皮膚の構造
イヌもヒトも基本的な皮膚の構造は変わりません。一番外側から表皮、真皮、皮下組織の三層で構成されています。
しかしイヌはたくさんの被毛があったり汗腺の分布が偏っていたりと、ヒトと違う部分もあります。
特に一番表面の表皮部分については、ヒトが割と丈夫で分厚い表皮と角質層でおおわれているのに対し、イヌたちの表皮と角質層は非常に薄くできています。
これはヒトの皮膚が外気に晒されているのに対して、イヌは体表のほとんどを被毛でおおわれているせいであると考えられています。
そのため、皮膚そのものはイヌの方が人間より柔らかく、薄く、ケガなどに弱くデリケートであると考えたほうがよさそうです。
皮膚が伸びる理由
人間よりデリケートな表皮を持つ犬ですが、彼らの柔らかい皮膚自体はびよーんと良く伸びます。これはなぜでしょう。
1.身を守るため
一番大きな理由としては、外敵から身を守るためと言われています。
犬たちはもともと野生の動物であり、群れを作って協力して生活します。しかし野生で生活するという事は外敵に狙われたり、他の動物と争う可能性があります。
いざ戦ったりかみつかれたりしたときに、皮膚がぴったり体にくっついている状態ですと、相手の牙や爪が食い込んだ際に血管や臓器を直接傷つけられてしまう危険があるのです。
反対に皮膚が柔らかく、脂肪の層に乗ってゆるゆるしていて伸びる状態にあると、牙や爪が食い込んでも大切な血管や臓器まで届かずに致命傷を避けることができます。
そのため、犬の皮膚は特に急所に近い首やのど、背中、頭などが良く伸びる(ゆるゆるしている)状態になっているのです。
2.お世話されやすくするため
子犬や子猫は特に皮膚が柔らかく、首回りなどの皮膚は伸びやすくできています。
これは母親や家族に咥えて運ばれる際に傷がつかないように、成犬よりさらに伸びやすくゆるゆるになっているようですね。
どこが伸びやすい?
犬の伸びやすい皮膚は主に上半身です。
ほっぺ、首の後ろ、首や肩、背中、胸元、眉間、耳、上唇など、戦いになった際に急所に近い場所が多いようです。
特にほっぺの部分は頬から喉元、胸までよく伸びる部分で、頸動脈や気管を大きなケガから守っていると言われています。
反対にお腹の部分や四肢の先端、しっぽの部分などは伸びにくくできています。
お腹部分は仰向けにならないかぎり敵から狙われにくい部位ですし、足先やしっぽなどは重要な臓器や太い血管が無いせいでしょうか。
実際に犬たちの体を触っているときに伸ばしてみても良いでしょう。
伸びる部分は基本的に犬たちも触られて嫌がらないことが多いので、皮膚の状態チェックがてら良く伸ばしてみてください。
しかしいくら伸びるからといっても嫌がるほどぐいぐい伸ばしてしまうのはいけません。伸びやすい犬種と比較的伸びにくい犬種もいるので、嫌がることは無理強いしないであげましょう。
また犬種によっては皮膚が良く伸びる部分にたるみによる蒸れなどで皮膚炎をおこしていたり、乾燥からフケが出過ぎていたりすることもあります。定期的にチェックして清潔にしてあげましょう。
まとめ
犬たちは喋ることができませんので飼い主がこまめに健康チェックをする必要があります。
ほっぺを伸ばして可愛い写真を撮るついでに、伸び方や被毛のチェック、においなどに気を付けることを習慣化すれば病気の早期発見にもつながり一石二鳥ですね。
万が一異常を発見したときは、すぐに獣医さんへ相談しましょう。