犬にはつい赤ちゃん言葉で話しかけてしまうけれど
愛犬に話しかける時、ついつい「いい子でちゅね〜」とか「おいちいね〜」と赤ちゃん言葉になってしまうという方は多いと思います。
このことに関する研究も行われており、2018年にはイギリスのヨーク大学の研究者によって「普通に人間に話しかける時のトーン」と「犬に話しかける時のトーン(赤ちゃん言葉を含む)」の2つのパターンで話しかけた時、犬に話しかける時のトーンの方が犬がより多くアイコンタクトを発し、側に座っている時間も長かったという実験の結果を発表しています。
人間の赤ちゃんの場合も、赤ちゃん言葉で話しかける方が関係性が強くなるという研究結果があり、どうやら犬の場合も同様に赤ちゃん言葉の方が、強い結びつきを作ると考えられています。
しかし、それはなぜなのでしょうか?普通に話しかけた時との違いは声の高さなのか、言葉のチョイスなのかが気になるところです。
この点についてハンガリーの認知神経科学/心理学研究所とエトヴェシュ・ロラーンド大学動物行動学の研究者が共同で実験リサーチを行い、その結果を発表しました。
3種類の方法で犬への話しかけ実験
研究チームはSNSを利用して実験に参加する家庭犬を募集しました。条件は1歳以上でテニスボールで遊ぶことに意欲的であることです。
実験に参加してデータを提供した犬は最終的に60頭で、犬種は雑種も含めてさまざまでした。犬たちはランダムに3つのグループ1〜3に分けられました。
話しかけ実験に使われたのは「ほら、外を見て。なんて良いお天気でしょう」という文章です。これを6人の女性が『乳児向けの話し方』『犬向けの話し方』『大人の女性向けの話し方』の3パターンで録音されました。
さらに録音された全ての音源は、平均基本周波数が同じになるように調整されました。つまり犬向けや乳児向けに高い声で喋った言葉も大人向けと同じ程度の高さになったということです。また犬向けや乳児向けのパターンは、大人向けよりもリズムや抑揚に大げさな特徴がありました。
こうして作成された音声を、グループ1には「犬向けvs大人向け」グループ2には「犬向けvs乳児向け」グループ3には「乳児向けvs大人向け」の組み合わせで聞かせます。
実験室に2つのスピーカーを置き、スピーカーと二等辺三角形の頂点になる位置に犬が座って音声を流します。スピーカーの前にはどちらもテニスボールが置かれ、音声を流し終わったら犬はどちらか好きな方のボールを取りに行くことができます。
実験の結果、犬が好んだのはどの話し方だったか
犬向けvs大人向けでは、犬たちは有意に犬向けの音声がする方のボールを好んで取りました。このことから犬が犬向けの話し方を好むために高いピッチの声は必須ではないことが分かりました。
犬向けvs乳児向けおよび乳児向けvs大人向けでは、有意な違いは見られませんでした。ただし犬向けまたは乳児向けの音声が左側のスピーカーから聞こえた場合には、より速くボールを取りに行きました。
これはリズムや抑揚に特徴のある音声は犬の脳の右半球が担っていることを示しています。
総合すると、犬が好む話し方は犬向け>乳児向け>大人向けの順になり、犬は音の高低がなくても特徴的なリズムや抑揚を区別して聞き取っており、好むことが分かりました。
まとめ
犬に向かって話しかける時、少し大げさにリズムや抑揚をつけた「犬向けの話し方」が犬に好まれたという実験の結果をご紹介しました。
高い声でなくても人間が発した言葉のリズムや抑揚を犬が聞き分けており、そのような特徴のある、いわゆる赤ちゃん言葉は犬に好まれると言えるようです。
犬に話しかける時には楽しい感情を込めてハッピーに話しかけると良いようですね。これなら簡単に、と言うよりも自然に継続していけそうです。
《参考URL》
https://link.springer.com/article/10.1007/s10071-018-1172-4
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S000334722100107X#!