人々が関心を持つきっかけとなった2019年の悲劇
本格的な夏が近くなると、いろいろな場所で犬にとっての夏の危険事項がリストアップされ警告が繰り返されます。花火や雷、灼けたコンクリートの地面による火傷、熱中症、車の中への置き去りなどがすぐに頭に浮かぶものですね。
アメリカではこの2年ほどの間に、このリストに「犬を緑色の水に近づけないで」と言う警告が加わっています。緑色の水というのは池や湖などに藍藻(らんそう)が繁殖した状態のことです。藍藻はアオコという呼び方が一般的です。
アオコの危険性は以前からよく取り上げられていたのですが、2019年にアメリカ南部を中心に6つの州でアオコで緑色になった池や湖で泳いだ犬が、命を落としたというニュースが多くの愛犬家の注意を惹きつけました。
中でもノースカロライナ州で起きた、同じ飼い主の3頭の愛犬が水遊びの後に全員が亡くなってしまったというニュースは人々に大きなショックを与えました。想像しただけで胸が潰れそうな悪夢です。
温暖化の影響でアオコの発生増加は世界の至る所で起こっています。もちろん日本も例外ではありません。
もっと周知されるべきアオコの危険
「アオコって緑色の藻なのに、そんなに危険なの?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、同じ現象が海で起こった場合には赤潮と呼ばれると言えば実感が湧くのではないでしょうか。
アオコは藍藻という名のため植物だと思われがちですが、光合成を行う細菌によって起こるものです。この細菌は大腸菌などに近いもので、シアノバクテリアと呼ばれます。30種類以上のシアノバクテリアが異常発生した結果、池や湖が緑の膜に覆われたような状態になります。
シアノバクテリアは強力な毒素を生成します。その毒性は次の4つに分類されます。
- 肝臓毒素 肝臓に損傷を与える
- 神経毒素 神経組織を破壊する
- 腎臓毒素 腎臓の細胞を破壊する
- 皮膚毒素 蕁麻疹や発疹の原因となる
これらの毒素の中毒は急速に現れ症状が進むため、治療に取り掛かる前に手遅れになることも少なくありません。命に関わる危険なので、多くの人に周知されなくてはいけません。
アオコ中毒の症状と対処方法
アオコ中毒の症状は次のようなものです。池や湖で緑色の水に接触した犬が、このような症状を示した場合には一刻を争って病院で処置を受ける必要があります。
- 下痢、嘔吐
- ぐったりと弱る
- 意識混濁
- 昏睡
- 過剰なヨダレや涙
- 筋肉の震えや硬直
- けいれん発作
- 皮膚や粘膜が青っぽく変色する
- 呼吸困難
身体にアオコを含む水がついている場合は真水で洗い流し、症状が出ていなくても診察を受けましょう。アオコに接触してから症状が出る時間は15分〜数日と幅があるからです。関与する毒素によって、症状や発症するまでの時間が異なります。
残念ながらシアノバクテリアが生成した毒素に対する解毒剤はありません。治療は症状の出ている臓器に焦点を当てた対症療法になります。
回復には数週間、長い場合は数ヶ月かかることもあります。臓器のダメージを最小限に抑えて後遺症を起こさないためにも、早い段階での治療が大切です。
まとめ
アメリカでアオコの危険性を警告するメディアが増えていること、アオコがなぜ危険なのかについてご紹介しました。
アオコ中毒を防ぐ一番の方法は緑色になっている水には近寄らないということです。愛犬との楽しいレジャーの時間を一転して悲劇に変えることがないよう、多くの人に知っておいていただきたいことです。
《参考URL》
https://todaysveterinarynurse.com/articles/veterinarians-blue-green-algae-cyanobacteria-is-toxic-for-dogs/
https://www.akc.org/expert-advice/news/blue-green-algae-symptoms-tips/