イギリスでの調査から、肥満のリスクの高い犬種とは?

イギリスでの調査から、肥満のリスクの高い犬種とは?

世界の他の国と同様に、イギリスでも飼い犬の太り過ぎは問題視されています。医療データを使った犬の体重についての統計結果をご紹介します。

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太り過ぎの犬に関する大規模な統計

肥満状態のビーグル

運動不足や食べ物の与え過ぎによる家庭犬の過体重や肥満は多くの国で犬の健康を脅かす深刻な問題になっています。イギリスの犬たちも例外ではありません。過去にもイギリスの犬の肥満についての研究は数多く発表されていますが、この度の研究では犬たちのかかりつけの病院からの医療データを使用して、大規模な調査が行われその結果が発表されました。

このリサーチは王立獣医科大学の病理生物学の研究チームによって実施されました。王立獣医科大学では、一般の動物病院の参加を募って非営利研究プロジェクトを運営しています。それぞれの病院やクリニックで受診した動物の臨床データを匿名化してコンピューターに記録していくことで、大量のデータからスクリーニングや統計を取ることができます。

この肥満の研究もプロジェクトで集めたデータに基づいて行われました。

過体重や肥満のリスクが高い犬種とは

太り過ぎのゴールデンレトリーバー

統計は2016年のデータを使用して行われました。犬種や性別、年齢などそれぞれの属性によって分類され、どのような属性に過体重や肥満が多いのかが調査されました。

過体重と肥満は同じ意味で使われがちですが、過体重とは単純に標準体重を超過している状態、肥満とは体重が多いだけでなく体脂肪が過剰な状態を指します。体がとても筋肉質という場合は過体重になりがちですが、肥満になることは滅多にありません。しかし多くの場合、過体重は肥満の前段階である場合が多くなっています。

使用されたデータの22,333匹の犬のうち1580匹(7.1%)が過体重(肥満を含む)だと特定されました。犬種別で過体重と特定された率が高かったのは以下の通りです。

  • ゴールデンレトリーバー 16.2%
  • パグ 15%
  • ビーグル 14.2%
  • イングリッシュスプリンガースパニエル 12.8%
  • ボーダーテリア 12%

上記の他、ラブラドール、キャバリア、コッカースパニエルが過体重率10%を超えており、高リスクグループに含まれます。逆に過体重が最も少なかったのはシーズーとジャーマンシェパードで5%を大きく下回っていました。その他の要素では、年齢が6歳以上、不妊化手術済み、ペット保険に加入しているなどの属性が過体重に関連していました。

過体重率が最も高いゴールデンレトリーバー でも16.2%という数字は、イギリスでの以前の犬の肥満研究よりもかなり低くなっています。一説にはイギリスの犬の2匹に1匹は過体重だとも言われているからです。

これはデータを提出している数多くの病院によって犬を太り過ぎだと判断する基準が違うこと、ほとんどが個人経営の小規模クリニックなので「あなたの犬は太り過ぎです」と言って顧客である飼い主を怒らせたくないなどの理由が考えられます。

特定の犬種が太りやすい素因とは?

体重計に乗っているパグ

過体重高リスクグループの犬種のうち、ゴールデンレトリーバー 、ラブラドール、ビーグル、コッカースパニエル、キャバリアは以前の他の研究でも過体重の率が高いという結果が出ています。

犬種による明確で一貫した結果は、太りやすい遺伝的な素因があることを示しています。ラブラドールやビーグルではすでに肥満につながりやすい遺伝子の変異が判っています。

研究者が特に注目しているのは非遺伝的な素因です。高リスクグループのうち、パグはこの非遺伝的な素因に当てはまる可能性が指摘されています。パグは犬種特有の大きな丸い目のせいもあり、飼い主との感情的な結びつきが強いと言われています。

そのためパグの飼い主は食べ物を多く与えるなど甘やかす傾向が高い可能性があります。短頭種に多い呼吸障害のリスクがあり、太り過ぎはこのリスクをさらに高くします。犬の福祉に大きく関わる問題であるため、この研究ではパグの過体重が特に注目されました。

しかしパグと同じく短頭種であるシーズーは最も過体重のリスクが低いことから、体重管理プログラムは「短頭種」という括りではなく、個々の素因のある犬種を対象にする必要があるとしています。

まとめ

飼い主とジョギングするゴールデンレトリーバー

イギリスでの大規模な統計から、過体重のリスクが高い犬種やその他の素因が確認されたという報告をご紹介しました。

この研究では医学上の問題に注目されていますが、太りやすい犬種の代表のように言われるレトリーバー種やビーグルは、本来は1日中駆け回る猟犬として選択育種された犬種ですから、普通の家庭犬の生活では運動不足になるのも無理はないとも思われます。

パグは呼吸障害の他、歩行障害も多い犬種なので、やはり運動不足になりやすいという理由もあるかと思います。

太り過ぎた犬は他の病気になりやすいだけでなく、肥満それ自体が犬の福祉を低下させます。犬の体重を適切に管理する方法が周知されるよう、今後も犬の肥満研究に期待したいと思います。

《参考URL》
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jsap.13325

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