コロナ禍のロックダウン中の孤独に関する調査
コロナ禍のため街全体を封鎖するロックダウンは世界の多くの都市で実施され、その心理的な影響などについても様々な研究が行われています。
オーストラリアのジェームズクック大学の心理学者が、ロックダウン中に一人暮らしをしていた384名を対象にしたアンケート調査結果を発表しました。調査に参加した人の年齢の中央値は51歳、年代は20代〜80代と幅広いものでした。
その中で犬を飼っている人と猫を飼っている人では、ペットからの反応と本人の受け止め方にかなり大きな違いがあったのだそうです。
犬や猫の存在はロックダウン中にどんな効果があったか
そもそもこの調査の目的は、一人暮らしの人の孤独感、マインドフルネス、気分のレベルを知ることでした。孤独感はうつ病や不安神経症の危険因子となり、マインドフルネスは心を不安やストレスから守るために重要だからです。
マインドフルネスというのは「今この瞬間に起こっていることに注意を向け続ける能力」を指します。
犬を飼っている人の多くは、犬の存在がロックダウン中の孤独感を和らげてくれたと答えたそうです。またいくつかの質問事項への回答は、犬と互いに関わり合うことでマインドフルネスが向上していたことを示していました。
これは犬の存在そのものに加えて、犬と散歩に出ることで運動や他の飼い主との社交の機会を得られることも関係していると考えられます。
一方、猫と暮らしている人の多くは、猫の存在と孤独感について関連を見出しませんでした。また猫と暮らしている人のマインドフルネスは、ペットを飼っていない人よりも低いことも分かりました。
飼い主がずっと家にいることについて犬と猫の反応は?
犬と猫の飼い主で孤独感やマインドフルネスについて対照的な結果が出た理由は、犬の散歩の他にも何かあったのでしょうか。それは飼い主が普段よりもずっと長い時間在宅している時のペットの反応にヒントがあったようです。
犬と暮らしている人のほとんど全員が「飼い主がずっと家に居ることについて犬は嬉しそうで満足しているようだ」と答えています。
これに対して猫と暮らしている人の中には「飼い主が常に家に居ることで、猫は自分の空間が侵されていると感じ不機嫌になっているようだ」と答えた人が複数いました。
さらに猫と暮らしている人の約50%が「猫の行動は、飼い主から常に追い立てられていると感じているのだなと解釈できるものだ」と答えています。
飼い主がずっと家に居ることが猫にとってストレスなのだと思うと、孤独感が増すのも無理もないかもしれません。
以上のことから、研究者は孤独感の低下やマインドフルネスの向上について、犬を飼うことが助けになる可能性を示しています。
しかし、これは犬の方が猫よりもペットとして優れていると言っているのではなく、単に犬と猫は違うのだと示しているだけです。
猫と暮らしている人は、猫のこのような距離感を心地よいと感じる人も多いでしょう。これから犬か猫を迎えたいと考えている人は、このような根本的な違いを知っておくことは人と動物両方の幸せのために大切です。
まとめ
オーストラリアでロックダウン中の生活に関する調査で、犬の飼い主は孤独感の低下や、犬が飼い主の在宅を喜んでいることを感じていたが、猫の飼い主は自分が常に在宅していることを猫が歓迎していないと感じていたという結果をご紹介しました。
この調査は心理学の研究のためのものなので「犬を飼うことは孤独感の低下に有効である」という結論は理に適ったものです。
しかし学問という面から離れてみると「動物は人間の癒しのために存在しているのではない。動物からの癒しや安らぎは結果としてたまたま付いてくるもの。家族に迎える動物の特性はしっかり理解しておくことが大切」ということを改めて強く考えさせられました。
《参考URL》
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0020764020944195