犬の脱水 怖いのは夏だけではありません
夏になると、温度と湿度の管理と共に水分補給にも気を使われる飼い主さんが多いと思います。
犬は汗をかけず、体温を下げるためにパンティングという口呼吸で口や鼻の粘膜の水分を蒸発させて体温を下げますが、それが長時間に渡ると脱水症状に陥り、熱中症になるからです。
しかし犬に脱水症状を引き起こす原因は、高温多湿だけではありません。
下痢や嘔吐で水分を体外に出してしまう、水を飲めない状況が続くといったことでも脱水状態になります。また、病気が原因の脱水もあります。
夏の暑い時期は飼い主様が注意をされていて脱水症状を予防できても、春先や秋から冬にかけての時期は注意を怠ってしまうため、かえって愛犬を脱水にさせてしまうリスクが高まる傾向があります。
そこで今回は、犬が脱水症状になった時に現れる症状や、脱水の原因、予防策について説明します。
犬が脱水状態になると現れる主な症状
1.いつもと様子が異なる
脱水症状のごく初期の頃は、犬もまだ普通に動けます。体内の水分が不足していることを犬自身も自覚できるため、落ち着きがなくなり飲水を探し回るといった、いつもと異なる様子を見せます。
それでも飲水を確保できないと、徐々に元気がなくなり、食欲もなくなっていきます。
2.下痢、嘔吐
下痢や嘔吐が起きると体内から水分だけでなくナトリウムやカリウムといった電解質も失われてしまい、体内の電解質バランスが悪くなります。これが原因になりまた下痢や嘔吐がさらに生じるといぅ悪循環が起こります。
3.おしっこが少なく色が濃い
発熱や飲水量の低下などで犬の体が脱水症状を起こした結果、体内の水分が不足してしまい、非常に濃いおしっこが少量しか作られないようになります。
このように、尿量や濃さの確認は、脱水症状を起こす兆候や脱水症状になったことを知るための指標になります。
4.皮膚に弾力がない
脱水症状の時に顕著に現れる症状が、皮膚の弾力がなくなるという症状です。
愛犬の様子を見て脱水が疑われる場合には、ぜひ下記の手順で確認してみてください。
1.愛犬の首の後ろあたりのたるんでいる皮膚を指でつまむ
2.そのまま皮膚を優しくつまみ上げる
3.つまんでいる皮膚を離して、元の状態に戻るまでの時間を計る
皮膚が元の状態に戻るまでに2秒以上掛かったら、脱水を起こしています。動物病院で診てもらいましょう。
5.歯茎が乾燥、または粘ついている
通常、犬の歯茎は濡れて輝いたように見えます。しかし脱水を起こしていると、口の中が乾いていたり粘ついていたりすることがあります。
脱水を引き起こす代表的な病気
腎臓病
腎臓は、血液からおしっこを作り出す臓器です。この機能が低下することで、必要な水分もおしっこと一緒に体外に排出されてしまい、脱水を招きます。
糖尿病
犬の糖尿病は人の1型糖尿病によく似ています。膵臓が働かなくなりインスリンが作れなくなることで、血液中の糖が増えてしまいます。
糖分が多くなると、体内に必要な水分まで引き寄せられておしっことともに排出されてしまい、脱水を招きます。
副腎皮質機能低下症(アジソン病)
副腎皮質はステロイドホルモンを生成し、分泌する臓器です。この機能が低下することで、たくさんの臓器に障害が現れ、電解質のバランスが崩れてナトリウムの欠乏が起こり、脱水を招きます。
その他下痢や嘔吐を引き起こす病気
腸の疾患、消化管腫瘍、中毒、食物アレルギー、膵炎、腸閉塞などは下痢や嘔吐を引き起こす病気です。
特に下痢や嘔吐がくり返される場合や水様便の下痢の場合は、脱水の危険が高いので動物病院で診てもらいましょう。
一般的な脱水の予防
体から水分が失われてしまう主な経路は下痢と嘔吐と排泄です。ですから、下痢や嘔吐、多尿を引き起こすような病気をできるだけ予防するために定期検診を行うこと、また傷んだフードを与えないこと、犬が食べると中毒を起こしたりお腹をこわしてしまうような食べ物を口にさせないことが大切です。
犬は、健康な場合は必要な水分を自ら飲水という形で補います。そのため、いつでも新鮮な水を飲める環境にしてあげることもとても大切な脱水の予防策になります。
パンティングを長時間させることで脱水を招くことがありますので、激しい運動の後や体温が高くなった時には、飼い主さんがサポートしてあげましょう。
まとめ
犬の体は約60〜70%が水分で、そのうちの10%以上が失われると脱水症状を引き起こします。
真夏の高温多湿の時には温湿度や愛犬の水分補給に気配りをされる飼い主さんも、春先や秋から冬にかけてといった時期になると、愛犬の水分補給はあまり気にならなくなってしまうことが多いようです。
脱水の原因は、高温多湿だけではなく、病気、消化器系へのダメージなどさまざまです。
また、加齢により関節炎などであまり自由に動けなくなった老犬は、のどが渇いても自由に水を飲みに行けずに脱水となることもあります。
脱水は暑い季節だけに起こる症状ではありません。飼い主さんが常に愛犬の状態を確認し、万が一脱水の可能性があると疑われる場合には、躊躇せずに動物病院で診てもらうようにしてください。