保護犬のリホームを科学的な面からサポートするプロジェクト【イギリス】

保護犬のリホームを科学的な面からサポートするプロジェクト【イギリス】

保護犬を家族に迎えようとした時には保護団体からの査定が付き物です。犬と希望者のマッチングを評価する際の科学的な指標を作ろうという研究プロジェクトが発表されました。

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保護犬の引き取り希望者への査定に関する調査

保護施設の犬舎を訪れている女性

動物保護団体から保護犬を引き取ったことのある方や、引き取り希望を出したことがある方なら経験があると思いますが、保護犬を家族に迎えるためには大なり小なり保護団体からの「査定」を受けなくてはなりません。

中には「不適格」として、あまり納得のいかない理由で譲渡を断られたという苦い経験のある方もいらっしゃるでしょう。

程度の差はあれど、このような状況はイギリスでも起こっているようです。イギリスのリンカーン大学の生命科学の研究チームが、イギリス国内の動物保護団体が引き取り希望者を査定する際の方針と手順について科学的な根拠に基づいているかどうかについて調査を行い、その結果を発表しました。

この調査はThe Dog Rehoming Project(犬のリホームのためのプロジェクト)という、保護犬に新しい家族を見つけるための教育や活動を、科学的な面からサポートしようという団体の立ち上げにつながりました。

リホームというのは、何らかの理由で家や家族を失った犬を新しい家族の元に送り出すことを指します。

査定基準を厳しくする代わりの提案

犬舎の中で犬を撫でる女性

研究チームはイギリス国内で、保護犬のリホームを実施している269団体に書面による問い合わせを行いました。問い合わせの内容は、犬のリホームに当たって引き取り希望者を査定する際の方針と手順に関するものでした。

そのうち回答があったのは82団体でした。犬の譲渡希望者が適格かどうかを判断するための手段としては申込書に記入するアンケート形式の質問、希望者との面接、譲渡前の家庭訪問が主なものでした。

上記のような手段で収集した情報のうち、団体が「要注意」または「不適格」と見なす希望者の特性が37種類特定されました。

例を挙げると「家庭に乳幼児がいる(年齢設定は団体により違う)」「アパートに住んでいる」「経済的に困窮している」「外飼いを希望している」などです。これらは犬を手放す可能性や、人間の安全が脅かされる可能性が高い希望者の特性だと、回答した団体は述べています。

研究チームは37の特性について、科学的かつ論理的な裏付けがあるのかどうか科学文献をリサーチしました。その結果8つの特性についてのみ裏付けが取れました。

これは保護団体が根拠のない理由で希望者の特性をスクリーニングしているという面もありますが、保護犬を引き取りたい希望者についての研究がまだまだ少ないからという面の方が大きいようです。

各保護団体は、犬の引き取り希望者の査定に関して人的および金銭的なリソースをかなり注ぎ込んでいます。しかし科学的または論理的な根拠が限られている現状では、厳格すぎる査定基準を緩和して、査定に使っているリソースを譲渡後のサポートや教育に回すことを研究者は勧めています。

保護犬と引き取り希望者をつなぐ科学的なプロジェクト

保護施設の犬舎の中の犬

このように犬のリホームを実施している団体が、希望者を査定するための科学的な根拠がまだまだ少ないこと、そのために査定のクオリティや信頼性が損なわれる可能性があることから、この調査を行った研究者を中心として犬の行動科学やリホームのスペシャリスト達があるプロジェクトを立ち上げました。

The Dog Rehoming Project(犬のリホームのためのプロジェクト)という名の非営利団体を設立し、犬のリホームをサポートするための調査研究を進めていくというものです。

施設で保護されている犬の福祉を向上させるための科学研究、リホームの成功と失敗を分ける要素の論理的なデータ、各保護団体が飼い主をサポートするための資金提供、研究結果を一般の人々にわかりやすくアクセスしやすい方法で広めることなどが、リホーミングプロジェクトの目的です。

保護犬のために新しい家族を見つけるには、犬だけでなく人間の研究も必要だという考えてみれば当然のことが、こうして目に見える形になって行くのは頼もしく感じます。

まとめ

犬舎の中の犬を見ているファミリー

動物保護団体が保護犬の引き取りを希望する飼い主候補を査定する際の基準について調査をした結果、各団体が定めている要注意または不適格特性の大部分が科学的根拠が曖昧だったということ。その結果を受けて犬のリホームに関する調査研究を進めて行くプロジェクト団体が立ち上げられたことをご紹介しました。

日本でも保護犬のリホームをしている団体は数多くありますが、研究や資金提供の対象になる例はほとんど見られません。その点でこのイギリスの例はとてもうらやましく感じますが、一方では研究結果を参考にできるチャンスもあるかもしれません。研究の成果が届くのを楽しみに待ちたいと思います。

《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fvets.2020.617525
https://www.thedogrehomingproject.org

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