子犬と子オオカミの行動を比較した研究からわかったこと

子犬と子オオカミの行動を比較した研究からわかったこと

犬の認知の研究のために、子犬と人間に育てられたオオカミの仔の行動を比較した結果が発表されました。子犬と子オオカミはどんな点が違っていたのでしょうか。

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家畜化が犬の認知に与えた影響を探るために

ハイイロオオカミの子供

犬が人間と共生するようになった、いわゆる家畜化が始まってから1万4千〜1万5千年が経っていると言われます。その長い期間に、人間による選択育種を経て犬は大きく姿を変えて来ました。

しかし、家畜化が犬の認知にどのように影響したのかは今のところ不明なのだそうです。この度アメリカのデューク大学の進化人類学の研究者が同じくらいの週齢の子犬と子オオカミの行動を比較して、それぞれの社会的および精神的なスキルを調査し、その結果が報告されました。

調査の前には、家畜化によって犬は見た目だけでなく心も変化したという仮説が立てられたのですが、その結果はどうだったのでしょうか。

子犬と子オオカミの行動を比較すると

ラブラドールの子犬たち

調査の対象となった子犬45匹は、全員が将来の介助犬候補として繁殖飼育されたレトリーバーでした。子犬のうち27匹は生後7〜8週齢で、施設内で母犬や兄弟犬と暮らしていました。この子犬たちの側には母犬がいるため、人間との接触は必要最低限でした。

残り18匹の子犬は10〜17週齢で、家庭で人間と暮らしていました。この18匹も介助犬としての訓練の一環で、夜には人間と一緒に寝ていませんでした。

一方オオカミの仔は、全員が野生生物科学センターの飼育下で繁殖飼育された個体でした。生後10日から、1日にほぼ24時間人間から世話をされていました。またテスト期間中は人間の手から餌を与えられ、毎晩ベッドで人間と一緒に寝ていました。

つまりテスト期間中、子オオカミは子犬よりもずっと長い時間を人間と過ごしていたということです。

記憶力や、運動衝動の調節(透明な障害物を避けて食べ物を取る)などの認知能力のテストでは、犬もオオカミもほぼ同じような発達の度合いを示しました。

犬とオオカミが決定的に違っていたのは、人間とのコミュニケーションと未知の人や物へのアプローチでした。

例えば、2つのボウルのうちのどちらかにトリーツを入れて、トリーツが入っている方を指差す実験では、過半数の子犬が100%に近い正答率を示しました。彼らは指差しジェスチャーのトレーニングなどは一切受けていません。一方オオカミでは偶然の一致以上の正答率を出した者は誰もいませんでした。

また子犬や子オオカミがいるサークル内に見知らぬ人間が入った場合、犬が人間に近付いて来る確率はオオカミの約30倍で、未知のおもちゃを近づけられた時は、犬がおもちゃに触る確率はオオカミの約2倍でした。

典型的な光景は、サークル内に見知らぬ人間が入ると子犬たちは駆け寄ってじゃれついてくるのに比べ、ほとんどの子オオカミたちは怖がって隅っこで隠れようとしたそうです。

別の実験では密閉された容器に入った食べ物を与えられた時、子オオカミたちは自力で問題を解決しようとしたのですが、子犬の多くは側にいる人間に目を向けて助けを求めるような行動を見せました。

このように、リサーチの時点でオオカミたちの方が人間と長い時間を過ごしていたにも関わらず、対人間の訓練を受けたことのない犬たちが人間へのより高い社会的スキルを示しました。

家畜化がもたらした犬とオオカミの違い

古代人に懐くオオカミのイラスト

子犬と子オオカミの全般的な認知能力にはそれほどの違いはないのに、人間との協力的なコミュニケーションという点で大きく違っているのはどうしてなのか。また、そもそも野生のオオカミと人間はお互いに恐れあう存在であったはずなのに、犬と人間がこのような密接な関係を築くようになったのはなぜなのでしょうか。

ある説は、友好的で人間にとって魅力的に映ったオオカミだけが残り物の肉を分けてもらい、人間の社会に受け入れられたのだろうとしています。受け入れられたオオカミは人間への恐怖や攻撃性を弱くして子孫につなげて行ったのだろうと考えられます。

また人間の社会に受け入れられたオオカミは人間のジェスチャーや社会的合図を解読し、人間の意図を推測するスキルを身につけ、世代を越えて継続して行ったことも考えられます。

この調査によって、犬が人間と協力するための社会的スキルは家畜化の産物であるという上記のような説を裏付けていると研究者は述べています。家畜化は犬の心に変化をもたらしたという仮説が立証されたとも言えます。

まとめ

茂みに座る3頭のタイプの違う犬

同じくらいの週齢のレトリーバーの子犬と子オオカミの行動を比較した結果、全般的な認知能力に差はないが、犬はオオカミよりも人間とのコミュニケーションスキルが高いことがわかったという調査結果をご紹介しました。

現代の犬の遠い遠い祖先たちが人間を魅了したことが犬と人間の歴史の始まりだとしたら、私たちがこんなにも犬に惹かれるのは無理もないと言えそうですね。

《参考URL》
10.1016/j.cub.2021.06.051
https://today.duke.edu/2020/07/you-can-snuggle-wolf-pups-all-you-want-they-still-wont-get-you-quite-your-dog

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