怖い犬の熱中症
体温調節のための汗腺を肉球にしか持たない犬は、体温調節が苦手です。
そんな犬にとって、夏は熱中症予防のための防暑対策が欠かせません。
特に犬の場合は熱中症のリスクが高く、死亡率も50〜56%と非常に高いです。体温が42.8℃まで上がると細胞が死んでしまい、心臓や消化器などの臓器が働けなくなります。
すると、やがて意識が混濁しけいれん発作などの神経症状が起こり、半数近くが24時間以内に命を落としてしまいます。
運よく命を取り留めても、腎障害、肝障害、脳障害といった後遺症が残る場合も少なくはありません。
このように一気に進行し、あっという間に命を奪う可能性の高い熱中症は、飼い主さんが愛犬の異変に早い段階で気付き、すぐに適切な対処を行うことが大切です。
今回は、愛犬が暑がっているサインと防暑対策についてご紹介します。
犬にとって快適な環境とは
犬にとって、夏場の快適な室温は23〜26℃、湿度は50〜60%だと言われています。
犬種や個々の犬の体調などによっても異なりますので、愛犬の様子をよく観察し、最適な環境を維持する配慮と工夫を行ってください。
最近の研究では、気温22℃以上、湿度60%以上になると、犬の熱中症の発症率が増えることが分かってきました。
ただし、外気温との差が5℃以上になると、犬の体への負担が大きくなります。
室温は外気温との差を考慮して25〜28℃程度に調整し、湿度を45〜50%に抑えるようにすると良いでしょう。
犬が暑がっている時のサイン
1.パンティング(浅速呼吸)
パンティングとは、舌を出して口を大きく開けながら、早く浅くハァハァと行う呼吸のことです。汗をかけないので、パンティングで口内の水分を蒸発させて体温を下げるのです。
暑くなくても、興奮したり運動をしたりした後に犬がよく行う呼吸法です。
しかし、そういう場合は舌の色がきれいなピンク色をしており、水を飲ませたり落ち着かせたりすることでおさまります。
一方、暑い時のパンティングはもっと激しく、大量なよだれを流したり、舌を巻いたりし、同時に白目が充血して耳の中や舌の色が強い赤みを帯びてきます。こうなると、かなり危険な状態です。
愛犬がこのようなパンティングをしている時は熱中症になりかかっていると考え、涼しい場所に寝かせて体を冷やしながら動物病院に連絡をし、早く診てもらうようにしましょう。
2.涼しい場所を探しまわる
暑くなると、犬は自分で涼しい場所を探します。フローリングの床や玄関の石にペタッとお腹をつけて伏せたり、風通しの良い日陰に行ったりという具合です。
しかし、場所が定まらずにいつまでも探し回っている場合は、要注意です。すぐに体温を確認してください。
自宅での体温測定が難しい場合は、お腹や内腿などに手を当てて、普段の体温がどのくらいかを確認しておくと良いです。
3.食欲がなくなりぐったりする
人と同じように、暑いと犬も食欲不振になり元気がなくなります。
それが高じてぐったりして起き上がれない、歩くとふらふらするような場合も要注意です。体温を確認し、適切な対処を行いましょう。
犬の防暑対策のポイント
愛犬への防暑対策のポイントをまとめると、下記になります。
愛犬が熱中症にならずに快適に過ごせるよう、常に配慮と工夫をしてあげましょう。
1.温湿度管理の徹底
温度と湿度をしっかりと管理しましょう。室温は外気温との差が5℃の範囲におさまるようにし、その分湿度をできるだけ下げるということをポイントに工夫してください。パンティングをしない温湿度を維持しましょう。
留守中にエアコンを付けたままにされる飼い主さんが多いと思いますが、停電や故障のリスクを考慮して、冷却グッズやペットボトルに水を入れて凍らせたものをタオルに包んで愛犬の寝床付近に置いておく等の補助策の併用も安心できます。
2.暑い時間帯の散歩は避ける
散歩の時間帯にも配慮が必要です。犬は地面の近くにいるため、地面からの輻射熱の影響を強く受けます。
また、アスファルトで肉球を火傷をすることも考慮し、早朝や日没後に地面の温度を手で触って確認した上で出かけるようにしましょう。
3.いつでも新鮮な水をたっぷり飲めるようにしておく
パンティングを行うことで犬の体内の水分が蒸発し、普段以上に水分が不足します。脱水状態はそのまま命の危険に繋がりますので、愛犬がいつでも新鮮な水をたっぷり飲めるように準備しておきましょう。
4.愛犬にあった対策を行う
子犬、老犬、短頭種、北国原産の犬種、厚い被毛の犬等は、特に熱中症のリスクが高いです。愛犬が熱中症高リスク犬種の場合、より注意深く防暑対策に取り組んでください。
まとめ
一気に進行し、あっという間に命を奪ってしまう可能性の高い熱中症から愛犬を守れるのは飼い主さんだけです。
飼い主さんがしっかりと防暑対策を行い、いざという時には愛犬の異変に早く気付き、適切な対処を行うことが大切なのです。
犬の熱中症のリスクは人間よりも高く、温度もさることながら湿度が重要だということ、犬種や犬の状態により熱中症へのリスクが異なるということを理解した上で、「温湿度管理」「散歩」「水分補給」に配慮して防暑対策に取り組んでください。