子が変わったり、徐々に悪化していくのが明白だという場合は、迷わずに動物病院で診てもらってください。
危険ないびきの裏には病気が潜んでいること、その病気が悪化すると、命に危険を及ぼすこともあります。
愛犬の異変に気づくためには、普段から愛犬の様子をよく観察しておくことが大切です。
愛犬をよく観察し、しっかり健康管理をすることで、愛犬との楽しい生活を1日でも長く続けられるようにしてください。