犬の震えは大きく2つに分けられます
犬が震える場合も人間の場合と同様に、精神的な理由によるものと肉体的な理由によるものの2つに大きく分けられます。
恐怖心によるもの
人も、強い不安や恐怖を感じると、体が震えることがありますよね。犬も、とても嫌なこと、不安なこと、恐怖を感じることに直面すると、震えることがあります。
散歩の途中で、過去に怖い思いをした場所に近づいた時、動物病院で診察台に乗せられた時などがこれに該当します。
その場でできる対処法としては、声を掛ける(落ち着いた声で)、体をなでてあげるなどがありますが、それだけで犬の恐怖心をなくすことは難しいでしょう。犬が恐怖を感じることがあれば、それに慣れさせるトレーニングをしてあげるのが良いでしょう。動物病院での診察が怖い犬であれば、診察が終わった後に褒めてあげる、特別なおやつをあげる等がトレーニングの一環とはなりますが、それだけでは十分な効果は期待できません。本格的に診察に慣れるトレーニングをするのであれば、動物病院側の理解と協力が不可欠です
緊張で震えるのも、不安や恐怖心からです。人だったら「失敗したらどうしよう」などの不安があると緊張し、犬だったら「何が起こっているんだろう?安全なのか?」という恐怖心から緊張して震えることがあります。初めての場所、初対面の人、嫌いな人、自分よりも強そうな犬などへの反応の他に、雷や花火のような大きな音や振動に怯えて震える場合もあります。
対処法は、普段から嫌がるものに慣れさせる、または犬が怖がるものに不必要に出会わせないことです。
人間の赤ちゃんに安心感を与える道具としてベビーラップと呼ばれるものがあり、赤ちゃんを包み込むように巻いて使います。犬にも同様の商品があって、有名なものではサンダーシャツ(ThunderShirt)という商品が日本でも販売されています。犬の体をラップして落ち着かせる手法はTタッチ でも用いられており、サンダーシャツ以外の商品も用いるそうです。また、犬の体をラップするものは必ずしも専用品である必要はないようで、簡単に手作りできるもので効果が見られた、という体験談はネット上で多くみることができます。フィリピンの動物愛護団体(PAWS: The Philippine Animal Welfare Society)のスタッフがツイッターに投稿したという方法がネット上で数多く紹介されています(そのツイート自体は現在見ることはできないようです)。「犬 ボディラップ」などと検索するとたくさんの記事が出てきますので、興味のある方は検索してみてはいかがでしょうか。
2.肉体的な原因による震え
寒さ
人と同じで、犬も寒いと体が震えます。筋肉を動かすことで発熱し、体温を維持しようとするためです。
このように体温の低下に伴う震えは「シバリング」と言い、体を温めることで解消できる生理現象の1つです。シバリングをすること自体は異常ではありませんが、シバリングをしているならば気温や体温をあげてあげる必要があります。
病気の可能性がある震えの場合は、速やかに動物病院で受診しましょう。
加齢による筋力低下
加齢と共に筋力が低下します。それに伴い、体を支えることが難しくなり、足の震えなどが起きることがあります。特に、排便時などの全身に力を入れる時に目立つでしょう。筋力の低下が顕著ではなくても、加齢によって特に後肢が増えることも多いようです。
対処法としては、老犬にも怪我をさせないように注意しながら、無理のない範囲で散歩や適度な運動をさせましょう。また、震えがあってもなくても、老犬になったら生活環境を見直す必要があります。運動機能の他にも視力や聴力など、体の様々な機能が低下し、トイレの位置や頻度、食事の食べ方などが変わることが多くあります。
以下のように病気の可能性がある震えの場合は、速やかに動物病院で受診しましょう。
痛みを伴う病気
痛みで震えが生じます。痛みの原因の例として、「椎間板ヘルニア」があります。
ダックスフンドなどの胴長短足の犬種に多い病気で、背骨と背骨の間にある椎間板がずれて飛び出したりすることで脊髄を圧迫し、激しい痛みを伴います。
震え以外に、じっとしていて呼んでも来ない、散歩に行きたがらない、抱き上げるとキャンと悲鳴を上げるる、歩けないなどの症状が見られます。
感染症による発熱
細菌やウイルスに感染すると発熱することがあります。感染症にかかると防御反応として体は体温をあげようとし、その際の筋肉の動きによって震えが起きることがあります。体温をあげるのは、体内に侵入した病原体の増殖を抑制しようとする防御反応なのです。
震えと共に、体が熱くなり、元気がない、いつもよりおとなしい、などという時は、発熱していると考えられるでしょう。
脳や神経の病気
特発性てんかんや脳炎、脳腫瘍、水頭症などの脳の病気や、柴犬にも多い特発性振戦戦症候群(ホワイト・ドッグ・シェイカー・シンドローム)といった神経の病気でも、震えの症状が出ます。
発作と聞くと、全般発作の一つである意識を失い全身がけいれんするような強直間代発作を想像しがちですが、顔面や足などの体の一部が痙攣する発作もあります。
発作なのかそうではない震えなのかの見分けがつきにくい場合でも、繰り返しその症状がみられる場合には、受診しましょう。その際に、症状が出ている時の様子を録画しておくと、より正しく獣医師に状況を伝えられます。
中毒症
たまねぎ、チョコレートなどの犬にとって中毒性のある食べ物を食べたり、除草剤、殺虫剤などを誤飲、誤食してしまった時に、それらによる中毒症の症状として震えが生じることがあります。
震えの他にも、下痢や嘔吐、泡を吐くなどといった症状も同時に出ることが多いでしょう。特に重症の場合には、様々な症状が出たり犬が本当にぐったりしてしまいます。
食べてしまった中毒物質の量によりますが、命に関わる場合も少なからずありますので、すぐに受診してください。その際に、口に入れたものやその包装紙などが持参できると治療の助けになるでしょう。
低血糖症
子犬が食欲不振や下痢を起こしているときに起こしやすいのが低血糖症です。糖尿病でインスリン注射による治療をしている犬で、インスリンが効き過ぎて起こることもあります。元気がなくなり、流涎、粘膜蒼白などが見られ、重症化すると痙攣がおこる場合もあります。
砂糖水を飲ませると応急処置になりますが、震えがひどいと誤嚥することもあるので、動物病院に電話で相談の上、指示を仰ぎ、すぐに病院に連れて行きましょう。
その他
他にも、慢性腎不全の末期に起こりやすい尿毒症や、内分泌の異常、熱中症などでも震えの症状が起きることがあります。
まとめ
病院に連れて行くべき震えなのかどうかを見極めて、必要な場合はできるだけ早く受診しましょう。
震えがけいれんに進行するような場合は何か異常があることが分かりやすいとは思いますが、次のような症状を伴っている場合にも、病気を疑い、様子をよく観察すると共に動物病院を受診しましょう。
- 元気や食欲がなくなる
- 吐く
犬は言葉では体調不良を訴えられません。体調が悪いことや痛みがあることをできるだけ隠そうとする犬もいますが、仕草や行動、隠しきれない症状(発熱や粘膜の色、尿の色など)などによっていろいろな情報を得ることができます。精神的な理由で震える場合にも、震え以外にも何かしらのサイン(視線や姿勢など)が出ていることが多いでしょう。これらのサインを読み取り、愛犬の異常にできるだけ早く気付いたり、恐怖の対象を取り除いてあげたりしましょう。