1.マズル
犬のしつけの中に「マズルコントロール」と呼ばれるものがあります。
これは、犬同士が上下関係を示したり、決定したりする際に、どちらか一方のマズルに手をかけたり軽くくわえたりすることをヒントに作り出されたものです。
犬同士の行動を真似て、人が犬のマズルを押さえてそれを大人しく受け入れさせることで、犬と人の間に上下関係を築こうというしつけ方法になります。
しかし、近年では強制的なマズルコントロールには意味がないという考えが広がってきています。
無理やり掴まれたり押さえつけられることで、犬は強い抵抗感を感じて相手に対して不信感を抱くようになることがあります。
また、皮膚が薄いマズルを強く掴むと、骨や歯が当たることから痛みを感じる犬も多くいます。
確かにマズルを触れるようにしておくことは、歯みがきをスムーズに行うためや円滑なコミュニケーションのために必要です。
しかし、決して無理強いするのではなく、少しずつ触ることに慣らすことが大切です。
マズルを触られることに抵抗感を抱かせないよう、強引に掴んだり、掴みながら叱ったりすることは避けるようにしましょう。
2.耳や鼻先
耳や鼻は犬にとってとても大切な感覚器です。犬が情報収集するために優れた聴覚を利用しているため、耳を触られることでそれを邪魔されることをとても嫌がります。
また、耳の奥には鼓膜や中耳、内耳といった脳神経などとつながる重要な器官があります。そうした場所に近い耳を触られることを本能的に嫌がることもあるでしょう。
そのため、慣れないうちは耳掃除をされることを嫌がる犬もいるので、安心して触らせてくれるように少しずつ慣らしてあげてください。
また、嗅覚も犬が情報収集するためにとても重要な感覚です。犬は視覚よりも嗅覚で得た情報を重要視していると考えられていますし、年をとって体が老化した時も嗅覚が最後まで残ると言われています。
犬の鼻はわずかに濡れていることが多いと思いますが、濡れていることでにおいの成分が鼻に付着しやすく、嗅ぎ分けに役立つとされています。
このように鼻は犬が生活する上でとても大切な器官なので、触られることを嫌がる犬も多くいるのです。
3.足先
散歩に出た後に足を拭いたり洗ったりすると、嫌がって足を引っ込める犬は少なくありません。また、爪切りをする時にも強い抵抗感を示す犬も多いでしょう。
犬は足先を触られることを嫌がりやすい傾向にあります。これには2つの理由が考えられています。
まず、足先にある肉球には神経や血管が集中しているため、とても敏感な場所であるということ。肉球を使って触れることでそのものが何か、どういうものかということを判断しているのです。
そのため、足先を握ったり、ごしごしと拭かれたりすると強い刺激を感じて嫌な気持ちになることがあると考えられます。
また、犬は足先を使って様々なことをしているため、生きていくために必要なものだと本能的に感じています。
足を拘束されたり、傷つけられたりすると歩くことができなくなり、命を脅かす可能性もあることから、動物の本能として足を触られることを嫌がることがあるのです。
4.尻尾
犬の尻尾はコミュニケーションを取るために必要な部分であり、体のバランスを取ったり急所を守ったりといった役割も果たしています。
そして、足先と同様に神経が集中していることから、刺激に対して敏感な傾向もあります。胴体部分から飛び出ている形になるので、尻尾に何かが触れることで、体に危害が及ぶ前に察知することができるとも考えられています。
そのようなことから、尻尾を触られることを嫌がる犬は多く、特に信頼していない相手に触られることに強い拒否感を示す犬もいます。
信頼関係が結ばれていない犬の尻尾を触ったり、突然後ろから近づいて尻尾を触ったりすると、威嚇や攻撃をされる可能性もあるの十分に注意しましょう。
まとめ
触られることに喜びを感じる犬は多くいて、自分からすり寄ってきてスキンシップを取ろうとすることもあります。
しかし、犬には触られるのが嫌な場所があり、触られることで不快感や相手への不信感を抱くようになることもあります。
また、関係性によって触られたくないと感じる場合もあるので、犬の反応を見ながらスキンシップを取ることが大切です。