なぜ大型犬は短命なの?
犬の平均寿命の話になると必ずと言って良いほど出てくるのが、「小型犬は長生きで大型犬は寿命が短くなる傾向がある」という話です。
しかし、哺乳動物の場合は体が大きい動物ほど寿命が長くなる傾向があるといわれています。
ただし、特定の種の中で比較した場合は、寿命と体の大きさに逆の相関関係が見られるようです。特によく当てはまるのが、犬とネズミだといわれています。
そこで世界中の多くの科学者達が、犬の老化についての研究をしていますが、それはまだ現在進行形であり、老化要因が解明されてはいません。
犬の老化の要因が究明され、平均寿命を延ばせるかもしれないという期待を込めつつ、今現在立てられている仮説についてご紹介していきます。
体のサイズによる犬種の定義
日本で犬種ごとの容姿やサイズなどの犬種標準(スタンダード)の認定を行っている老舗のケネルクラブがジャパンケネルクラブ(JKC)です。
しかし、容姿やサイズによる犬種ごとの正式な基準はありますが、小型犬、大型犬などの大きさによる分類は定義されていません。
しかし、一般的には下記のように認識されていると考えて良いでしょう。
- 小型犬
- 成犬の体重が10kg未満
- 中型犬
- 成犬の体重が10kg以上25kg未満
- 大型犬
- 成犬の体重が25kg以上
大型犬が短命な理由1.大型犬は小型犬よりも成長スピードが早い
最もよく耳にするのが、「大型犬は小型犬よりも成長スピードが速いから」という説ではないでしょうか。
ゲッティンゲン大学の進化生物学者クラウス氏が率いる研究チームでは、「大型犬は小型犬より早いベースで年をとるから若くして死に至る」と説明しています。
大型犬は小型犬よりも成犬になるまでの期間が長いと言われていますが、体の大きさの比率と比べると、大型犬の方がより速いペースで成長しなければなりません。
コルゲイト大学の研究でも、大型犬の子犬は小型犬に比べて早く代謝し、早く成長し、多くのエネルギーを必要とすると説明しています。
若い頃の成長で受けた細胞の損傷であっても、長期にわたる影響を及ぼす可能性があると指摘されています。
またノルウェー科学技術大学の研究チームでは、スズメを対象に研究した結果、骨格的に大きなスズメは「テロメア」が短いことを発見しました。
テロメアとは、細胞の染色体の端にある化学物質で、細胞分裂の度に少しずつ短くなっていくものです。テロメアが短い細胞は、細胞分裂の終わりに近付いているという訳です。
別の大学のテロメア研究者も、この発表を受けて「より大きな体に成長するためには細胞がより多く分裂しなければならない。より大きな個体のテロメアが短くなるということは、早い成長がDNA損傷と関連している可能性がある」とコメントを寄せています。
大型犬が短命な理由2.大型犬は体の大きさに対して臓器が小さい
大型犬は、小型犬に比べて心臓などの臓器の割合が体のサイズに比べて小さいことが分かっています。このことは、通常の日常生活であっても臓器に対する負担が大きくなることを意味しています。
そのために、大型犬の細胞の老化が早まっている可能性があるという考え方です。
大型犬が短命な理由3.体のサイズを小さくする遺伝子の影響
アメリカ国立衛生研究所の研究グループは、143血統の3000頭以上の犬を解析して、体の大きさを決める、遺伝子の変異を見つけ出しました。
その遺伝子は「IGF-1」という遺伝子で、体のほとんどの部分の成長に関わり、かつ体の大きさだけではなく、寿命にも関係していることが分かっている遺伝子です。
この遺伝子の中のわずかな部分が違っているだけで、体のサイズが小さくなっているということが分かりました。
つまり、彼らが調べた小型犬は、全てこの遺伝子の変異を持っていたのです。
この遺伝子またはこの遺伝子の変異が、小型犬と大型犬の寿命に違いを及ぼしているのではないかという考え方です。
まとめ
犬は、同じ種であるにもかかわらず、犬種によって体のサイズに大きな差があるのが特徴的な動物です。
また、品種改良の過程で、人為的に近親交配が繰り返されてきたことも、何か影響を与えているかもしれません。
とにかく、一般的な哺乳動物の傾向とは異なり、犬は大型犬では寿命が短く、小型犬では長くなる傾向が見られます。そしてその理由は、まだきちんと解明されていません。
科学者達の研究により、犬の老化の要因が解明されれば、犬の平均寿命をさらに延ばす手段もみつけられるかもしれません。
それを期待しながら、今は愛犬が長く健康で快適に暮らせるように、体への負担を軽減するような工夫を凝らしながら暮らしていきましょう。