コロナ禍の中のペットの医療データを調べたら...
コロナ禍中のロックダウンのために、2020年は体重が増加した年だったという人は少なくありません。これはペットたちも同じで、アメリカ最大の動物診療所チェーンであるバンフィールド・ペットホスピタルがデータによって確認しています。
全米の同診療所を訪れた犬のうち、体重過多または肥満と診断された犬は2020年3月から12月までの間に2.3%増加していたとのことです。
バンフィールド・ペットホスピタルはアメリカ全土に診療所を持ち、毎年何百万匹もの医療データを記録しています。このデータを分析したところ、2020年だけでなくアメリカの犬や猫は過去10年間で体重を増やし続けていることが分かったと発表がありました。
深刻なペットの肥満傾向
最初に言葉の意味をご紹介しておきますと、体重過多と肥満は厳密には違う意味です。体重過多とは単純に標準体重を超過している状態です。一方、肥満とは体重が多いだけでなく体脂肪が過剰な状態を指します。
筋肉量が極端に多い場合は体重過多になりがちですが肥満ではありません。しかし、そのような例はごく少数で、たいていの場合体重過多のペットは肥満です。
バンフィールド診療所を訪れる犬のデータを分析したところ、2011年には体重過多または肥満と診断された犬は全体の16%でした。それが2020年には全体の34%にまで増加。これは108%の増加という驚くべき数字です。猫ではさらに数字が大きくなり、114%の増加となっています。
この増加率は、疾病で言えばエピデミック(一定の地域や集団において、ある病気の患者が通常よりも大量に発生すること)と言えるほどの数字です。これはペットの犬や猫の健康にとって大きな問題です。
太り過ぎのペットが苦しむ健康トラブル
太り過ぎの状態がペットの健康に及ぼすリスクとは具体的にどのようなものでしょうか。この調査のデータから見ると、次のようなことが明らかになっています。
1.感染症など皮膚のトラブル
体重過多または肥満と診断された犬が皮膚のトラブルも持っている率は、普通体型の犬の約4倍、猫の場合は約7倍でした。これは体型のために、自分で体を舐めたり毛づくろいすることが困難になったからではないかと考えられます。
2.内分泌系の病気
糖尿病や甲状腺機能低下症など内分泌系の病気と肥満には関連があります。太り過ぎの犬が、これら内分泌系の病気と診断された割合は普通体型の犬の約4倍、猫の場合は約5倍でした。
3.関節の障害や炎症
犬の変形性関節症はとても一般的な病気ですが、体重管理は病気の進行を遅くするために非常に重要です。体重過多または肥満と診断された犬が骨や関節に関連する整形外科関連のトラブルも持っている割合は、普通体型の場合の約3倍でした。
4.呼吸器系の病気
喘息や慢性気管支炎などの呼吸器系の病気も肥満と関連があります。太り過ぎの犬は普通体型の犬に比べて呼吸器系の病気と診断される割合が約2倍、猫の場合は約4倍でした。
太り過ぎのペットの飼い主の心理とは?
バンフィールド・ペットホスピタルは、診療所を訪れたペットの医療記録の他に、全米の1000人の飼い主へのアンケート調査も実施しました。
「10年前に比べて太り過ぎのペットが増えている」という項目に「そうは思わない」という層や、ペットが太り過ぎと診断されることに不満を持つ飼い主が一定数いることについて、社会全体への呼びかけがさらに必要だと考えられています。
またペットが太り過ぎだと自覚している飼い主の93%が、ペットのダイエットについて壁にぶつかっていると答えています。その理由は次のようなものです。
- 食べ物をねだられるとダメと言えない
- そもそもペットの体重を減らす方法がわからない
- ペットの運動のための時間がない
- ペットの食事について真剣に考えたことがなかった
また約4割の人は、獣医師からペットの太り過ぎを指摘されるのが怖いので病院に行くのを避けていたと答えています。
バンフィールドの獣医師はこれらの回答に対して、何よりもまず定期的に病院に行ってペットの健康について長期的な計画を獣医師に相談することだとしています。
毎日の運動については、いきなり「明日から犬と一緒に3キロ走る」と決心するのではなく、1日に1ブロックずつ余分に歩くという簡単な目標を継続して行くことを勧めています。
おやつは1日のカロリーの10%以内に制限し、ただ与えるのではなくトリーツを入れられるパズルを使ったり、隠したトリーツを探すゲームをするなどの工夫が提案されています。
まとめ
アメリカの大規模ペット診療所が医療データから分析した、犬や猫の肥満が増えているという調査結果をご紹介しました。
ペットは飼い主が与えた食べ物しか食べられないので、ペットの体重管理は飼い主の仕事です。この調査結果はアメリカのものですが、ペットの肥満傾向は世界各国で警告されています。
適切な体重管理は言葉で言うほど簡単ではありませんが、大切な愛犬の健康のために一度しっかりとフードやおやつ、散歩の適切な量を確認しておくのも良いかもしれませんね。