人にも感染する可能性あり…犬の危険な『人畜共通感染症』
犬がかかる多くの病気は、人に感染するリスクが低いと言われています。しかし、中には人にも感染し、重症化してしまう恐ろしい病気もあります。ここでは、犬と人に共通する恐ろしい『人畜共通感染症』を解説します。
1.イヌ・ネコ回虫症
イヌ・ネコ回虫症は、お腹の虫と呼ばれる犬や猫に寄生していることの多い寄生虫によって起こされる症状です。人間に感染する経路としては、犬や猫が排泄したうんちが手に付着したことに気づかず、そのまま食べ物などを食べたり、口周りを触ってしまうことが原因で感染してしまうケースが多いと考えられています。
人間に感染した場合、倦怠感や食欲不振、咳、てんかん発作といった症状から、視力低下や視力障害といった眼に関わる症状を引き起こす例も多数報告されています。
2.狂犬病
犬を飼っている人ならば、毎年愛犬に狂犬病の予防接種を受けさせていることでしょう。日本でもかつては犬や人の狂犬病発症報告がありましたが、現在の日本は発症報告がない狂犬病清浄国です。もちろん狂犬病予防接種は飼主に義務付けられています。
狂犬病は犬にとっても人にとっても恐ろしい病気です。犬が発症してしまうと神経障害を引き起こし、100%死に至ると言われています。また、狂犬病にかかっている犬に咬まれることで、人間にも狂犬病が感染してしまいます。
人間が発症した場合も、初期段階では熱や食欲不振といった症状が見られるますが、やがて神経症状が起こり最終的に昏睡状態に陥り、ほぼ100%の確率で亡くなります。
前述したように、現在は飼い犬からの感染報告は日本ではありませんが、狂犬病の発症が報告されている海外に行く場合は注意が必要です。不用意に路上を歩いている犬に接触しないようにすることが大切です。
3.重症熱性血小板減少症候群
比較的最近発見されたウイルスによる感染症です。2009年に中国で、2012年に韓国、そして日本でも2013年に初めて報告された病気です。報告例は多くありませんが、西日本を中心に感染例が報告されているため、油断は禁物です。
マダニに咬まれた犬の唾液をはじめとした体液から感染するケースが多く、人が感染すると発熱や下痢、嘔吐、さらに筋肉痛といった症状が引き起こされます。高齢者、病気治療中の方など免疫が低い方での死亡報告があります。致死率は10〜30%と決して低くありません。
予防法としては、愛犬や自分自身が草むらに入らないようにし、マダニに咬まれないようにしたり、予めノミ・マダニ駆除薬を犬に投与したりといった対策が有効です。
4.エキノコックス症
日本では野生の狐が生息している北海道で多く報告されている感染症です。エキノコックス症に感染しているキツネや犬の排泄物に寄生虫の卵が紛れている場合、それらを触ったり汚染された水などを摂取してしまうことで、人間にも感染してしまうリスクが高まります。
臓器に障害をもたらす症状が主に見られる病気ですが、初期症状が現れるのは、エキノコックス症に感染してから約10年ほどと非常に長い期間、ゆっくりとしたスピードで進行していきます。
約10年後に現れる初期症状には、肝臓の腫大や腹痛、黄疸、貧血、発熱といった症状が見られ、放置してしまうと約半年で死に至るケースも報告されています。
5.カプノサイトファーガ・カニモルサス
こちらは犬や猫の口内に存在しているカプノサイトファーガ・カニモルサスという細菌によって引き起こされる感染症です。
基本的に噛まれることで発症する感染症ですが、噛まれた人数に対して発症する確率は非常に低く、必ずしも噛まれたからと感染する病気ではありません。
しかし、免疫機能が低下している基礎疾患を持つ方や高齢者、幼児などが感染してしまうと、症状が重症化し、死に至る危険性もあります。感染率は低い病気ですが、かかってしまうと危険な病気なので、油断しないようにしましょう。
犬との接し方を見直して!予防につながる接するときの注意点は?
上記で紹介したように、犬から人へ感染してしまい、重症化してしまう病気はいくつかあります。こうした病気を愛犬からもらわないためにも、飼い主が犬との関わり方を見直す必要があります。
犬から人へ病気が感染してしまう飼い主の行為に、以下のような行動が当てはまります。
- 犬と直接キスをする
- 犬を触った手を洗わず食事する
- 甘噛みされて傷になった箇所を治療しない
- 引っ掻かれて傷になった箇所を治療しない
愛犬可愛さのあまり、以上のような行為をしていませんか。このような行為は、病気が感染するリスクを高めてしまう危険性があります。
特に免疫機能が低下している基礎疾患を持つ方や高齢者、そして免疫力が弱い幼児などは重症化しやすい傾向にあります。犬と関わる際は、周囲も注意しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。犬から人に感染してしまう病気の中には、重症化し、死に至る危険性がある病気も多くあります。飼い主も犬も幸せに暮らしていくためにも、日頃の接し方を今一度、見直してみてはいかがでしょう。