犬にもある音の好き嫌い
生活していると、犬が喜んで飼い主さんの元へ駆け寄ってくる音もあれば、怯えて隠れてしまうような音もあります。
犬にとって、どのような音が喜ぶ好きな音で、逆にどのような音が嫌いな音なのかが分かれば、余計なストレスを回避して事故の予防にも繋がるでしょう。
犬の場合、音の好き嫌いを決める要因には、本能的なものと後天的な学習によるものがあると言われています。
元々先祖から受け継がれている習性や本能の部分で反応してしまう音と、犬のそれまでの経験から身についた記憶から反応してしまう音があるのです。
では、具体的にどういう理由でどういう音が好きなのか、嫌いなのかをみていきましょう。
犬が聞くと喜ぶ音
1.ご飯と結びついた音
飼い主さんがご飯を用意している音、例えばドッグフードの袋を開けている音やフードを食器に入れている時の音、手作り食の場合は野菜を切っている音などは、犬にとってとても喜ぶ音、大好きな音の1つです。
これは、「この音がすると飼い主さんからご飯がもらえる」と学習して身につけた、犬にとって嬉しい、大好きな音です。
2.獲物の声に似た音
人と一緒に暮らし、自分の力で獲物を捕まえる必要のなくなった現代の犬にも、狩りをして食を得ていたハンターの本能は引き継がれています。そのため、獲物であった小動物の鳴き声に似ている、高いトーンの「ピッピッ」とか「ピーッ」という音を聞くと喜ぶ犬が多いと言われています。
この音を応用して、多くの犬用の音の鳴るおもちゃが開発されています。
犬は人が聞こえないとても高い周波数の音(超音波)を聞き取ることができ、また人が聞こえる距離の約400倍も遠い距離の音源の音まで聞き取ることができると言われています。
つまり犬にとって聴覚は、五感の中でもより重要な位置づけにある感覚なのです。その聴覚を良い意味で刺激することは犬にとっても良いことなので、犬が好む音のおもちゃを与えて遊ばせるのはおすすめです。
3.仲間とのコミュニケーションを思い出させる音
遠くから聞こえるパトカーや消防車のサイレンの音を聞くと、遠吠えを始める犬がいます。
室内飼いが一般的になった今では少なくなりましたが、外飼が当たり前だった頃には、サイレンが聞こえると遠吠えをする犬は多かったものです。
これは、サイレンの周波数が犬の遠吠えの声の周波数に似ているからだと言われています。
仲間たちと群れを作って暮らしていた頃は、遠くにいる仲間と遠吠えによってコミュニケーションを図っていました。そのため、似たような音のサイレンに反応しているのだと考えられています。
これも、犬が本能の部分で反応している、好ましい音の1つでしょう。
4.その他楽しい思い出と結びついた音
犬は、ある刺激の後に続けて起こった出来事とその刺激を関連付けて記憶することで学習していきます。これを犬のトレーニングに応用したのが「クリッカー」です。
犬に指示を与え、その指示に正しく従うことができたらクリッカーを鳴らしてご褒美を与える。これを繰り返すことで、犬はご褒美をもらえなくてもクリッカーの音を聞いただけで喜ぶようになります。
こういった学習は、飼い主さんが無意識に行ってしまうこともあります。
例えば、愛犬と一緒に散歩に行く前に必ず行っている準備の中で発せられる音を聞いて、愛犬は喜んで飼い主さんの元に駆け寄ってくるようになるかもしれません。
学習は、後から上書きすることができます。例えば今まで「喜ぶ音」だったにも関わらず、その音を聞いた後に嫌な思いを何度か経験したことで「嫌いな音」にしてしまうこともあるのです。
音に限らず、意図しない無意識の学習には注意を払うと良いでしょう。
犬が嫌う音
犬は、自然界にはないような金属音や、トラックやバスなどのエンジン音、また雷や花火のように身体にズシンと響く強い振動の音に怯える傾向があります。
また、ドライヤーや掃除機の大きい音なども嫌う犬が多いです。
これらの嫌いな音、怯えてしまう音に対しては、なるべく環境を改善して聞こえない、聞こえづらくすることと、慣らしていく、また学習の上書きをすることで改善でき、過度のストレスや脱走などの事故を予防することができます。
しかし、あまりにも敏感に怯えたり、ストレスから体調を崩したりしてしまうような場合は、行動診療科などの専門家がいる動物病院などに相談することをおすすめします。
まとめ
犬は、花火や雷の音に驚いて脱走してしまう事故が多いという話を耳にされたことのある飼い主さんは多いと思います。
こういった音がした時に、一緒にいた飼い主さんも犬と同じように怯えたり、犬に「怖いね」などと話しかけてしまうと、犬はますます不安に陥ります。
飼い主さんは、どんなに不意に不審な音を聞いたとしても、動じずに堂々とした態度で愛犬に冷静に接してください。それが、愛犬にも冷静さと落ち着きを取り戻させます。
普段の生活の中に、犬が好む音が多く、嫌いな音が少ないほど、愛犬にとっては快適な暮らしができるでしょう。
そのためには、飼い主さんが無意識に愛犬に「嫌いな音」を学習させないようにすることにも気を配ってあげると良いでしょう。