ブラッシングとグレイハウンドの歯の状態の比較研究
近年は多くの飼い主さんが犬にも歯磨きが必要であると認識し、愛犬のデンタルケアに努めたり、歯磨きを嫌がる愛犬に頭を痛めたりしています。
しかし歯周病は世界中の犬に共通の健康上の問題で、成犬の7〜8割は程度の差はあれど歯周病を患っているとも言われています。
定期的な歯のブラッシングは歯石と歯肉炎の両方を予防または軽減できることが知られていますが、どのくらいの頻度で磨けば良いのか、具体的な研究などはあまり多くありませんでした。
この度、イギリスのブリストル大学とイギリス最大の犬保護団体ドッグズトラストの研究者によって、ドッグレースのために飼育されているグレイハウンドを対象にした歯のブラッシングと口腔衛生についてのリサーチ結果が発表されました。
グレイハウンドは他の犬種に比べて歯周病の有病率が高いと言われていることに加えて、レーシングドッグは犬舎で多頭飼育されている環境で手入れが行き届かないという条件があるため、犬たちは様々なレベルのデンタル周りの問題を抱えています。
さらに単一の犬種、飼育条件がほぼ同じという点で研究対象として最適でした。
ブラッシングの頻度別に歯の状態を観察
研究対象となったのは6つの犬舎で飼育されている160頭のグレイハウンドでした。リサーチ開始前に全ての犬の歯石と歯肉の状態に一定の基準でスコアをつけ記録。犬たちは各グループの平均スコアがほぼ同じになるように3つのグループに分けられました。
3つのグループには、次のような違う歯磨き条件が付きます。
- 2ヶ月の間、毎日歯をブラッシングする
- 2ヶ月の間、週に1度歯をブラッシングする
- 2ヶ月の間全くブラッシングしない
ブラッシングはトレーナーによって行われ、2ヶ月後に各犬の歯石の蓄積と歯肉炎の状態が検証されました。
歯肉炎を予防するために必要なブラッシングの頻度は?
これは簡単に予想できたことですが、ブラッシング無しのグループに比べてブラッシング有りの2つのグループでは、歯石の蓄積は大幅に改善していました。週に1度だけのブラッシングでも歯石の蓄積が予防できることは意外な感じがします。
ただし元々付いていた歯石については、ブラッシングでは取り除けなかったそうです。毎日ブラッシングのグループでは改善の効果はより顕著でした。歯肉炎に関しては、はっきりとした改善があったのは毎日のブラッシンググループのみでした。
これは以前に他の研究者が歯肉の健康を維持し、歯垢と歯石の蓄積を減らすためには毎日、または少なくとも1日おきのブラッシングが必要であるという報告を裏付ける結果となりました。
ご存知の通り、蓄積した歯石を除去するには全身麻酔での処置が必要になりますし、歯周病は口の中だけでなく心臓や腎臓など内臓の健康にも悪影響を及ぼします。歯のブラッシングでそのリスクが大幅に減少することから、研究者は毎日の歯磨きを強く勧めています。
また犬の歯を磨く際には、報酬ベースのハズバンダリートレーニングなどブラッシングに対して犬自身がポジティブな印象を持つ方法が推奨されています。
まとめ
ドッグレースのために飼育されているグレイハウンドを対象にしたリサーチで、歯石の蓄積を予防するには週に1度の歯磨きでも有効であるが、歯周病を予防改善するためには毎日のブラッシングが必要であるという調査結果をご紹介しました。
レーシングドッグは動物福祉の面で大きな問題があるのですが、歯の健康の改善という面が着手されたのは良いことです。
またこの研究結果は、ついつい億劫になりがちな愛犬の歯磨きに前向きに取り組む飼い主さんを増やすという点でも大きな意味があります。研究者はブラッシングに酵素入り歯磨きペーストをプラスすることでさらに高い効果が期待できると述べています。
犬の歯磨きは口臭予防というだけでなく、健康に長生きすることと強くつながっていますので、効果的で快適な歯磨きの仕方を学んでがんばっていきましょう。
《参考URL》
https://www.mdpi.com/2076-2615/11/7/1869/htm
https://www.harlingenveterinaryclinic.com/services/dogs/breeds/greyhound