川端康成著「愛犬家心得」という本を知っていますか?
あの文豪家は大の愛犬家だった!
「伊豆の踊子」や「雪国」といった数々の名作を生み出し、日本人初のノーベル文学賞を受賞した文豪、川端康成の名を知らない方はいないかと思います。
その一方で、実はこの方には文豪の他にも、大の愛犬家としての顔がありました。
日本犬をペット(というよりも番犬として飼われている割合が多かった)として主流であった時代から、今日でも決してメジャーとは言えない“ワイヤー・フォックス・テリア”や“グレイハウンド”などを飼っていて、更には自身の愛犬をモデルにした短編小説を書くなど、その溺愛っぷりは相当なものだったんです!
そんな川端康成が約80年前にワンコと飼い主さんの為に出したエッセイ本こそが「愛犬家心得」なんです。
書かれている内容とは?
では実際に書かれている内容を抜粋して挙げ、現代風に解釈をしていきたいと思います。
決して放し飼いにしない
鎖を外して放し飼いにしてしまうと、車等に轢かれてしまうといった事故にも遭いやすく、また誤って人を噛んでしまったり誘拐されてしまうといった、トラブルに巻き込まれてしまう恐れもあるので必ず家の前に繋いでおくべきという事ですね。
今日ではまず愛犬を放し飼いにしてる方はいないかと思いますが、当時は交通量も少なく比較的自由気ままに飼育していたのでしょう。
一時のきまぐれやたわむれ心から、犬を買ったり、もらったりしない
これは現代でも言える事です。
いくら可愛い仔犬を見て欲しいと思っても、10数年に渡って食事の世話や散歩というように手間やお金がかかってきます。
それを踏まえた上で、責任を持ってワンコの一生を預かれるか、今一度じっくりと考えてみるべきですよね。
血統書ばかりではなく、親犬の習性を良く調べた上で、子犬を買う
仔犬を引き取る際は、犬種の珍しさや由緒正しき血統に重点を置くのではなく、どんな親から産まれてきたか、親が遺伝的な病を持っていないかを、シッカリ調べる事が大切とされています。
こちらも現代とまったく同じです。
病気の治療法を学ぶよりも、犬の病気を予知することを覚える
これは、愛犬のかかる病気への対策を調べる事も大切ですが、一番やるべき事は愛犬が病気にならないように、生活習慣に気を使いましょうと言ってます。
現代で言うとワクチン接種をして病気の予防をしておきましょうという事ですね。
この時代の犬は幸せだった?
ワンコにとって史上最悪の時代
では実際に愛犬家心得が出た昭和8年を含む昭和前期のワンコはどんな生活をしていたのでしょうか?
お分かりかと思いますが、この時代は奇しくもあの忠犬ハチ公が話題となった一方で、第二次世界大戦が勃発しました。
そしてこの時期こそがワンコにとって最も悲惨な時代だったんです。
犬の供出命令
戦争が深まるにつれ、ついに国からこんな命令が下されました。それこそが、「お国のために犬を差し出せ」という供出命令でした。
なぜこのような命令が出されたのかというと、
- 犬の毛皮を、戦地で戦う兵隊の防寒着として使用し、その肉は兵隊用の食糧にするから。
- 医師や物資不足で狂犬病予防の注射が十分にできないから。
- 空襲時などに犬がパニックとなり狂いだして人々に危害を加えるおそれがあるから。
だそうです。
ワンコの出征もあった
軍用犬として徴用され、各戦地へ送り込まれていくワンコも多く、あの沖縄戦でも沢山の軍用犬が命を落としました。
そして終戦後も連れて帰って来られた軍用犬はごく僅かで、ほとんどの子は現地で遺棄されていたんです。
そんな悲しいワンコ達も今は国の為に命を散らした英霊として祀られ、1992年3月には靖国神社の軍犬慰霊像が奉納されました。
愛犬家として一度は訪れるべき場所ですね。
まとめ
後に勃発する戦争で多くのワンコが犠牲になるような不安定な時代の中で、文豪『川端康成』が80年前に出したエッセイ「愛犬家心得」は当時からは想像もつかないけど、現代では大いに通用する愛犬家としてなすべき事が多く書かれています。
このエッセイは、名犬、番犬、野良犬と暮らした作家達の幻の随筆集 『犬』に収録されているので、興味があったら是非一度読んでみて下さい。