トルコ発、児童向けの犬の咬傷事故予防プログラムの有効性【研究結果】

トルコ発、児童向けの犬の咬傷事故予防プログラムの有効性【研究結果】

野良犬が多いことで知られているトルコで、子どものための咬傷事故予防プログラムが査定され結果が発表されました。その内容をご紹介します。

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トルコにおける野良犬の扱い

トルコの街の中の犬たち

『野良犬』という言葉はあまりイメージの良いものではなく、一口に野良犬と言っても犬が住んでいる国によってその扱いや背景も様々に違います。

野良犬と言うよりも地域犬や放し飼い犬と言ったほうが相応しい場所もあれば、遺棄されて野良になった犬が多い場所、遺棄の結果として繁殖して増えた野犬が多い場所もあります。

野良犬が地域の人に優しく受け入れられている国は仏教やヒンズー教などで受け継がれている生き物の扱いを実践している場合が多いようです。つまり街の中をウロウロしている犬との共生は伝統的な文化の一部です。

一方、この記事でご紹介するトルコは同じように野良犬が多い歴史を持つ国ながら、20世紀までは野良犬は全て捕獲して殺処分するという方針を取っていました。つまり野良犬と共生するという伝統はありません。

しかしトルコでは犬の扱いに対する抗議の声が高まり、2004年に野良犬の捕獲や殺処分が法律で禁止されました。このような法律があるのは世界でもトルコだけです。

トルコの街の中には野良犬や野良猫のための水のボウルが置かれ、リサイクルのためのペットボトルを投入すると野良犬のためのペットフード が受け皿に出て来るというユニークな機械も設置されています。

トルコの野良犬にはこのような背景があるということを踏まえて、同国のアンカラ大学の獣医学および生理学の研究者と心理学者らが、就学前の児童を対象にした犬の咬傷事故予防プログラムを査定し、その結果を発表しました。

子どもに犬との接し方を教育するプログラム

女の子と路上の野良犬

日常的に飼い主のいない犬が街を歩いている社会では、人間が犬との接し方を心得ていることがとても重要です。人間が日常的に犬に暴力を振るうような状況では、犬の方も人間と見れば襲いかかって来るようになるからです。

そこまで極端ではなくても、子ども達が犬を見ると無防備に近寄ったり、知らず知らずに犬の嫌がることをすると咬傷事故につながります。そのような事故を防ぐために必要なのは人間の方が犬との接し方を学ぶことです。

この研究では就学前の児童を対象にした短期間の咬傷事故予防プログラムが、どの程度有効であるかが調査されました。

プログラムに参加したのは3歳から6歳までの117人の児童です。子ども達はまず最初に口頭で犬との接し方についての説明を聞きました。一方的にお話を聞くだけでなく、質問などで子ども達も参加できるという方式です。

次に子ども達は、犬との接し方を題材にした演劇を観ます。演劇のタイトルは「樹になる」というもので、知らない犬と出会った時に駆け寄ったり大きな声を出したりしないで、その場にある樹木になったように、犬にとって「何でもないもの」になることを表していると思われます。

最終段階で、子ども達は実際に犬を目の前にして、犬との接し方を学んでいきます。どのプログラムも教室で先生の話を聞くという方式ではない子ども達が参加する方式です。このような短期プログラムでどの程度の効果が見られたのでしょうか?

犬と人間の関わり合い方やシチュエーションに関する質問

公園で寝ているトルコの野良犬

子ども達は全員が、犬と人間の関わり合い方について、そして犬にアプローチする時の状況についての2つのテストを3度に渡って受けました。
1回目はプログラムに参加する前、2回目はプログラムの直後、3回目はプログラムの1週間後です。

子ども達全員がプログラムに参加した後に、両方のテストのスコアが有意に改善していました。特に年齢の高い児童のスコアの改善が顕著だったそうです。特に演劇のセッションが高い効果を示していたことも分かりました。

研究者は、一方的に話を聞くだけではなく子ども達が参加しながら学ぶ咬傷事故予防プログラムが、犬の行動についての子ども達の意識と知識を高めることを示していると述べています。

また咬傷事故予防プログラムを設計する際に、対象者の年齢を考慮する必要についても言及しています。

まとめ

トルコのモスクをバックにした野良犬

野良犬の数は多いが、人々が路上の犬達に友好的に接している国として知られているトルコにおいて、就学前の児童向けの短期間の咬傷事故予防プログラムが、子ども達の意識を高めるために有効であったという調査結果をご紹介しました。

犬が人間に友好的で、人間も犬に友好的であるためには、正しい知識と意識が必要であることを示す結果と言えます。これは相手が野良犬でなく家庭犬であっても同じことです。

子どもが犬に咬まれる事故を防ぐためには、犬のトレーニングだけでなく子どもへの教育もまた重要であることがよく分かります。

《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1558787821000617

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