保護された元野良犬の行動上の問題に関するデンマークでの調査結果

保護された元野良犬の行動上の問題に関するデンマークでの調査結果

元野良犬から家庭犬となった犬たちの行動上の問題を調査した結果が発表されました。いくつかの点から社会的な問題が垣間見えています。

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ヨーロッパの野良犬問題

石畳を歩く野良犬

ヨーロッパと言えば「動物福祉が進んでいる」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。しかし南欧や東欧では飼い主のいない犬が、路上を歩き回っていると言われています。

一方で、そのような飼い主のいない犬を保護して、希望者が見つかりやすい国に送り出す保護団体もあります。イギリスや北欧諸国では、元野良犬を「輸入」して家族に迎える人が多くいます。

デンマークもそのような元野良犬の輸入国の1つで、この度コペンハーゲン大学の獣医科学の研究チームが、元野良犬に関する調査を行いその結果が発表されました。

調査の内容は、路上出身の犬たちは家庭に迎えられてうまく適応できているのだろうか?行動上の問題が起きているのではないだろうか?という疑問に関するものです。

犬の飼い主と、獣医師へのアンケート調査

怯えた様子で見上げる犬

調査のためのデータは犬の飼い主へのアンケート、獣医師へのアンケートによって収集されました。

飼い主へのアンケートは、デンマーク国内で犬を飼っている人なら誰でも回答することができます。飼っている犬がデンマーク出身の純血種でも、外国から来た元野良犬でも参加の条件は同じです。

アンケートは、犬種、性別、不妊化の状態、年齢、元野良犬の場合の原産国などの基本情報の他、「飼い主の情報」「犬の日常生活」「犬の行動」の3つのパートに分かれています。

犬の日常生活のパートでは、毎日の運動や遊び、トレーニングクラス、行動の専門家の助けを必要としたかどうか、などが含まれました。

犬の行動のパートでは「人や物を怖がる」「攻撃性」「食べ物やおもちゃを守ろうとする」「ストレス」「注意を惹きたがる」「トイレの粗相」「破壊行動」などを含む45項目が、それぞれどの程度見られるかが質問されました。

また飼い主へのアンケートとは別に、デンマークの臨床獣医師へのアンケート調査も行われました。対象となったのはデンマーク獣医師協会のコンパニオンアニマル分野の開業医でした。

質問の内容は、前年1年間で診察した元野良犬の有病率、診察した元野良犬の行動上の問題、行動上の問題のために安楽死させた元野良犬の数などが含まれました。

元野良犬の行動上の問題はどの程度だったのか?

マズルカバーを着けて診察を受ける犬

寄せられた回答を分析した結果は、飼い主と獣医師とで相反するものでした。

飼い主による回答では、元野良犬はデンマーク出身の犬に比べて恐怖、ストレス、攻撃性に関連する行動上の問題が多く見られるものの、その程度については両者の差はそれほど大きいものではありませんでした。

多くの元野良犬の飼い主は、犬たちはデンマークの家庭犬として生活に適応していると考えていました。しかし獣医師からの回答では、外国から来た元野良犬の行動上の問題のレベルは、デンマーク出身の犬よりもはるかに深刻だと報告しています。

研究者はこの点について、病院での診察という犬にとって恐怖や不快感の強い状況が、行動上の問題を強くしている可能性を指摘しています。

また診察中という状況だけでなく、もっと根本的な政治や倫理に関する意見の不一致も関係していると考えられます。

多くの獣医師は外国から来た元野良犬が国内に病気を持ち込むことを懸念しています。外国から来た元野良犬という存在への危惧が、行動上の問題への評価にもつながっているのかもしれません。

基本的に獣医師は外国の犬を保護することに反対の立場の人が多く、そのような反対派の人々は犬は元々住んでいる国で保護されるべきで、それが無理ならば殺処分にするべきだと主張しています。野良犬として過酷な生活を送るよりも安楽死処分にする方が人道的だというデンマークの伝統的な動物福祉の概念に基づきます。

しかしわざわざ外国から来た犬を家族に迎えようという飼い主は、犬の命を救うことが強い動機となっていますので、伝統的な動物福祉の概念を拒否しています。

行動上の問題の他に、外国の保護犬を受け入れている国では獣医師が心配する通り、国内では見られなかった犬の病気が増えているということは現実です。

ヨーロッパの野良犬の保護は、単純に「犬の命を救いたい!」という動機だけでは処理できない複雑な問題ですが、この調査のように両者の認識を明らかにして比較することは問題解決の糸口として重要です。

まとめ

撫でられている雑種犬

デンマークで飼育されている南欧や東欧で保護された元野良犬が、コンパニオンアニマルとしての生活に適応できているかどうかを調査したところ、飼い主と獣医師で認識に乖離があったこと、犬たちは恐怖やストレスに関連する行動が多く見られたことをご紹介しました。

野良犬と言えば、インドやタイなど東南〜南アジアの犬たち、野良犬に対する保護政策があるトルコなどがよく知られています。南アジアやトルコの野良犬は、野良犬というよりも特定の飼い主のいない地域犬という性格が強く、そのような犬たちは恐怖やストレスによる行動はほとんど問題になりません。

この調査で対象となったヨーロッパの野良犬は、東欧では暴力的に扱われる事例が多く、南欧では遺棄された犬が多いため、人間への恐怖が強いのも無理がないと言えます。

一口に野良犬出身と言っても、その背景によって家庭に迎えられた後の行動も大きく違います。日本でも保護された野良犬を家族に迎えている人がたくさんいます。保護される前にどのような生活をしていたか思いを巡らすことで、適切な対応につながるかもしれないですね。

《参考URL》
https://www.mdpi.com/2076-2615/11/5/1436/htm

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