黒い犬は毛色の薄い犬よりも熱くなりやすい?
お天気の良い日の散歩や日向ぼっこの後、犬のコートが熱々になっているのは多くの方が経験していると思います。特にコートの黒い犬の飼い主さんは「うちの犬は黒いからよく熱を吸収するので気をつけないと」と思っていらっしゃるのではないでしょうか。
私自身も漠然と「黒い犬は体が熱くなりやすい」と思っていたのですが、そのことを裏付ける科学的な文献は今までなかったのだそうです。
この度アメリカの南イリノイ大学農学部動物科学の研究者が、黒とイエローのラブラドールレトリーバーを対象にして毛色による温度変化の影響を調査し、その結果を発表しました。
黒とイエローのラブラドールを対象にしてテスト
実験に参加したのは黒いラブラドール8頭とイエローのラブラドール8頭でした。テストは3段階に分けて行われ、それぞれの段階で赤外線サーモグラフィーを使用して、直腸、腹部、体表、目の温度が測定されました。体温の他には1分間の呼吸数、飲水量も測定されました。
3段階のテストは次のようなものです。
第1段階 体温など犬の体の状態のベースラインとなる数値を調べるため、温度管理された部屋で30分クレート内で休憩している状態。
第2段階 天気の良い晴れた日に屋外で30分歩いた後の状態。
第3段階 第2段階で歩いた後の回復温度を調べるため、温度管理された部屋で15分クレート内で休憩した後の状態。
毛色による体温の変化や呼吸数の違いは?
テストの第2段階で日光の下で30分間歩いた後の犬の直腸、腹部、体表、目のすべての温度は、黒ラブと黄ラブでほぼ同じように上昇しました。ごくごく僅かに黒ラブ勢の体温上昇が上回っていましたが、有意な差と言えるものではありませんでした。
またテストの第3段階で休憩した後の体温も、2つの毛色グループでほぼ同じように低下しました。
1分間の呼吸数についても、第1段階のベースライン値と散歩後の数値を比較すると2つの毛色グループは同じように増加し、第3段階の休憩の後は同じように減少しました。飲んだ水の量も2つの毛色グループに有意な違いはありませんでした。
このように、日光の下の活動において犬の毛色の違いは体温上昇や呼吸数の増加に影響しないという結論が出ました。ちょっと意外な感じがしますね。
まとめ
黒と黄色のラブラドールを対象にしたテストで、黒い犬も黄色い犬も天気の良い日の散歩の後の体温は毛色に関係なく上昇したという結果をご紹介しました。毛色の濃さは体温上昇のリスク要因にはならないということですね。
これからの季節、日差しや気温の影響と言えば、色素の薄い犬(特にシングルコートで超短毛)の日焼けのリスク、ダックスフンドやコーギーなど体高の低い犬への地表温度のリスク、短頭種の呼吸リスクなどがありますので、該当する犬と暮らしている方はお気をつけください。
犬種や体型などに関わらず、夏の暑さはすべての犬にとって大きなリスク要因となります。さまざまな夏の注意事項が呼びかけられているので、本格的な暑さの前に改めてチェックしておき、安全に夏を乗り切ってください。
《参考URL》
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1558787821000393