実は増えている犬の『うつ病』
近年、仕事や育児、人間関係など、様々なストレス要因でうつ病を発症する人が増えています。しかし、うつ病は人間だけの病気ではありません。ここ数年で、犬もうつ病になることが周知されるようになり、犬のうつ病が増えているのです。
犬がうつ病を発症する原因とは
うつ病は人間だけに起こる精神疾患ではありません。犬にも起こり得ます。犬のうつ病も様々なストレス要因によって起こるため、一概に「これが原因」と断言することができません。
しかし近年では、以下のような理由から犬がうつ病を発症しているケースが多いです。
- 飼い主とのコミュニケーション不足
- 極端に飼い主に依存している
- 運動不足
- 欲求を我慢させすぎている
- 生活環境に大きな変化が起きた
- きつく叱ったり暴力を振るったりする
飼い主との関係性や犬としての欲求を満たせないこと、さらに大きな不安からうつ病を発症する犬は多いです。
また、犬は話すことができないので、うつ病を発症していても飼い主が気付きにくく、犬に心の負担をかけさせているケースも多くあります。そのため、犬のうつ病ではどのような症状が見られるのか、知識として覚えておく必要があります。
愛犬に当てはまっていない?犬の『うつ病』症状3選
では、犬がうつ病を発症した場合、どのような症状や行動の変化が見られるのでしょうか。ここでは大きく分けて3つの症状を紹介するので、愛犬に当てはまっていないか確認しましょう。
1.食欲や元気がなくなる
うつ病になると、無気力状態に陥るため、今まで散歩が好きだった犬も散歩に行きたがらなくなったり、遊ばなくなったり、さらには1日中同じ場所で寝て過ごすという行動の変化が見られるケースが多いです。
元気ややる気が無くなるだけでなく、食欲も落ちてしまうケースが多いため、なかなかごはんを食べてくれなくなり、徐々に衰弱してしまうケースもあり危険です。
以前に比べて食欲や元気が無くなったと感じた際は、まず動物病院へ連れて行き、身体的な病気を患っていないか診察や検査をしてもらいましょう。その上で、特に異常がない場合は、うつ病を疑ってください。
2.同じ行動を繰り返す
精神疾患を患っている犬に多く見られる行動の1つとして『常同行動』があります。これは同じ行動を長時間繰り返すことを指します。
例えば、前足を長い時間舐め続けていたり、自分のしっぽを長時間追いかけ回していたり、フローリングを何度も掘るような仕草を見せたりといった行動が当てはまります。
こうした行動は、寂しさや不安などのストレスを何かに夢中になることで落ち着かせようという意図があります。そのため、不安や寂しい思いをさせていないか、先ほど紹介した主なストレス原因を参考に思い返してみてください。
3.問題行動が増える
今までできていたことができなくなったり、お利口だった犬が突然攻撃的になったりと、様々な問題行動が頻発するようになる変化もうつ病のサインです。
ストレスを溜めすぎると、今までできていた当たり前のことも正常に実行できなくなるため、高齢でもないのにトイレを失敗したり、何度も遠吠えをして見せたり、物を破壊したりといった問題行動が見られるようになります。
これらは、前述したように今までできていた当たり前の行動が正常に実行できなくなるだけでなく、今まで抑圧されてきた本能的欲求を解放することで、ストレスを解消しようとしているのです。
このような行動が見られる場合、強いストレスを感じているケースが多いため、早急に原因を取り除き、ストレスを和らげてあげることが求められます。
もしも愛犬がうつ病になったら…飼い主が取るべき行動
以上のようなサインに心当たりのある方は、うつ病を疑う前に、まずは身体的に異常が生じていないか動物病院で診察・検査をしてもらいましょう。その上で、何も異常が見つからなかった場合は、うつ病である可能性が高いです。
愛犬のうつ病の疑いが高まった場合は、まず原因を考える必要があります。
コミュニケーション不足で起きているのか、一緒にいる時間が長かったために依存度が増して分離不安を引き起こしているのか…。最近家庭環境に大きな変化があった場合は、犬にとって非常に大きなストレス要因となります。
このように原因を探り当て、それぞれにあった対応を取る必要があります。
コミュニケーション不足が原因である場合は、一緒にいる時間を増やし、ボディーランゲージなどから愛犬の心理を大まかに察することができるようになると、少しずつ不安やストレスを解消していけるでしょう。
分離不安に陥っている場合は、少しずつ1人でいる時間を増やし、家にいる間も常に一緒に行動するのではなく、時間を決めて遊ぶなど、メリハリをつけた生活をさせることが重要です。
このようにそれぞれの原因にあった接し方や環境を整えてあげることで、少しずつうつ病を改善し、愛犬に負担をかけさせずに済むようになります。
しかし、飼い主1人ではなかなか原因が突き止められなかったり、改善できないケースも多いです。その場合は、全国に数少ないですが『動物行動診療』に対応している動物病院に相談しましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。犬のうつ病は、犬自身が言葉を話せない分、患ってしまうと完治が難しい精神疾患です。
まずは今回紹介した考えられる原因から適切な接し方や対応を実施し、飼い主1人で難しい場合は、動物行動診療に詳しい動物病院などに相談しましょう。
人の場合は医師が患者と直接話し、うつ病であると判断します。しかし、犬の場合は症状から判断することがほとんどで、犬の心の状態を直接判断することは難しいです。そのため、症状から「常同障害」や「分離不安」、「異常行動」というように診断されることが多いでしょう。今回の内容ではそのような行動や障害を「うつ病」と表現しています。