20世紀初頭の英国南極探検隊のソリ犬たちの食事内容【研究結果】

20世紀初頭の英国南極探検隊のソリ犬たちの食事内容【研究結果】

100年以上前のイギリス南極遠征隊員が大陸に残したドッグケーキが回収され、その成分が分析されました。世界初の商業ドッグフードと当時のソリ犬たちの食事内容をご紹介します。

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世界初の商業ドッグフード、スプラッツのドッグケーキ

四角いビスケット

世界で初めて「これさえ与えれば犬の食事は万全」という謳い文句で作られた商業ドッグフードは、イギリスのスプラッツという会社が作ったドッグケーキです。1860年ロンドンで、ジェームズ・スプラット氏によって考案され発売されました。

ドッグケーキという名前ですが形状はビスケットで、魚や肉が原料に含まれていたそうです。このドッグケーキは愛犬に手軽に栄養のある食事を与えられるというので、富裕層に人気を博しヒット商品となったといいます。

このスプラッツのドッグケーキが意外な場所で回収され、イギリスのカンタベリー博物館、リンカーン大学、ニュージーランドのオタゴ大学の人類史の研究者によって分析され、その結果が発表されました。

イギリス南極探検隊がソリ犬に与えた食事

ソリを引く犬たちとオーロラ

19世紀末から20世紀初頭にかけて南極大陸は国際的に注目され、大陸を科学的および地理学的に調査するため多くの南極探検隊が送り込まれました。記録によると10カ国から17の遠征探検隊が南極大陸を探検したそうです。

イギリスもその10カ国のうちの1つでした。探検隊は現地での移動に犬ぞりを使っており、当時の隊員の日記や回想録には犬たちを賞賛する言葉が綴られているそうです。またそれらの記録には、犬の食事としてスプラッツのドッグケーキを持参したことが書かれていました。

ドッグケーキは輸送も給餌も簡単で、腐敗の心配もなかったので探検隊が持参するにはピッタリだったようです。しかし残念ながら探検隊の隊員たちは、犬の食事について当初はあまりにも無知だったようです。

南極遠征に先駆けたイギリスの北極遠征隊はソリ犬のためにスプラッツのドッグケーキと魚の干物を持参しました。しかし魚の保存状態が悪かったのか、これらを食べた犬たちが命を落としてしまいました。

この悲劇を避けたいと考えたせいで、その後の遠征ではドッグケーキだけが与えられました。しかし当時の記録によると犬たちは1日500g程度のドッグケーキしか与えられておらず、極寒の地で長時間ソリを引くという重労働に必要な栄養は摂取できていない状態でした。

お腹が空きすぎて犬たちのパフォーマンスも落ちたと思われ、アザラシの肉が追加されて犬たちも回復したのだそうです。(過去のことながらホッとしますね)

少し後のイギリスの別の遠征隊ではスプラッツのドッグケーキの他、アザラシの肉、ビスケット、ペミカンなど高脂肪高タンパクの食事が与えられていました。ペミカンとは北米原住民の伝統食で、動物性脂肪と干し肉、干しベリーを混ぜて乾燥させた高カロリー保存食です。

南極大陸に残されたドッグケーキを回収、分析

現代のドッグフード

そしてこの度、南極探検隊のソリ犬たちのために大活躍したスプラッツのドッグケーキが現地で回収され、イギリスのカンターベリー博物館に渡りました。

ドッグケーキはニュージーランドのオタゴ大学の量子技術の研究者がレーザー分析を使って、ケーキ内の原料の組成をミクロン単位で決定し、小麦、オート麦、骨などの成分を特定しました。

脂肪成分は非常に少なく、現代の高性能ドッグフードに比較すると不十分ではあるものの、アザラシの肉やペミカンなどの高脂肪高タンパクの食べ物に追加することで、良質なエネルギー源になったであろうとてしいます。

リンカーン大学の畜産学の研究者は、スプラッツのドッグビスケットで補給できるエネルギー量を計算し、ソリ犬たちに必要なエネルギーを摂取するためにはドッグケーキだけの場合1日に3kg程度の給餌量が必要であったと述べています。1日に500gのドッグケーキしか与えられていなかった時期のことを思うと、たいへん悲しい気持ちになります。

まとめ

雪の上のソリ犬たち

イギリスの南極探検隊がソリ犬に与えていた世界で最初の商業ドッグフードが回収され成分が分析されたことと、記録に残っている当時の犬たちの食事内容についてご紹介しました。

世界で最初に作られた100年以上前のドッグフードが栄養成分的に優れたものであったことは、ちょっとした驚きです。しかしせっかく優れた成分であっても、十分な量を与えられなければ必要な栄養が摂取できません。

当時の探検隊員たちが犬の栄養学の知識を持っていなかったのは残念なことです。様々な情報がとても簡単に手に入る現代においても、知識の不足から犬に必要なものを与えられずにいるケースは多々あります。

南極探検のソリ犬という極端な例ですが、犬に適切な量と質の栄養を与えること、その知識を持つことの大切さを改めて思い知らされる報告でした。

《参考URL》
https://doi.org/10.1017/S0032247421000103
https://www.canterburymuseum.com/about-us/media-releases/tuckered-out-early-antarctic-explorers-underfed-their-dogs/
https://en.wikipedia.org/wiki/Spratt%27s

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