犬は食べ物をくれた人間にお返しをするだろうか?という実験結果の一例

犬は食べ物をくれた人間にお返しをするだろうか?という実験結果の一例

犬は人間と密接な関係を持って生活をしている動物ですが、人間から食べ物をもらった時にお返しに食べものをあげるという行動をするのでしょうか?実験の結果をご紹介します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

犬から人間への「返礼」の行動をリサーチ

フードボウルと見上げるポメラニアン

犬は人間の近くで生活している動物の中でも、最も人間と近い関係を築いています。犬は犬同士の社会的関係を持ちながら、人間社会で生活しています。

食べ物を分け合ったりグルーミングをし合ったりするなどの協力行動は、その動物の生存に有利に働きます。協力行動の中の一つである返礼行動は、自分が受けた恩恵に対してお返しとして相手に何かを与えたり行動をすることで、人間以外の動物でも多くの研究が行われています。しかし、その詳細はまだあまり分かっていません。

犬における社会的行動、協力行動についてのこれまでの研究では、犬は自分がよく知っている犬に対しては、見知らぬ犬に対してよりも頻繁に協力的な行動をする、犬同士では返礼行動が見られた、犬は飼い主を助ける行動をとろうとする、犬は自分に協力的な人間と非協力的な人間を区別することができる、などの実験結果が示されています。そこで今回、オーストリアのウィーン獣医科大学などの研究者たちは「自分に食べ物をくれた人間に対して犬は返礼行動を行うだろうか」を検証する実験を行いました。

ボタンを押すとフードが出る装置を使った実験

トリーツをキャッチする瞬間の犬

実験に参加した犬は一般から募集された、年齢も犬種も様々な家庭犬21頭でした。犬たちの実験パートナーは飼い主ではなく、こちらも一般から募集された人たちが参加しました。犬と人間の関係性がどの組も同じ条件になるよう、犬と人間は実験の時が初対面でした。

実験に先立って、犬たちは実験に使うフードディスペンサーを操作できるように、またディスペンサーのボタンを押すとどうなるのかなどを理解するように、複数の段階をふんで訓練されました。ディスペンサーとボタンは少し離れた場所に置かれていて、ボタンを押すとディスペンサーから食べ物が出てくる仕組みです。

実験中、ペアとなった犬1頭と人間1人はそれぞれ、お互いに隣接したワイヤーメッシュの囲いの中に入ります。

そして、人間がボタンを押すと犬側にあるディスペンサーから食べ物(ドライフード数粒)が出たり(協力的な人間)、人間がボタンを押してもディスペンサーから何も出なかったり(非協力的な人間)、犬側にボタンを置いて人間がディスペンサーから出た食べ物(チョコレートやナッツなど)を食べたり、犬側にボタンを置いた状態で人間が届かない場所にディスペンサーを置いたり、人間側にディスペンサーはあるけど人間が誰もいない状態で犬側にボタンを置いたりなど、様々なパターンで実験を行いました。

実験終了後、飼い主やペアとなった実験者が犬と自由に触れ合う時間を設け、犬の行動を記録しました。

どの犬も協力的な人間との実験、非協力的な人間と行う実験の両方に参加し、それぞれの実験は別の日に行われました。

犬は協力的な人にお礼の行動をしたか?

クッキーをくわえた小型犬

このように様々な条件での実験を行い、条件によって犬がボタンを押す割合や触れ合いセッションでの犬が実験者に近づくまでの時間、触れ合いセッションでの犬が実験者の近くで過ごす時間を比べました。

その結果、協力的な人間と非協力的な人間のどちらに対しても犬がボタンを押す確率は変わらず、触れ合いセッションでも協力的な人間と非協力的な人間に対しての犬の行動に違いは見られませんでした。

その結果研究者たちは、この研究においては家庭犬は食べ物をくれた人間に対して返礼行動をしなかったと結論付けています。

以前の他の研究で、犬は協力的な人間と非協力的な人間を区別できることが示されていたり、犬は飼い主を助けようとしたり、同じ犬同士では、返礼行動が見られたという結果が示されていることから、今回の研究においても犬は自分に協力的な人間に返礼行動をすることが期待できたかもしれません。

今回の研究者たちは、今回の研究で協力的な人間と非協力的な人間に対する犬の行動に違いが見られなかったことと、どちらの人間に対しても人間のために食べ物が出てくるボタンを犬が押す回数が変わらなかった理由について、いくつかの可能性を示しています。例えば、この実験デザインでは犬が協力的な人間と非協力的な人間の違いを認識できなかった可能性や、犬にとって人間は通常食べ物を与える側の存在であり受け取る側ではないので、食べ物を出してあげるという行動を返礼行動とは犬が思わなかった可能性、ボタンやディスペンサーを介してではなく人間がもっと直接的に犬に何かをしてあげる実験であったら返礼行動が見られた可能性、犬がディスペンサーと食べ物を強く関連づけて考えしまい協力的な人間と食べ物をあまり関連づけなかった可能性などです。

また、実験後の触れ合いセッションでは、協力的な人間と非協力的な人間に犬が同時に触れ合ったわけではなかったことも、違いが見られなかった理由として考えられるということです。実験者が初対面であった影響も考えられます。犬同士の返礼行動でもお互いの親密度によって差が見られたという実験結果もあるので、これも今後の課題にするとのことです。

まとめ

ハイタッチをする男性とラブラドール

犬は自分に食べ物を与えてくれた人と与えてくれなかった人を区別して、与えてくれた人に返礼行動をするだろうか?という実験で、犬が人間にお返しをするような行動は見られなかったという結果をご紹介しました。

しかし、犬は人間との絆を築ける動物であること、犬が人間に返礼行動をする可能性が考えられる他の研究があることなどから、研究者たちは、今後は実験デザインを変更してさらに研究を進めたいと考えているそうです。

日常生活の中では「犬がお礼をしている」と考えられるような行動を目にすることがありますよね。そのような犬の行動について科学的な裏付けが取れたらとても興味深いので、続報を楽しみに待ちたいと思います。

《紹介した論文》
McGetrick, J., Poncet, L., Amann, M., Schullern-Schrattenhofen, J., Fux, L., Martínez, M., & Range, F. (2021). Dogs fail to reciprocate the receipt of food from a human in a food-giving task. PloS one, 16(7).
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0253277

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