健康な耳なら基本的に耳掃除はあまり必要ない
数年前から、人間に対して「本来、耳掃除はあまりしない方が良い」という説が唱えられるようになってきました。同じように、犬の耳掃除もあまりやりすぎるのは良くないという声が聞かれます。
しかし、ペット保険会社が公表している犬の保険金請求ランキングなどでは、犬の「外耳炎」は常に上位に位置しており、やはり愛犬家にとって「耳掃除」は気になるお手入れの一つだと思います。
耳の穴から鼓膜までの間を「外耳道」といい、汗腺や耳道腺という腺があります。腺からの分泌物と剥離した表皮などが混ざったものが耳垢になります。
この耳垢が過度に溜まると、聴力障害の原因になったり細菌や真菌が繁殖したりするため、耳垢を除去して外耳道内を清潔に保とうとする行為が耳掃除です。
実は人間にも犬にも、健康な耳には自浄作用という機能が備わっており、耳の奥の耳垢は放っておいても自然に外へ押し出されるようになっています。
しかも、耳の皮膚は薄くて繊細です。そのため、健康な耳に対してあえて耳掃除を行う必要はないといわれているのです。
そこで、犬の耳掃除にとってやってはいけないといわれている耳掃除のNG行為を整理することで、あるべき愛犬の耳掃除について考えてみたいと思います。
犬の耳掃除のNG行為
1.綿棒の使用
犬の耳は、耳の穴から一旦垂直方向に下がり、途中でL字型に曲がって水平に鼓膜に達する構造をしています。そのため、綿棒を耳の穴の中に入れて掃除をすると、耳垢を掻き出すどころか耳の奥の方に押し出してしまい、逆効果になる場合があります。
また耳の皮膚は薄くて繊細なため、綿棒のようなソフトな素材であっても傷つきやすいのです。そして、綿棒の使用が良くないといわれる最大の理由は、綿棒の先端が取れてしまう事故が起きているからです。
実際、国民生活センターには「綿棒の先が取れて耳の奥に入ってしまった」という声が寄せられており、綿棒による耳掃除の事故について注意喚起されています。
2.過剰に行う
犬の耳掃除関しては、週に1回とか、月に1、2回など、獣医師によっても推奨頻度が異なるようです。実は、犬の耳の状態は犬ごとに異なっているため、耳掃除のやり方や頻度は、犬の個体ごとに異なるのです。
それこそ、健康な耳で自浄作用がきちんと働いている場合は、耳介(頭から出ているいわゆる耳の部分)と耳の穴の周囲に付いている、見える範囲の耳垢を軽く湿らせたコットンなどでやさしく拭き取るだけで十分な場合が多いのです。
愛犬の耳掃除の頻度や方法についてはかかりつけの獣医師と相談し、最適な方法で行うようにしてあげましょう。
3.乾燥した状態での耳掃除
耳の皮膚は薄くて繊細なため、少しの刺激でも傷つきやすいのが特徴です。そのため、ゴシゴシと強くこすると赤くなる、皮がむける等のトラブルが起きます。
特に、乾燥した状態での耳掃除はトラブルを起こしやすいので注意が必要です。
必ず濡らしたガーゼやコットン、またはイヤークリーナー等を利用して、軽く湿らせた状態で行うようにしましょう。
4.耳の奥の掃除
前述の通り、犬の耳はL字型をしています。人間の外耳道は水平なため、耳かきを使って耳垢を掻き出すことが比較的容易にできますが、L字型の犬の耳の奥に溜まっている耳垢を外に掻き出すのは容易ではありません。
そのため綿棒に限らず、耳の奥から掻き出そうとした耳垢を、かえって奥の方に押し出してしまい、耳垢を溜めてしまう事が多くなるのです。
自宅での愛犬の耳掃除では、目に見える範囲に付いている耳垢をやさしく拭き取るのが基本だと考えましょう。
自浄作用により耳の奥にある耳垢は自然に耳の外の方へ押し出されてきますので、充分に耳掃除の役目を果たすのです。
まとめ
犬の場合、「耳道が狭い」「脂漏体質である」という理由から、外耳炎を発症しやすい犬種が存在します。前者はチワワ、ポメラニアンなど、後者はシー・ズー、フレンチ・ブルドッグなどです。アレルギー体質も外耳炎になりやすいといわれています。
そういった耳にトラブルを起こしやすい子の場合は、ビデオオトスコープ(耳内視鏡)を備えている動物病院で定期的に耳のチェックをしてもらい、耳の健康管理に備えられると安心です。
しかし健康な耳の場合は、かかりつけの獣医師の指示に従った必要最低限の耳のケアで充分です。
自己流の耳掃除ではなく、一度かかりつけの獣医師に愛犬の耳のケアについてご相談されることをおすすめします。