犬が抱っこを嫌がるのには理由がある
人に触られることに慣れていない犬が、抱かれるのを嫌がるのは理解できます。しかし、撫でられるのが好きなのに抱かれるのを嫌がる犬がいるのはなぜなのでしょうか。
考えられる理由は、大きく2つです。
1つは、抱っこと嫌な経験が結びついている場合です。
例えば、以前抱かれた時に粗雑に下ろされてケガをした、抱っこされるのは動物病院でだけ、というような場合です。
もう1つの理由は、抱き方が良くない場合です。
飼い主さんは上手に抱いているつもりでも、愛犬にとって不安になるような抱き方の場合、犬は怖がります。抱かれると自由が利きませんので、なおさら恐怖感が募ってしまいます。
つまり、犬が抱っこを嫌がらないようにするためのポイントは、「抱っこと嫌な思いを結び付けない」ことと「正しい抱っこの仕方をする」の2点です。
犬にNGな抱っこの仕方
犬のNGな抱き方1.仰向け抱っこ
人間の赤ん坊は、仰向けにして抱きます。しかし、犬を抱くときには仰向けにしてはいけません。仰向けにされるということは、相手に服従させられるということなので、無理やり仰向けにされると犬は恐怖を感じてしまいます。
犬のNGな抱き方2.直立抱っこ
首の座るようになった人間の赤ん坊を抱くときには、頭を上に足を下にした直立の姿勢で抱くことが多いですが、犬を直立姿勢で抱いてはいけません。
何故ならば、足腰に負担がかかるからです。胴長短足のダックスフントやコーギーなどは、元々ヘルニアになりやすいので特に注意が必要です。
犬のNGな抱き方3.足宙ぶらりん抱っこ
人間の赤ん坊は、足が宙ぶらりんになったままのことが多いです。しかし犬の足を宙ぶらりんの状態にして抱くと、不安を増長させ、足をばたつかせる、身体をよじる等の抵抗をして落下することもあり、危険です。
犬が嫌がらない抱っこの仕方
〈怖がらせない抱き方のポイント〉
犬と一言で言っても小型犬から大型犬までサイズのバリエーションが多いため、正しい抱き方はサイズによって異なります。
愛犬を怖がらせずに抱く際の共通する注意点を挙げるとすると下記になります。
- 犬が怖がるので、正面から覆いかぶさるような姿勢で抱き上げないこと
- 肩関節に負荷がかかるため、前脚の付け根に両手を入れ、ぶら下げるように持ち上げないこと
- 抱いている時は必ず愛犬と飼い主さんの体を密着させること
小型犬の正しい抱っこの仕方
- 飼い主さんの前に愛犬を横向きに立たせます。
- 片方の手を、前脚のすぐ後ろの辺りからお腹の下に入れ、向こう側の背中までしっかりと手を回します。
(この抱き方で不安定な場合は前足の間に頭側から腕を差し入れるように抱くとよいでしょう。頭が重いので抱き上げるときに前のめりになり落ちてしまうことがあります)
- 反対側の手を股の下からお腹の下に差し込みます。
- 両手でしっかりと犬の体を支えながらゆっくりと立ち上がり、体勢を整えます。
- 愛犬の体が必ず地面と平行になるようにし、愛犬の体と飼い主さんの体を密着させます。前脚は飼い主さんの腕に、後ろ脚は飼い主さんの胸やお腹で支えるようにすると足も安定します。
中型犬の正しい抱っこの仕方
- 飼い主さんの前に愛犬を横向きに立たせます。
- 飼い主さんは片膝をついた姿勢でかがみ、前脚のすぐ後ろ辺りからお腹の下に片手を差し込みます。
(抱き方の注意点は小型犬と同様です) - 差し込んだ手で犬の胸元を抱え、反対側の手でお尻と太ももを支えるように抱きかかえます。
- 片膝をついたまま飼い主さんの姿勢を引き起こして背筋を伸ばします。
- そのまま立ち上がって犬の体を自分の方へ引き寄せて密着させ、両腕でしっかりと支えます。
- 犬のサイズが大きいため、小型犬のように四肢を腕やお腹でしっかりと支えることは難しいですが、なるべく体を密着させて、体を地面と水平に保ってください。
大型犬の正しい抱っこの仕方
- テーブルやソファなどの少し高いところに乗せ、愛犬を横向きに立たせます。
- 片腕を胸の前側から回し、反対側の腕を後ろ脚の膝の裏あたりに回して、体全体を支えるように持ち上げます。後ろ脚を支える腕にお尻を乗せるようにすると良いです。後ろ脚は、利き手で支えた方が良いでしょう。
- 大型犬は重いので、飼い主さんの胸の高さで犬の体を密着させると、少し腕への負荷が軽減します。
ただし、無理に大型犬を抱こうとして失敗すると、愛犬も飼い主さんもケガをしてしまう可能性があります。体の小さいご家族の方が無理に抱っこするのは避けましょう。
まとめ
まだワクチンプログラムが終了していない子犬のお散歩、家の中や外で愛犬の身に危険が迫った場合、診察やトリミングで台に乗せる時、自宅で介護をする場合、災害が起きて避難する時等、愛犬を抱っこしなければならない時は、必ずあります。
どんな時でも愛犬が嫌がらずに上手に抱っこができるよう、普段から信頼関係を築き、抱っこと良い出来事を関連付けさせ、慣らしておきましょう。
また一緒に暮らすパートナーを選ぶ場合は、成犬になっても飼い主さんが抱っこできるかどうかも、重要な検討項目の1つです。最期まで一緒に暮らせるよう、よく考慮して選んでください。