1.股関節形成不全
「股関節形成不全」は、股関節部分が変形していることで関節がしっかりとかみ合わず、動きに異常があらわれたり、動くことで痛みを感じたりする病気です。
ゴールデン・レトリバーやバーニーズマウンテン・ドッグなど体重の重い大型犬に多く見られる病気で、生後1年頃までに発症することが多いとされています。
症状としては、座ったときに足が左右どちらかに流れる横座りや、腰を振るようにして歩くモンローウォーク、歩くときに後ろ足が揃ってウサギ跳びのような状態になることなどが挙げられます。
痛みを感じるようになってからは、段差を歩くことを嫌がったり、立ち上がるときに時間がかかるようになったりします。
主に先天性なものとされていますが、栄養の偏りや過度な運動などによって悪化してしまうことが考えられます。そのため、特に大型犬はバランスのよい食事と適度な運動を心がけ、肥満にならないように注意しましょう。
2.膝蓋骨脱臼
通称「パテラ」と呼ばれる「膝蓋骨脱臼」は、膝蓋骨がズレてしまう慢性的な疾患です。
トイ・プードルやポメラニアンなどの小型犬に見られることが多く、遺伝性が高いとされています。
生まれてすぐに発症していることもあり、ペットショップやブリーダーでは、販売時に膝蓋骨脱臼があることを説明しているところも少なくありません。
膝蓋骨脱臼の症状にはグレードがあり、1~4で重症度が異なります。
グレード1は脱臼しても自然ともとに戻り、痛みなどを感じずほとんど症状が出ないものです。
グレード2では脱臼したときにはしばらくその状態が続き、足をつけずに歩いたりするものの、自然と戻ることも多く、日常生活に支障はあまりありません。
グレード3になると、膝蓋骨が変形したり靭帯が伸びたりして、痛みも感じやすくなります。グレード4では脱臼したものがそのまま整復せず、歩行困難になることもあります。
膝蓋骨脱臼の治療は外科手術によって行われます。ただし、症状がほとんど出ない場合や高齢や心臓疾患などがあり手術ができない場合は、症状が進行しないように運動や食事の管理で保存療法を行います。
3.関節リウマチ
関節リウマチは、四肢の関節に腫れやこわばりが見られる病気で、一度発症すると完治しにくい進行性の疾患です。
プードルやダックスフンドなどの小型犬に多く見られ、比較的若い年齢で発症するとされています。
発症すると関節に痛みが出るだけでなく、発熱や食欲低下などの症状も見られます。そのため、動くことが苦痛になって活動性が低くなり、あまり動きたがらなくなるのが特徴的です。
関節リウマチの原因は、明確になっておらず、根本的な治療法も確立されていません。そのため、症状が出たら痛みを緩和する薬を投与するなどの対処療法となります。
4.レッグペルテス病(大腿骨頭壊死病)
「レッグ・ペルテス病」は、トイ・プードルやチワワ、ポメラニアン、ダックスフンド、パピヨンなどの小型犬に多く見られる病気です。
股関節と太ももの骨の接合部の血流が減少することで、大腿骨頭が壊死してしまう病気で、そのままにすると周辺からどんどん筋肉の萎縮が起こり、正常に動かなくなってしまいます。
もちろん痛みもあるため、歩き方に異常が見られ、発症している足をしっかりと地面につけずに歩くようになります。
また、壊死した部分に衝撃が加わると、簡単に骨折してしまうため、転んだりジャンプしたりすることのないように注意しなければなりません。
ほとんどの原因は遺伝性、先天性のものですが、まれに高所からの落下事故などで外傷を負ったことで発症することもあります。
5.椎間板ヘルニア
腰に症状が出る病気と言えば、「椎間板ヘルニア」を思い浮かべる人も多いと思います。
腰部分の長期的な負担がかかったり、激しい衝撃を受けたりすることで椎間板が損傷し、痛みや異常があらわれる病気です。
症状を発症・悪化させる原因として、肥満や過度な運動などが挙げられます。
特にダックスフンドやコーギーのような胴の長い犬種は腰への負担が大きいため、適度な筋肉をつけながら肥満にならないよう、小さなうちから食事と運動の管理をしっかり行いましょう。
まとめ
【写真6:走っている白い犬】212879665
犬の足や腰、関節に症状があらわれる病気は、色々なものがあります。
先天性や遺伝性のものも多くあり、避けられないものもありますが、発症や進行を防ぐことはできるため、できるだけ早期発見・早期治療に努めましょう。
多くの場合、肥満や栄養の偏りが犬の体への負担を大きくしてしまいます。
愛犬に足や腰、関節のトラブルが見られたら、適度な運動と良質な食事を与え、動物病院で相談しながら適切に管理していくようにしましょう。