児童の音読に犬が立ち会うことの効果を生理学的に検証した結果とは?

児童の音読に犬が立ち会うことの効果を生理学的に検証した結果とは?

本の音読が苦手な子どものためのセラピードッグは広く知られていますが、実際に犬の存在が生理学的に及ぼす影響はどのくらいなのでしょうか。ウィーンからの研究結果をご紹介します。

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子どもが犬に向かって音読する効果の検証

本を広げた女の子とゴールデンレトリーバー

本を音読するのが苦手な子どもにとって、授業中に同級生や教師の前で本を読むことはプレッシャーと緊張が付いて回ることは想像に難くありません。

そのような子ども向けに、訓練を受けた音読セラピードッグが音読に立ち会って、本を読むことに対する苦手意識を克服していくというプログラムはすでに世界各地で行われています。

犬が子どもの音読に立ち会うことの効果は「犬がいることでリラックスして不安感が減少するからではないか」という心理学的な仮説が立てられていますが、子どもの身体的な反応についての研究は今までありませんでした。

オーストリアのウィーン大学の行動生物学の研究チームは、36人の児童を対象にして、音読セッションに犬が立ち会った時とそうでない時の生理学的な違いなどを検証しました。

犬有りと犬無しで音読セッション

本を読む男の子とビーグル

この研究に参加したのはウィーン市内の3つの学校からの36人の小学3年生でした。参加者の全員が音読のスキルが平均的なスコアを下回っていた子たちです。

参加者はそれぞれ2回の音読セッションを行います。どちらか1回は子どもと教師のみ、もう1回は教師の他に犬1頭とハンドラーが立ち会います。

犬は学校訪問のセラピードッグとして認定されていて、子どもとの交流経験のある4頭の犬が参加し、1回目と2回目のどちらに犬が立ち会うかはランダムに決定されました。

音読をする際の興奮の度合いを評価するために子どもの心拍数と心拍変動が測定され、ストレスレベルの評価のためセッション中に複数回唾液のコルチゾール値が測定されました。

セッション中の子どもたちの様子は録画され、咳払い、足をブラブラさせる、物をいじるなど緊張を示す行動の合計時間や会話の量などが記録分析されました。

犬がいることで子どもにどんな影響があったのか?

開いた本で顔を隠している女の子

音読の後に行われた文章の内容に関する理解度テストでは、犬がいてもいなくても結果に差はありませんでした。また子どもたちの音読スキルにも大きな変化もなかったといいます。

ただし、リピートリーディングと呼ばれる子どもたちにとって初めての方法のテストでは違いが見られました。これは与えられた文章をできるだけ早く、できるだけミスを少なく読むように指示を受けて音読し、ミスした部分の単語を練習して再度同じ文章を読むというものです。

このテストでは1回目のセッションで犬有りだった場合にのみ、音読スキルが向上。同じ犬ありでも、それが2回目のセッションだった場合には目立った向上はありませんでした。

これは新しいテスト方法という初めての経験の際に、犬がいたことが何らかの利点になったと考えられます。

犬有りが2回目だった場合には、すでにリピートリーディングが初めての経験ではなくなっていたため、その利点は働かなかった可能性があります。

生理学的なデータでは、心拍数、心拍変動、コルチゾール値の全てにおいて、犬がいる時の方が高い数値を示しました。これは犬がいることで子どもが興奮し、欲求システムの活性化や覚醒が起こったためと考えられます。

また、子どもの行動観察では犬がいる時には緊張や不安を示す行動は減少していました。

今までセラピードッグとの音読セッションは子どもの心を落ち着かせる効果があると仮定されていましたが、犬に対する興奮で子どもが覚醒するために意欲が高まる可能性があることが示されました。

犬がいることでポジティブな作用があることは確かですが、落ち着きが予想されていたのに興奮という反対の結果が出たことは興味深いですね。

この研究では音読のスキルについては変化がなかった点は、従来の犬との音読セッションに関する報告とは違っていました。研究者は、この研究のような単発のセッションではなく繰り返し犬とのセッションを持つことがスキル向上のために重要なのではないかと述べています。

まとめ

寄り添って床に寝そべる犬と男の子

音読の苦手な子どもがセラピードッグとの音読セッションを行った時、犬の存在が子どもを興奮〜覚醒させることで意欲向上につながる可能性が示されたこと、ただし1日だけのセッションで音読のスキルが向上することはなかったという研究結果をご紹介しました。

小学生にとって犬の存在は、気持ちを落ち着けるよりも興奮につながるというのはとても納得がいく結果だと思います。セラピードッグとの効果的なセッションで、子どもにも犬にも良い結果が生み出せるよう、今後の研究にさらに期待したいと思います。

《参考URL》
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5475382/

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